名前呼びは仲良くなるための第1歩です。
遅れてすみません!ギリ月曜日!投稿完了です!
…………謝罪は長いんで活報でします!すみません!!
「仲が良いみたいで何よりですね」
朝食の席に着くと、副会長がにっこりと笑って言った。
あれ?なんか睡蓮君や金鳳君の笑顔は凄いキラキラしててまぶしかったのに、なぜか副会長の笑顔はなんだか背後に黒い何かが見える気がする………
「失礼なことは考えないでほしいんですけどね」
「えっ!?し、失礼なことって!?」
「困惑した顔してたら大体の考えていることは分かりますよ」
「す、すみません……」
そんな顔してたかな、と思わず眉間をぐりぐりする。
私を見てふっと苦笑いをした後、副会長は笑顔を崩さず続けた。
「別に私も人間ですから、機嫌が良いときにも笑顔になりますよ。いつも仕事関係で怒る機会が多いだけで、その時にくらいにしか貼りつけた笑顔にしかなりませんから。さっきのは本心の笑顔ですよ」
「すみません、副会長が笑顔で怒る場面をよく見るものですから、つい」
「皆さん怠慢ばかりするからですよ。理不尽に怒ったりだなんてしません
……話を戻しましょうか、取り敢えず行儀が悪いかもしれませんが、食べながら話しましょう」
「そうですね、せっかくのお料理が冷めてしまいますし」
本日の朝の献立は玄米入りのごはん、味噌汁、卵焼き、焼き鮭、ひじきの煮物だ。
定番の朝の献立だけれど、一つ一つがとってもおいしい。特にひじきの煮物はひじき、にんじん、れんこん等のありふれた具材だけれど、出汁が効いててとってもおいしい。
昨日の夕飯の肉じゃがを食べたときにも思ったけど、ここの料理人さんに料理を習ってみたいなあ、すごく丁寧に料理作っている感じがする。
こういうの嬉しいなあ。
そんなことを思いながらひじきの煮物を頬張りつつ、話を進める。
「役員同士で仲良くするのはとてもいいことですから、良い傾向だと言えますね」
「はい、実は昨日睡蓮君から彼の過去の話を聞いて」
「ああ、遥斗話したのですね」
『過去の話』と言って分かる辺り、やはり副会長にとっても印象深い話だったようだ。
まあ、今の睡蓮君からは想像もつかないしねえ。
「そしてタメの提案を遥斗からって感じですかね」
「そうです、金鳳君はさっき私と睡蓮君がタメで話してるの聞いて自分も!って」
「そうですか、仲良くなって良かったですね」
あ、今ふって笑った副会長は特に怖く感じなかったかも、無駄に構えてたのかもしれないなぁ、私。
まあほぼ初対面の頃に脅しまがいのことしてた副会長だしね、仕方ないで済ませてもらおう。
それから鮭の身をほぐしていると、ふと視線を感じた。顔を上げると、副会長の右隣に座っていた怜様が何故か私の方をじっと見ていた。
驚いてまばたきを何度かしている間も、怜様とは視線が合ってるはずなのに何も反応が無かった。
あれ、もしかして怜様ぼーっとしてただけ?と無意識に首を傾げると。
今度は何故か顔を赤くしてふいっと横を向いてしまった。
えっ!?私何か怜様に怒らせるようにした!?
でも私何もやってないよ!?
一体どうしたら!!??
「あ、あの会長……………?」
とりあえず声をかけてみようと試みたら、今度は横に逸らした顔を私の方に向け、
「何でもない」
とつぶやき、怜様本人も朝食を食べ始めてしまった。
気にはなるものの、食べ始めてから大分時間が経っていたので、慌てて残りの朝食に手をつけ始めたのだった。
その後も今日はいつになく怜様と目が合った。
ほぼ1時間に1回のペースで目が合うため、こちらは冷や汗だらだらだ。
私本当に怜様に何かしたのかしら、ずっと見るのって失礼?
でも怜様の方から見つめてきてるし、じゃあ首を傾げたこと?
でも首傾げるのってなにか怒らせるような行動だっけ?
うーん!聞けないことなら放置するのが常なんだけど、聞けるんだったら聞いとかないとなにも対処出来ないしね!
「あの、会長」
ちょうど怜様も私も出番がない時、思い切って聞いてみることにした。
「どうした?」
「いえあの、私もしかして何か怜様のお気に障るようなことしてしまいましたか……………?もしそうなら、」
「いや、別に…………」
あれ、違った。怜様怒ってなかったのか。
…………あれ?じゃあ何で?
ハテナマークを顔が覆われるほど浮かべた私の気持ちを察したのか、ただ、とさらに怜様は言葉を続けた。
続けた言葉とは裏腹にどんどん視線が宙を泳いでいるけれど。
「ただ、」
「ただ?」
「………………いや、何でもない」
気になるところで止めないでーーー!!!凄く気になるじゃないですかーー!!
と心の中で叫んでしまった。
私は怜様の憂いを晴らしに話しかけに来たんだ!ここで止められたら凄く私が困る!!
「何でも気になることがあったら言ってくださって良いんですよ!直せることなら直しますから!」
桃華を見習って心持ち鼻息荒く言うと、怜様は困惑した顔を浮かべ、下を向いてこう呟いた。
「ただ…………………もう、名前で呼んでくれないのかと思って」
固まること暫し。
ようやく緊張から体が動いた頃には私も下を向いてしまった。もちろん顔は真っ赤である。
「な、名前で呼ばれたかったのですかっ!?」
「いや、体育祭の時は名前で呼んでいたから…………」
体育祭?極力怜様のことは周りの目も考えて『会長』と呼ぶようにはしてるんだけど、怜様のことを他の呼び名で呼んだのは街中だったあの買い出しの時くらいだ。まああの時は、『会長』という肩書きで呼ぶより『先輩』呼びしたほうが自然に見えるからという配慮で、体育祭の時は………………
『いやあの、怜様次の競技出ますよね?』
『怜様もう少し痛くなく…』
あの時かああああああああああ!!!!!!!
「いや、あ、あの時は!その!て、ててテンパってて!!その!なんか会長呼びする余裕が無かったと言うか!!えと!だから、その」
「困るなら別にしなくていい」
なんだかしょぼんとしてらっしゃる!?
でもあの時ほんとにテンパってて、思ってた事割とそのまま口に出してたから『怜様』凄く言っちゃったんだよな失敗した!!!
「こ、困ることは別にないので、だだだ大丈夫ですよ!?名前呼びを望まれるなら名前でお呼びしますから!」
「別に無理しなくても」
「無理じゃないです!れ、怜先輩」
呼べます!呼べますよ私!たまに会長呼びになったらまあすみません!
「なんだか申し訳ない」
「いいんですよ、むしろ仲良くなろうとしてくださってて凄く嬉しいです!」
その心意気!しかと受取りましたよ!どんとこいですからね!
意味もなくえへんと胸を張っていると、
「そうか、ありがとう」
ありがとうと言うけれどその声はむしろ戸惑いの気持ちが現れていた。
「………怜先輩?」
「次の場面やりますよー!」
しかし私の心配の声は副会長の司令被さり怜様の耳に届くことは無かった。




