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急な反則技はご遠慮下さい。

「詳しく事情を説明しろ」

 目の前には怒りでブリザードが荒れまくっている怜様。ここは何とか抜け出さなければ殺される!

「いやあの、怜様次の競技出ますよね?」

 そろそろ行ったほうが良いんじゃあ、とそれとなく促したが、

「競技の進行は理解しているし、借り物競争の次には出ない。あと15分いてもリレーには間に合う」

 と呆気なく振られてしまった。

 うぬぬ、ここで他の人を呼ぶなんてことも出来ないだろうし、どうしたら………

 あれこれ逃げ道を考えるけれど一向に良いのが思いつかない。

 ブリザードに怯えつつ、なんとかそれらしく言ってここから抜け出したいのだが、頭をひねってもフル回転させても浮かばないものは浮かばない。




 それを見てどう思ったのか、恐らくは意地悪く怜様から逃れようとする私に呆れたのだろうが、部屋に置いてある救急箱の中から湿布や包帯を取り出して、私の前にかがんだ。

「あの、包帯は何に」

「応急処置だ。本当なら氷を持ってくるべきなのだろうが、それを取りに行くと話を聞く時間が無くなる」

 私的にはむしろ万々歳なのですがね。

 と話したい口を閉めておく。後で聞くと言わない辺り、時間を置いてはぐらかそうという私の魂胆は丸見えのようだ。うっ。

「取り敢えず湿布と包帯で固定だけしておく。帰ってから病院に行って一応見てもらった方がいい」

「あ、ありがとうございます。自分でやっておきます」

「いい、自分で固定するのは慣れてないとゆるんでしまうから」

 そう言って親切にも湿布を貼ってくれた。いやまて、これってあこがれの人に処置してもらってるって自分何様みたいじゃない…まあ先輩がやるって言ってくれてるんだしいいか!

「それで、言い出さないってことは自分で転んだんじゃないんだろう?」

 あれ、痛いのは足だけなはずなのになあ、頭が痛いのは何でだろうなあ。

「いやあ、恥ずかしくて言えなかったというかっいたっ…」

「嘘はつくな」

 痛い痛い痛い!!!怜様もう少し力ゆるめて!!!

「怜様もう少し痛くなく…」

「痛くしてほしくなかったらちゃんと正直に話せ」

「わかったわかりましたから!なんでも言います!」

 なら、とやっと力をゆるめてくれた。というかさっき正直に話せって言った時更にきつく締めましたよね?

「誰にされた?」

「わかりません。声からして恐らく女子生徒の誰かだとは思いますが…」

「なんて言われた?」

「『退場しろ』と」

「退場か…」

 恐らく私と同じことを思ったのだろう。顔をゆがませ、それでも包帯を巻く手は止めなかった辺り、流石である。

 だから、話したくなかった。生徒会長として責任を感じることなんて目に見えていたから。この人はきっと私なんかのために心を痛めてしまうって分かってたから。だから煩わせるような真似をしたくなかったのに。

「三月に約束したばかりなのにな」

 その言葉にはっとなって下を向いた。そこには悔やみきれないといった表情でうつむく怜様の姿があった。

「生徒一人が傷つくのを止められないなんて生徒会長として情けない」

 そんな辛そうな顔をしないで。

 自嘲気味に呟く怜様の手を思わず取って両手で包むようにした。

「そんなに、背負い込まないでください。私は!もう自分の意思で生徒会にいるんです!だから、対処できなかったのは自分の責任だから、だから…」

 こらえきれず涙がつうっと頬を伝ったのが分かった。上手く言えないけど、伝えたい気持ちはそういうことで、それで…

 涙を流しながら言葉探しをしていると、私が掴んでいない方の手が動くのが見えた。ぽん、と聞こえない音がした。

「ありがとう」

 怜様が私の頭に手を置いて、微笑している。ずっと奥までありそうな深い青色の瞳が、言葉以上に慈しみを持っていた。

 私はというと、目を丸くして、ただ困惑しているしかなかった。顔は湯気が出るくらいに熱くなっているはずだ。基本怜様は笑うことがないから笑わない人だと思ってたから。たとえそれが微笑程度だとしても。

 その笑顔は反則だと思うんです。

 私の様子を見てきょとんとする怜様に、そんなことを言うこともできず。ただ赤くなった顔を手で覆うしかできなかったのだ。


2015.11.16

「いやあの~」の怜様と会長が重複していましたので訂正いたしました。

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