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池はとても臭いです。

 バチャッという音とともに私は顔面ダイブをしてしまった。


 一番に感じたことは誰が押したのかとかなんで今とかではなく、


『く、臭い!!!』


 あ、これ言ってません思ってるだけ。正直口なんて開けてられませんよ!


 いくら綺麗に掃除されているとはいえ流石池。

 鯉も住まっていらっしゃるのだから匂いがないわけがない。


 しかも意外に池が深く、手を池の底についても体を支えきれず全身ずぶ濡れになってしまった。


「うえー、やっちゃった」

「優美!?」


 焦っているような声に驚いて顔を上げるとそこには心配そうにこちらを見る2人の先輩がいた。

「菊乃先輩に芹那先輩……」


「芹那、悪いけど保健室でタオル調達してきて!私達はそこの空き教室いるから!」

「分かった!」


 芹那先輩はいつものおっとりした可愛らしい感じではなくはっきりと返事をして走って行った。


「すみません、ご迷惑をおかけしてしまって………」


 私が平謝りをすると菊乃先輩はほんとだよ、と呆れた口調で言った。


「って言うのは言い過ぎだけど。心配かけさせないでよ。夏場で風邪は引きにくいとはいえ流石に池に落ちるなんて………」

「うぅ、言い訳のしようもなく………」


 確かにこれは私の不注意だった。

 高校生にもなって学校の池に落ちるなんて全く不甲斐ない。


「寒かったりしない?別に冷たくはなかっただろうけど」

「大丈夫です、夏場で良かったです」


 まあ寒さはどうにでもなる。問題はこの臭さだなあ。


「あの、菊乃先輩、私臭くないですか?」

「大分臭いよ、池の掃除なら私もやったことあるけど、こけの匂いみたいのが凄いからね。優美からも同じ匂いがしてる」

「ですよね………」


 どうしようか、このまま生徒会に行きたくないなあ。

 怜様に臭いって反応されたら私立ち直れないよ……


「持ってきたよ!」

 髪の毛の匂いを嗅ぎながらしょんぼりしているとバタッという音とともに芹那先輩が教室に入ってきた。

 手には清潔そうなタオルと私の体操服もある。


「ありがとう芹那。優美は取り敢えずタオル貰って水気拭き取っときな、もし匂いが気になるならシャワー浴びてくる?女子更衣室の横だから少し遠いけど」

「え、で、出来れば是非っ!」


 臭い思いをしながら仕事なんて、と思っていたのでこの申し出は有難い。


 そういえば更衣室の隣にシャワー室置いてたっけ。

 先に申請すれば使えたはずだが、非常事態ということで保健室で後から申請をすれば許して貰えるだろう。


 まあ許すのは生徒会権限だから職権乱用になっちゃうけど!ちゃんと無断では使わないし申請も自分でしますから!許してください皆さん!


 と生徒会の皆さんへ心の中で頭を下げつつシャワー室へ向かった。




 シャワーを終え外をフロアを覗くと私の体操服が置いてあった。隣には池を覗く時に脇に置いていた鞄も置いてある。


 恐らく先輩方が私がシャワーを浴びている最中に持ってきて下さったものだろう。

 何から何まで有難い。


 着替えを終えシャワー室から出てくると菊乃先輩、芹那先輩と別にユリア様もいらっしゃった。


「ユリア様、どうしてここに?」

「ちょうど優美さんがずぶ濡れで池にいるを見ましたもので、一応来てみたのです。何ともないのですか?」

「あ、はい。ユリア様にもご心配をおかけして申し訳ありません……」

「私の心配など気になさらないで。それよりききたいのだけれど、あれは優美さんの不注意で落ちたの?それとも誰かに落とされたの?」


 それとも、の部分を強調してユリア様は私に問いかけた。これは確信を持ってらっしゃるなぁ。


 あんまり大事にしたくなくて菊乃先輩や芹那先輩の前では隠してたけど流石にバレちゃうよね。


「後者の方です………」

 直接落とされたと言いたくなくて言葉を濁すと、先輩方は険しい顔つきをされた。


「それで、犯人に検討は?」

「それが全くなくて、落とされたのも急だったので顔を見ていませんでした」


 私に恨み持ってそうな人なんていっぱいいるから検討なんて出来やしない。


「そう、仕方ないわね。取り敢えず被害届を提出して少しずつ様子を見ていきましょうか」

「そうだな、一応目撃者がいないか聞いて回ってみるよ」

「よろしくお願いします」


「優美さんは不安かもしれないけど一旦生徒会に行って被害届を書いてらっしゃい?不安ならついて行くけれど」

「それは大丈夫です、ありがとうございます!」

 不安そうな3人に笑顔で返す。


 彼女達には生徒会役員としている覚悟を示したので、こんなことでビクビク不安がってなんていられない。自分は大丈夫、そう心の中で言い聞かせた。


 生徒会室へ向かう中、1通り自分を突き落としそうな人を想像してみる。


 恐らく背中の感触からして女子なのは分かった。

 でもそれこそ自分は女子から妬まれてるからなぁ。


 一番可能性が高いのは彼女だけど、突き落とすだけなら誰にだって出来るしなぁ。


 結局臭さの取れなかった髪の毛の匂いを気にしつつ私はその事をぐるぐると考えていた。

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