睡蓮君は二重人格だそうです。
「知りたい?俺が生徒会に入った理由」
急に色っぽい表情になった睡蓮君に魅入られ、咄嗟に頷いてしまった。多分顔は当てられて真っ赤になっているだろう。
駄目だよ!急にそんな表情されたら顔赤くなっちゃうじゃないか!
しかも君風呂上りでしょ!元ステータス:イケメンでしょ!相乗効果増し増しじゃないですかやだ!
うぅ、でもそれ関係なく睡蓮君が生徒会に入った理由気になるんだよな。
金鳳君は前会長さんに誘われて半ば無理やり入らされたって言ってたけど、睡蓮君はその時には生徒会入会決定していたみたいだし。
言い方的にただスペック高かったからってわけじゃなさそうだけど…
頷いて、話を今か今かと待ちわびていると。
「…っふ…あっはは」
突然睡蓮君が笑い出した。しかもお腹を抱えて涙まで出てる?
突然すぎて全然事態を把握できず白黒している私にごめんごめん、と笑いながら本人はわびた。
「私、あっさり頷いたらダメだった…とか」
「いや、そういうわけじゃなくて…まあこっちの話。気にしないで」
「気にするなって言われても…」
突然目の前で大笑いされたら理由が気になるものだ。
「別に篠宮さんは悪くないよ。ただ、ふふっ、何でもない」
「すごく気になるんですが!」
「そのうち分かるから。今は、ね」
いつもの表情に戻った睡蓮君に爽やかウインクをされはぐらかされてしまう。
うーん、気になるけど言いたくだろうないことを無理に聞くのも野暮かなあ。というか言葉で勝てる気しないからどうせ教えてもらえないか。
「じゃあさっきの生徒会に入った理由も教えてくれないんですか」
「ううん、それについてはいつか話さないと、とは思ってたから。今の生徒会にいるメンバーで渡辺さん以外は皆知ってることだし。篠宮さんも生徒会にいるって決断してくれたから話しておかないと」
「そんなに重要なことなんですか」
「だと自分は思ってる。じゃないと、後々迷惑かけちゃうかもしれないから」
迷惑、という不穏な単語に驚いたけど、話の続きが気になるため取り敢えず聞き流した。後々この言葉の真の意味を知るとは知らずに。
「俺が昔やんちゃしちゃったのって知ってる?」
「やんちゃ、ですか?確か中学校の頃、暴力事件に巻き込まれてしまって停学処分を受けたとは聞きましたが…」
「そ、それ。まあ厳密には巻き込まれたんじゃなくて起こした側だけどね」
「お、起こした!?え、でもそんな風には」
睡蓮君は見た目爽やか優等生だからにわかには信じられなかったが、でもそんな彼だからこそただ巻き込まれただけで停学処分はないか。
「停学処分ということは、睡蓮君も手を出したということですよね。でもすぐ処分が解かれたということは相手が挑発して手を出した、ってことで合ってますか」
「当たり。よく分かったねー」
「でもやんちゃしてたってことは、高校では性格変わったってことですか?」
「ううん、性格が変わったわけじゃなくて、二重人格のほうが近いかな。やんちゃな性格も今の性格もどっちも素の自分だよ」
「珍しいですね。二重人格だなんて」
裏表の顔を意識的に作る人は大勢いる。人間なんだから外面をよくしてよく見られたいと思うのがふつうだから。ただ素の二重人格と言われると訳が違う。
「そう。それが前提になるんだけどね。話は中学までさかのぼるから時間かかるけど、いいかな」
時計を見ると11時を回っていた。明日もあるし寝るべきだろうが、ここは聞いておいた方がいい気がすると私の何かが告げた。
「わかりました、今話しておきたいって睡蓮君が思ったんなら聞きます」
そういうと睡蓮君はありがとうと返し、ぽつりぽつりと話し始めた。




