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薊高校の面接が行われました。

2015/05/09 申し訳ありませんが今週本編お休みします。

活動報告にて小話をupしているので、よろしければそちらをどうぞ。

 学校側からは無期限の停学処分が言い渡された。

 といっても、学校側はいじめさえ認知していなかったため、原因の究明をするための期間、一応自宅でおとなしくしていなさい、という旨のもので、いじめのことが露見すると同時に俺の停学処分も2週間程で解除された。


 まあ、部活には出られなかったが、ちょうど事件があったのが夏休み前最後の授業日であったため、そこまでの支障はなかった。

 8月になり部活に復帰しても、そこまで体は鈍っていなかったし、部活動や勉強は今までと変わらない状態だったからまだ良かった。


 ただ、今までと変わっていることもあった。


 1つは、周りの空気は全然今までと異なっていたことだった。

 俺は比較的穏便な性格だと思われがちだった、なんせ喧嘩をしたこともなければだれかの悪口を言ったこともなかったから。


 ただそれが今回暴力事件を起こしたからか睡蓮=怒らせてはいけない存在と認知されてしまったようだ。

 まあ以前から仲良くしてくれていたクラスメートは相変わらず同じように接してくれていたし、部活動でも多少遠巻きにされることはあってもプレーや作戦が今までのようにいかないという訳でもなかったので結局そのままにしておいた。


 今まで何故か知らないけれどよく女の子に告白されていたのだが、その割合も減った。

 まあ受験生としては大いにありがたかったけど。


 もう1つは、憲明だ。


 結局憲明はその後一度も学校に来なかった。

 憲明の家を訪れたかったけど、生憎携帯電話で連絡しても一切返信が返ってこないし、学校の先生に彼の住所を聞いたが、

「すまないが個人情報だから教えることが出来ないんだよ」

 と言われた。

 恐らく個人情報の面もあったのだろうが、彼もしくは彼の両親が俺と顔を合わせたくなかったというのもあるのだろう。


 そして結局俺が卒業をする頃、知らない町に転校していったと担任の先生に聞かされた。




 そのまま事件から数か月後、薊高校の推薦入試が行われた。

 成績や部活動に関しては事件前も事件後も特に欠点として取り出されることもなかった俺は、以前の希望のまま薊高校の推薦枠をもらった。

 停学処分に関しても学校側の管理ミスであり、今回複数人からいじめを受けていた男子生徒を庇ってのことだった、ということで推薦書にはその事件に関しては一切記載されなかった。


 学校の先生側からはお前の成績ならいけると相変わらず太鼓判を押されていた。

 まあ、あの事件はマスコミに報道はされなかったものの、県の教育委員会からは管理不行き届きのレッテルを貼られた学校側としては有名な薊高校へ推薦合格した生徒がいることは名誉挽回の良い機会でもあったから、というのもあるのだろうけど。


 薊高校の推薦入試は適性検査、小論文、面接の三段階に分かれており、一日目に適性検査と小論文、二日目に面接となっていた。

 適性検査と小論文を終え、恐らくこの状態で行けば今いる入学希望者の誰より得点が高い自信があった。


 ただ、2日目の面接が一番の関門だった。

 驚くことに薊高校の志願者数は毎年50人以上いるというのに面接は集団ではなく個人面接らしかった。

 しかも個人個人によって毎回質問内容は異なり、時には突拍子もない質問さえ訊かれるらしかった。


 また、薊高校は面接重視で合格か不合格かを決めるらしく、いくら1日目で高得点を叩き出しても面接が全然ダメで落ちる、なんてこともあり得るとも聞いていた。

 過去に泣きながら試験会場を後にした生徒が大勢いるらしい。


 一応聞かれそうな質問を挙げれるだけ挙げて事前に解答を何個も考えては来ていたが、不安はどうしても拭えなかった。


 そして面接の時間になり、自分が呼ばれた。

 ちょうど前の子が終わったところだったのだが、心なしかその子の表情が青ざめているのが見えた。

 顔をうつむかせ不安で胸が押しつぶされそう、そんな雰囲気で彼は持ち場の教室へ戻っていった。


 その生徒に不安な気持ちを覚えながらも、ここまで来て不安だから受けないなんてことは出来ない、試験に合格するために今まで一所懸命勉強してきたのだから。

 負けるな自分、と気持ちを奮い立たせた。


「失礼します」

 ノックから入室まで済ませると、試験官は白髪の老人ただ1人だった。

 しかもオープンスクールでの資料で見たことあったから知っていたが、彼はこの学園の校長先生だった

 。

「どうぞ、おかけください」

 と和やかに言う校長先生だが、オーラがただならぬ者のような、背筋が勝手に伸びるようなそんな雰囲気をまとっていた。


 そしてその校長に促されるまま典型的な質問に印象のよい感じで答えていった。

 自分の受験番号、氏名に始まり今までの学校生活、自分の長所短所を答えていった。


 静かに頷きながら俺を見ていた校長先生だったが、ふと顔を下げ、なにやら別のメモ用紙に視線を落とした。そしてわずかに顔をしかめた後、俺を見てこう言い放った。


「ふむ…睡蓮遥斗さん。君は過去に暴力事件の関係者として停学処分を受けたことがあるみたいですね」

「は、はい。ですがそれは事件の詳細が分かるまで自宅で待機しておくよう学校の先生から言われたもので、その後しばらくして私に罪はない、ということで停学処分も解いてくださいました」

「確かに推薦書には載ってないみたいですね。…さて、それではこれを最後の質問としましょう」


 ふう、と1つ息を吐き、校長先生は俺の眼を射抜いてこう投げかけた。

「この事件のあらましを客観的に説明した後で、もし君が今その時に戻れるとしたら何をするかを教えてください」




 その質問は俺にとっては最も最悪な質問だった。


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