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生徒会は頭がいいけど不器用なのばかりです。

「会長、すみません臭いと思うんですが被害届いただけますか?」


 確かに仕事をしに帰ってきたというのもあるが、被害届を出した後、ユリア様達と早く合流したいという気持ちもある。

 彼女達に任せて自分は何もしないのってすごく申し訳なくなる。罪悪感が消えないから、取り敢えずどんな様子か聞いておきたい。


 すると怜様は一つ頷いた後、後ろの棚から無言で1枚の紙をとり、そこに自分の名前を書き印鑑を押した。


「あとは風紀委員会に出すだけだ。そのためにこっちに来たんだろう」

「あ、はい。その方が手間が省けるかと思って。でも事情まだお話してないですが…」

「服見たら分かる」


 菊乃先輩も先に事情説明して下さってるみたいだし、そりゃそうか。愚問だった。


 被害届は委員会の部屋や先生が良くいる場所、例えば職員室や保健室に常備してある。

 本来だったら保健室で書いて提出した方が私としては手っ取り早いんだけど、この被害届は生徒会長と風紀委員長が受理しないと被害届として認められないとされている。

 こんな文化祭準備で忙しい時期に、変に書類をあっちこっちさせるより自分で出しに行った方が仕事量が減るだろうと思って戻ってきた。


 流石怜様、私心の中でははーって言ってひれ伏してるよ!!

 その頭脳分けてほしいくらいですよ!!

 もうずっと貴方についていきます!!

 とフィーバーしている心を一旦沈めて紙を受け取った。


 受け取った後書けるところは書いて印鑑も押しといた。

 あとは風紀委員長のサインと判子があればこの被害届(仮)もちゃんとしたものだ。


「すみませんが被害届出すのでちょっと抜けます」

 正直今割り振られている仕事量だとユリア様の元に顔を出すのはしんどいけど、仕事は最悪明日の朝や昼休みを返上したらいい。


 自分の問題なんだからしっかり自分で行かなきゃ!

 意気揚々と席を立つと待ってください、と副会長に呼び止められた。


「これをついでに職員室に出しておいてください」

「あ、これもお願い」

「これは風紀委員のところに!」


「え、あ、でも」

「代わりに今篠宮さんに割り振ったここにある仕事は私達で片付けておきますから」


「………っ、ありがとうございます!」


 はっ!残業しなくて済むなんて!!!

 本当にありがたい!!!

 ペコペコと必要以上に頭を下げて、私は生徒会室を急いで出た。




「やること粋ですね、悠也先輩」

「無駄口叩いている暇があったら仕事をこなしてください」

「でも珍しいじゃないですか、悠也先輩がこんなことするなんて」

 翔汰や遥斗の言葉に思わず頷いてしまう。


 そう、最初この案を出したのは驚くことに悠也だった。



 悠也が自分のところのファンクラブ会長から連絡を受け、生徒会としては捜索は彼女達に任せようと思っていたのだが。


「確か翔汰と遥斗の持ってる書類の中に職員室に出すやつありましたよね」

「ありますよー」

「俺のは風紀委員会宛のですけど」


「それを篠宮さんに任せて彼女の仕事を皆でやりましょう」

「いきなりどうしたんだ?」

「すぐ分かりますよ」

 俺の問いに悠也はそう言って笑った後、何事もなかったかのように仕事に戻った。



 自分達もその時訳が分からなかったが、今篠宮が出ていく時の嬉しそうな顔を見て納得した。

 なるほど、責任感の強いあいつなら残業をしてでも捜索に加わることが分かってたんだな。


 正直文化祭を一週間前にして生徒会の仕事もゆっくりやれる状況ではないし、かといって篠宮が悪い訳でもないのに負担を増やしたくなかったってことか。


 悠也は人のことをぞんざいに扱っているようで懐に入れた連中には甘いところがある。

 仕事をやるようけしかけているのも残業して苦労させないためなのを知っている。

 まぁ、そのことを前に出したがらずいつも怖い笑顔ですごんではいるが。


 結局のところ彼は上手く後輩を甘やかしきれない不器用なやつなのだ。


 人間関係については全くの不器用な俺や怜とは違い、誰よりも器用で誰よりも不器用。

 一定範囲までは親しく接することが出来るのにいざ仲良くなりすぎるとどこまで表を出していいか分からず結局厳しく接してしまう。


 まあそんなことはこの生徒会メンバー全員が分かっていることだ。頭の良い生徒ばかりの集められた集団だしな。


 ただ、切羽詰まっててきっと気づいてないだろうなっていうのが約1名いそうだけど。




「ほんと皆優しいな!!………あれ、もしかして私臭いから体よく追い払われた?いや、まさか……でも大分臭うし、でも副会長そんな人では……いや今臭いから関係ないか……いやでも………」

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