世の中には偉大なものが沢山あります。
考え事をしていると時間が経つのは早いもので、あっという間に生徒会室まで来てしまった。
あと数歩で着く、というところで、ピタッと足が止まる。
「そういえば私、遅れること連絡してない…………」
ここに来るまで慌ただしかったからすっかり失念してた。
や、やばい、扉開けた瞬間魔王降臨の予感しかしてない。
黒いオーラ全開で
「遅れる際は必ず連絡するよう言っている筈ですが?」
って疑問になってない疑問で問いただされる未来しか見えない…………
でも遅れたら遅れただけどうせ怒られるのなら、早めに行って増量してる仕事ぱっぱと終わらせる方がいいよね、うん。
「遅れてすみません………」
「大丈夫!?風邪引いたりしてない!?」
なるべく煽らないようすごすごと生徒会室に入ると桃華が慌てて立ち上がり駆け寄ってきた。
あれ、今風邪って……
「私遅れる旨連絡しましたっけ?」
「先ほど瀬島さんから連絡を頂きましたよ」
菊乃先輩流石!!!
頼れる姉貴というイメージに違わず頼りになる!!
もう一生菊乃先輩のいらっしゃる方角に足元向けて寝れないです!!
「それにしても予想以上というか………」
「臭い」
副会長が明後日の方を見ながら言葉を濁したのに対しバッサリとぶった斬ったのは金鳳君である。
やっぱり?と桃華に問いかけると苦笑いをされた。ですよねー……………
ただ幸いなことに怜様はいなかった。いやどうせこの後地獄を見るのは分かってるけど!!
嫌のことって先延ばしにしたいじゃん!!
提出課題とかって猶予とか長くてもギリギリでやっちゃうじゃん!!
ああ、でも怜様隣に座るんだから当たり前に臭いのには気付くよね………怜様に臭いって言われて、ああ不快でブリザードも出るかも、五感のイメージって強く残るからこの先私思い起こす度に池の匂いがつきまとうのかな、それが嫌になって私も敬遠されて、そしたら…………
シュッ
「ん?」
音と少しだけ感じた水滴に顔を上げると金鳳君がスプレー缶を持って背後に立っていた。
「余りに臭いから俺のやつ貸してあげる」
「え、でも香水とかだと匂いが混ざるだけで臭いのは直んないんじゃあ………」
「これ無臭にするやつだから変なのにはならないよ」
「さ、流石」
そう言っている間にも金鳳君は容赦なくシュッシュッとスプレーをしてくる。
え、私そんな臭い??シャワー浴びた意味なかった感じ??
「多分しばらく時間が経って慣れちゃっただろうから篠宮さん鈍く感じてるんだと思うけどすっごく臭いから」
私の思っていることを察したのか金鳳君が教えてくれる。
もちろん口調はバッサリだけど。
なんだかんだで彼も優しいところがあるし、頼りになる時もある。
他の人達が器用過ぎる位器用に仕事をこなしている分仕事が出来ないイメージもついてるが、普通の人より仕事は早い。
まあつまりでいうといいヤツだよ金鳳君!と心の中で親指をグッと立てた。
「さて、これでマシにはなったんじゃない?」
「ありがとう!」
たしかに全然匂いが分かんないしこれで怜様に嫌われずに済む!やった!!
その後戻ってきた怜様に顔を顰められた後、
「池ってそんなに臭いのか」
という発言で予期していなかった地獄に落とされました。準備してなかった分のダメージが…………
「まあマシにはやったとは言ったけど匂いなくなったとは言ってないよね」
と金鳳君が呟く声が聞こえた。




