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絆を作れたようです。

「さて、何をするかだけど」

「自分達で1から台本作るのは大変だしなぁ」


「あ!じゃあ演劇部の人にお願いしてみますか!」

 私知り合いいるんで!という桃華の提案に皆で頷く。


 私らにきちんとしたものを作るなどカオスにしかならない。


 ある人は私を変に飾ろうとし、ある人は全然喋らず、ある人は完璧にしたがり………あれ、そういえば……




 その後すぐ睡蓮君と文化祭関係の資料を取りに資料室へ向かう用事があったので思いきって尋ねてみた。

「普段あまり喋らない会長が劇なんて可能なんですか?」


 あの普段雰囲気で悟らせる怜様が劇なんて想像できないのだ。声張り上げるとか出来るのかな?

 失礼とかじゃなくて、純粋に大きな声が出せるか心配なんだよなぁ。


 その意図が伝わったのか、あぁ、と苦笑しながら答えてくれる。

「多分大丈夫だと思うよ?選挙演説が出来るんだから。声が通らなかったらピンマイク付けるのもありだし」

「ピンマイクなんてあるんですか?」

「確か前に見た学校にある備品一覧に書いてあったはずだよ」

「よく覚えてますねー、見たって言っても備品一覧なんて山程あるでしょうに」

「ピンマイクなんてあるんだ!って印象に残ってただけだよ」


 たまたまと苦笑するけど純粋に凄いと思う。

 私だったら、ピンマイクどころか資料なんて覚えとけと言われたもの以外は、提出してしまってすぐ忘れてしまう。


「それでもすごいですよ、私はすごいと思う!」


「………ふふっ」

 睡蓮君の急な笑いにキョトンとする。


「何か変でしたか?」

「敬語じゃなくていいよ?いや、だんだん篠宮さんも僕達に慣れてきたなーと思って」

 それが嬉しいな、って思ったんだ、と睡蓮君が爽やかスマイルになる。う、イケメンのガチスマイルまぶいわ。


「慣れてきた?」

「うん、柘植先輩と打ち解けるのは早かったけどね、それ以外の僕達には前までだったら少し距離置いてた感じがしたから。僕達が話してても見守ってたりとかさ、必要以上に気遣ったりとか。でも、今だとこうやって少し話してくれたり。それが嬉しいなって思ったんだ」

「ああ、そうかもしれませ………いえ、そうかもしれないね」

 前までは役員達の見た目だけに引けを感じて1歩距離を置いてた。自分が皆の隣に並ぶのは良くないって。


 でも役員達のことを少しずつ知る内に、ああ、この人達も同じ人間で、それぞれ悩んでたり苦手だったりするんだなと思うと親近感が湧いたのだ。

 怜様は天然で、副会長は腹黒で、睡蓮君は誰にでも打ち解けれるけど、金鳳君はヘタレで、要は自分と同じように欠点を持っているんだと思うと一気に彼らが雲の上の存在から空中くらいの存在に思えた。

 まあ、自分が彼らに対等になれるとは思ってないけど、10000くらいだと思ってた差が実は100くらいだったんだと思えたから、それがきっかけだろう。


「でも私も変わったけど役員の皆さんも私のことちゃんと見ててくれるから、だからそのおかげなんだよ」

 皆見た目評価はせず中身の評価をしてくれるから、だから私はこれだけ打ち解けれたのかなと思うのだ。


「そうだね、絆は作れてるから後はもう少し自分や周りに敏感になれたらね」

「ん?敏感?」

「何でもないよ、さて資料室に着いたから早いとこ探し物しとこう!」

「あ、うん!」


 その意味を知るのはまだまだ先。そして、その前に立ちはだかったのは、その絆を壊す、あの事件だったのだ。

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