モブな私が生徒会役員になってしまいました。
副会長に脅され頷いてしまった私は、まあ仕方ないかと早々に諦め、副会長と生徒会室へ向かっていた。
まあ、別にこういうのを予想していなかったわけじゃない。流石に壁ドンされるとは思ってなかったけど………それでも理詰めかなんかで攻めてくるとは思っていたから、人間諦めと決心が大事と言える………言い聞かせる。
生徒会室までの道のり長くね?と思ったそこのあなた!正解です。
というのも、我が学校はちょっとリッチで有名な私立なので校舎が三つ、中庭や校庭も広く、その他諸々の設備がバッチリです。私がここに入ろうと思った理由の一つはこれです。
それで、私のクラスは三号館の四階にあるのですが、生徒会室は一号館の三階にあり、しかも直通ではなく三号館の一階に下りて、結構な広さの中庭を経由して一号館は行き、そこからまた上らねばならないのです。
走っても五分はかかってしまいます。遠い………まあ痩せれると思ったら結構いいハードさかも?ポジティブシンキングでやっていきましょー。
とそうこうしている間に生徒会室に着きました。やっとかー。
そして、扉を開けると同情のような、可哀想なものを見る目が二X四。
「こ、こんにちは?」
「やっと篠宮さんが快く生徒会に入るの了承してくれましたよー」
「快くじゃなくて脅されて仕方なくじゃ………」
「何か言いましたか?翔汰」
「い、いや!な、なんでもないよ!」
金鳳君が副会長に敬礼し、他の三人は責めるような目で君を見ている。
………まあ、つまり副会長の腹黒は皆知っていたということか。
副会長が教室に迎えに来たのも、恐らく私を迎えに行くと副会長が言って、誰も反対出来なかったから、な気がする。で、今申し訳なさそうな目をしていると。
「脅すわけないじゃないですか。ただ状況説明してOK貰っただけですよ?」
ねえ、という副会長のどこか脅しを含んだ声に首を縦にブンブン振る。
確かに逆らおうとは思わないもんね。あれだ、生命の危機を感じる。
私は心の中で副会長には逆らわない、と誓った。
「………まあ、取り敢えず座れ。席はそこだ」
と怜様はどこか不憫そうに私を見て、以前座った席を指し示す。
私と副会長が席に座ると、会長から数枚の紙と別の紙束が手渡された。
「まず、そっちの紙は生徒会に入るための書類だ。家で書いてこい。それと、そっちの紙束は今日の仕事だ。篠宮には書記の仕事をやってもらうから、やり方は遥斗に聞くといい」
とだけ言うと、自分の仕事に戻ってしまった。
他のメンバーもそれぞれ仕事をこなしている。ただ、さっき副会長から罰として大量に仕事を渡された金鳳君は必死になっているけれど。
私も睡蓮君に教えてもらいながら、与えられた量は一時間程で終えることができた。
「やっぱ篠宮さん入れて正解だったですねー。飲み込みも早いし」
お世辞を言って褒めてくれる副会長にありがとうございますと返し、昼は来た方が良いのか尋ねる。
「来てくれる方がありがたいですが、明日は別にいいですよ。放課後来てくれれば」
「分かりました」
「そういえば、今日の昼まで生徒会に入るの嫌がってたのに、威勢がいいですね」
「まあ、入ると決めましたし、決めた以上自分のやらねばならないことは自分でしないと」
「翔汰も見習わないと」
「なんで俺なんすか………」
「仕事、終わってないですよ、これは明日も入れていいからきちんとやっといて」
「………ハイ、ガンバリマス」
誰がこんなに仕事を…と言う声は聞かなかったことにする。
今日はまだ生徒会に入ってないため、さよならと言って早めに下校させてもらった。
ずっとどこかから視線を向けられているとも気付かずに。