私は怜様のことを嫌いにはなりません。
「だから、先ほどのことは水に流しましょう」
そう言うと、怜様は静かにそうか、とだけ呟いた。
「…っ、遅かったか」
「つ…大輔先輩、そんなに息を切らしてどうしたんですか」
後ろから声がしたので振り向くと、大輔先輩がはぁはぁ言いながらこちらに駆け寄ってきていた。後ろから桃華が来るのも見える。
私の問いかけも虚しく、いつものクールなお顔を歪ませたまま、それ以上何も言わない。
走るのとか嫌いそうなのに、何か急用があったんだろうか。
「あの…」
「篠宮」
一体何があったのかもう一度聞こうと足を踏み出したところ、怜様に腕を取られた。
「怜先輩……?」
「二つ訊きたいんだが、いいか?」
「?良いですよ」
大輔先輩はまあ桃華に任せれば大丈夫だろうと怜様の方に向き直る。
「1つ目に、やっぱり呼び方は前のままでいい、その代わり、大輔や悠也のことも前の呼び方に戻してくれないか」
「分かりました」
正直怜様は常日頃から怜様と心の中でおよびしているからまだしも、副会長や柘植先輩を名前呼びするのはむず痒かったから、私としては全然構わない。
「それで、二つ目は?」
「……俺の事、嫌いになった、か?」
うぅ、眉間にしわが寄ってても怜様はかっこいいなあ。
え、こんな時に何を考えてるのかって?いや、なんだか怜様が変なことおっしゃったからすこし現実逃避しただけだよ?
突拍子もないことを聞かれ、思わず拍子抜けになってしまう。
「会長を嫌いになるわけないじゃないですか。例え今ので私のことを会長が嫌いになったり憎んだりされても、私は会長のことを尊敬してます」
私が怜様のことをフッたのは、私は怜様に幸せで、まっすぐであってほしいから。間違ってもどこにでもいるようなモブなんかと付き合って怜様の品性が疑われたり、怜様が単なる後輩への行為を恋愛感情と勘違いしたままでいないでほしいから。
怜様は良くも悪くも純粋すぎる。私はその純粋さを間違った方向に利用するんじゃなくて正しい方向に導ける、と言ったらおこがましいけど、その手伝いが出来る位がいいから。
篠宮優美はただのモブ。橘怜は攻略対象。その差を理解してない訳じゃないから。
だから、例え怜様が私の事を顔も見たくないくらい嫌いになったり、生徒会から追い出そうとするくらい憎んだとしても、私はずっと怜様のファンで居続ける自信がある。
私が周りからどんな目で見られても怜様のファンクラブを辞めなかったのだって、私は怜様のこと大好きだから。あ、ちょっと、いや大分凹むけどね。
初めて、あの時目にしてからずっと、怜様は私の…
「そうか、なら良い」
あ、少しだけ今笑った。やっぱり怜様は笑ってる姿が一番綺麗だなあ。
「おーい!そろそろ帰ろうかって!!」
「あ、はーい!じゃあ戻りましょうか」
よく考えれば自分怜様に好意を持たれるくらいには近づけたんだなあ、と思って自然と頬が緩む。自分絶対今変な顔になってる。でも、そのくらいにはうれしいなあ。
こうして、私達生徒会の合宿は無事終了した。
遅れてすみません(><)これで合宿編は終了になります。




