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俺は愚かにも何も知らなかった。

お待たせしました、睡蓮君過去話続きです。切るところが見つからず、少し長めになってます。

 憲明が転校してきてから半年ほど過ぎた。


 新学期となり3年となったが、憲明とはまた同じクラスだった。他にも仲の良かった何名かはまた同じクラスで、同じように一緒に行動していた。


 3年にもなると、最後の部活を精一杯楽しむか、逆に部活を引退し受験勉強を頑張るかの2手に分かれていた。


 自分もまだしばらくは部活を頑張り、夏休み明けには受験勉強にとりかからなければならない。

 一応志望校としている薊高校にはS判定をもらっている。

 このまま続ければ推薦入学も行けるし、追加で特待生も狙えるかもしれないと先生も意気込んでいた。俺自身に関しては何も問題はなかった。


 しかし、そんな中1人だけ、憲明は部活をしてもいないのに成績が急低下していた。

 授業中も眠たそうにしていて、寝ぼけてる時に先生に当てられて応えられないこともしばしばあった。


「なあ、最近大丈夫か?成績もやばそうだけど。前まで余裕で入れる学校今は厳しいって先生言ってたんだろ」


 流石に、あまりの変化に考査後の時憲明に聞いてみた。

 2年の頃は平均より皆上あたりだったのに、今では赤点をギリギリ回避しているくらいだった。


 憲明は未だに敬語はなくなったけれど、どこか腰が低いと言うべきか、下からな感じは消えなかった。

 この前なんかもお昼ご飯を持ってき忘れた俺に購買でパンを買ってきてくれたことがあった。

 お礼を行ってお金をちゃんと払ったが、なかなかあのときは驚いた。本人はそう感じていなかったみたいだったけれど。


「実はゲームにはまっちゃって。ダメなのは分かっているんだけど、止めれなくて」

「なら一緒に勉強やろうぜ、それなら」

「ああ、それはいいんだ、自分でなんとかしてみせるから、心配かけてごめん」


 やけに焦った様子なのを余程ハマったゲームなのかと勘違いしていた自分は、

「ほどほどにしろよ」と声をかけるだけに留めてしまった。


 まさかあんな事になるなんて想像もしていなかったのだ。




 そして夏休み前の最後の授業日、俺は憲明を誘って勉強をやるつもりだった。

 どうせあいつは今のままだと勉強どころか宿題が終わるのかさえ危うい。


 誘ったってゲームのことばかり考えてるあいつは乗ってこないだろう。

 正直あまりよろしくない方法だが、あいつの家までついて行って直撃訪問をしよう。今日は幸い部活が出来ない日だからちょうどいいだろうし。


 そう思い立ち、リュックを持っていそいそと帰ろうとする憲明を尾行することにした。


 靴を履き替え、校門をくぐるのかと思いきや、何故か憲明は校舎裏の方に向かっていった。

 どこか人を避けるように時々迂回をしつつ、けれど確実に校舎裏に向かっているのは分かった。


 校舎裏に何の用だろうか、そもそも校舎裏は薄暗いためあまり人が立ち寄る機会はない。

 自分が校舎裏に来たのも一年ぶりくらいの人気のなさである。


 もしかして、告白関係だろうか、可能性は別に0じゃないし、けれど今日そんな様子見せなかったのに、照れくさかったのか?


 なんてジロジロ考えながら校舎裏への尾行を続けた。


 しかし、校舎裏に到着して待っていたのは女子生徒なんかじゃなく、元隣のクラスの例の奴らだった。


 3年になってからお昼はまた俺らと一緒に取るようになった憲明は、奴らと一緒にいることが少なくなったようだった。

 仲が悪くなったのかと思ったが、普通に廊下ですれ違っても挨拶していたからただ単に回数が減っただけのようだと思っていたところだった。


 何故こんな人気のない校舎裏でわざわざ会ってるんだ?

 その答えはすぐに分かった。


「よお、憲明。最近ご無沙汰じゃねえか」

 初めて憲明のことを呼びに来たリーダー格っぽい奴がニヤニヤしながら声を発した。


 憲明は

「勉強が忙しくて」

 と苦笑いしながら答えていた。


「用件は分かってんだろ?」

「………」

 用件?

 何のことかと思ったが、憲明が黙っているため何も分からない。

 すると、


「ふざっけんじゃねぇぞ、オラァ!!」

 え………?


 目の前で憲明は彼に殴られていた。

 続けて周りにいた奴らも一斉に蹴ったり殴ったりしている。


 憲明は鞄を抱え腕でガードしているが、確実に痣になりそうな音が殴られたり蹴られたりする度にしている。


 1人が徐に憲明の腕の中から鞄を取り上げた。

 憲明は抵抗していたが周りからの暴力でうまく抵抗が出来ていない。そして、その中から財布を取り出し、中から何かを抜き取った。


「おい、金あんじゃねえか」

「はっ、3万もあるのか、ご苦労様」


「それはっ!生活費の分のっ!!」


「んなこと知るかよ、おい金もらったし行くぞ」

 泣いて縋る憲明を無視し、お金を懐に入れた奴らはその場から立ち去ろうとしていた。


 自分は、驚きで硬直していた。

 家の生活費?金をもらう?仲がいいはずじゃなかったのか?何で殴られてるんだ?


 そして、それからフラッシュバックのように今まで気になったけれどスルーしてきた疑問が浮かんできた。


 何故憲明はあんなに腰が異常に低い態度のままだったのか。


 カチッ


 それから導き出された答えが出てきた瞬間、俺はスイッチが入ったかのように隠れていた場所から飛び出し、奴らを殴っていた。


 奴らの悲鳴も無視し、誰か生徒が呼んできた先生達に止められるまで俺は何も考えられずただ怒りのままに殴っていた。

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