文化祭の出し物を決めましょう。
修学旅行後、まるで「修学旅行だったからってはしゃぎまくったテンション引きずるなよ、学生の本分は勉強だ」と言わんばかりに前期末テストが行われた。
まだテスト結果は貼り出されてはいないが、自分の中では前のテストよりは良い出来だったのではと内心喜んでいた。
この頃には自分も平静に戻りつつあったから、なんとか怜様の前でもいつも通りの対応ができるようにはなっていた。
心の中の私は、怜様の前だと年甲斐もなくキャーなんて叫んでるけどね!
………あれ、もしかして平静に戻ったんじゃなくて演技力上がっただけ?
まあそれはともかくとして当たり前の日常に満足していたある日、事件が起こった。
きっかけは会長である怜様であった。
「…………そろそろ出し物決める時期か………」
それに対する反応は皆それぞれであった。
まず睡蓮君はああそういえばと言うような表情をしており、副会長は眼鏡を押し上げ「そうだね」と怜様に返した。金鳳君はまるで現実から目をそむけるかのように苦い顔をしてうつむいていて、柘植先輩は何故か無表情だ。
そして私はポカーンと口を開けていた。
「出し物って何のことですか?」
詳しく事情を知らない桃華は首を傾げながら怜様に尋ねた。
ゲーム中で出し物について触れる何かがあったのかなかったのかは別にして、桃華は4月に転校してきたのだから何のことか分からない様子になるのが当たり前だ。
その点はきちんと理解しているのか怜様が説明をする。
「9月の文化祭の最終日最後のステージは毎度生徒会が何か出し物をするのがきまりになっている」
「5年前くらいから始まって今では恒例行事になってるんですよね」
怜様の説明に補足して副会長が言った。
「たしか去年は………」
「言わなくていい!!」
「クイズ大会でしょ、負けた役員は女装するっていう」
私が言いかけると遮るように金鳳君が叫んだ。だがそれも虚しく睡蓮君が言ってしまった。
そう、去年は役員対生徒達でクイズ大会をして、正答率が生徒達の平均正答率より低い役員には罰ゲームで女装をしたのだ。
たしか餌食になったのは金鳳君、柘植先輩、去年の生徒会長で、金鳳君は金髪美少女に、柘植先輩はインテリ系のお姉さん系美女に、生徒会長は儚げな美女になっていた。クオリティが高すぎてファンクラブに所属してない私も可愛いとうなりそうになったほどだ。
それで金鳳君と柘植先輩がげんなりしているわけだ。
「今年は女装以外がいい」
金鳳君の静かな心からの叫びを汲み取り、皆で案を出していく。
「皆で特技披露していくとか?」
「私特技なんてないしなぁ」
「マジックとかはどうですか?」
「それ一昨年やったんだよ」
「じゃあ劇とかは?」
何気なく私が言うと、皆があー、と頷いた。
「劇ならまだ……」
「女装しなくていいし」
「いいと思いますよ」
「小道具とかは演劇部に借りれるし」
「いいんじゃないか」
「優美ちゃん飾れるし」
「あ、やっぱ取り消しなしですか」
「なんで!!」
なんで動機が私を飾るなんだよおかしいよ普通。
だが、私の取り消しは却下され、流れは決まりの方向だったので、他にいい案も出ず、結局劇に決まった。
これが大きな事件を呼ぶとも知らずに。




