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言葉の力をなめてはいけません。

「会長、このお礼は必要ないので、お返しします」

 ときっぱり断った私を会長も、そして周りの人達も何言ってんだという顔で見る。

 唯一真純だけがふふ、と笑って私の方を見ていた。

「………っ、すまないが理由を教えてもらえないか」

「勿論そのつもりです。ですがもう1限目が始まってしまいます。昼休みじゃダメですか?」

「分かった、生徒会室に来てくれ」

 少し動揺の様子を見せた怜様はすぐに元の状態に戻り、それじゃ、と言って教室を出ていった。

「お疲れ、優美」

「緊張したー、恐かったわー」

 ほーっとため息をつく私への視線は四方八方から飛んできたけれど、誰も前のように話しかけることはしなかった。というより、どう話しかけたらいいのか分からないという感じである。

 まさかファンクラブ一員のモブがアイドルの行動を、しかもお礼を拒否するなんて、と言いたそうにしているのがひしひしと伝わってくる。

 ………だからそんなに無言で見つめないでほしい。私のハートはガラス製とまではいかないけど脆いんだからね!

 まあ、そう願ってもやはり無理で、しかも噂を聞きつけて他のクラスの人も来たりして、4限が終わるまで胃に穴があくくらい色んな人から見られた。




 そして、4限が終わると弁当を持って生徒会室に向かった。

 行く途中でも色んな所から色んな視線が飛んできたが、無視無視!一々気にしてたら身持たないもんね!これから決戦だし!気持ちは長篠なり!

………鉄砲持ってそうなのは怜様だ、私負ける側じゃん!?じゃなくて………と考えていると生徒会室にたどり着いた。

 ふぅ、行きますか。

 中に入ると生徒会メンバーからの視線が………皆様早いですね、私終わってすぐ来たのに、なんでかな?

 会長以外のメンバーも私が会長に啖呵をきったのを噂にしたのか、それと本気で来るとは思ってなかったのか、苦笑いをしたり眉間に皺を寄せたり、様々な反応をしていらっしゃいます。

 その中、副会長が準備室を勧めてくださったので、会長とそちらに移動して、向かい合って座りました。

 説明は早い方が良いだろう、と弁当を出してすぐに話を始めた。

「早速ですが、断った理由についてですが、3つあります。」

「3つもあるのか?」

「はい。まず、1つ目は、重いです」

 怜様は?を浮かべたまま困惑している。

「たかだかハンカチ拾ったくらいで何千円もする化粧品をもらうのは、割に合いません。誕生日などでは話が別ですが、落し物を拾っただけです。むしろ感謝の気持ちが軽いような気がするんです」

 唖然として見ているが、私の中ではその落し物拾う=何千円の化粧品という方程式は許せないんだよね。正直重すぎて感謝の気持ちが欠けているように感じる。というより、所謂引くわーってやつだ。

「2つ目は、なかなか言いにくいのですが、ハンカチを拾ってから、今まで一回も会長から感謝を表す言葉を頂いていません。プレゼントで伝えたかったのだと思いますが、直接言ってもらった方が嬉しいです。」

 無口な怜様のことだから、そういうことも言わないのかもしれない。けれど、言葉ってやっぱり物に勝るものがあるんじゃないかと思う。なんでもかんでもプレゼントに頼ると、物を渡して伝えた気になってしまうが、言葉を添えるからこそのプレゼントだと私は思うのだ。

「3つ目は、会長は感謝を伝えるのにプレゼントを渡しすぎです。落し物をする機会は少ないかもしれませんが、そんなに高い物ばかりあげていたら、お金どんどん減っちゃいますよ」

 今はまだいいかもしれないが、もし、怜様からプレゼントを貰うために怜様の持ち物から勝手に取って盗んだりしたら、そんなものきりがなくなってしまう。

 というのも、以前親友が

「もしかしたら、会長さんの持ち物から勝手に盗んであたかも拾いました風に渡す奴って絶対出てくるだろうね」

 と言っていたのを思い出したのだ。

 世の中にはどんな奴がいるかも分からないのにそんなことをしていたら、いくら家がお金持ちでも出費がバカにならない。そんなことはファンとして避けさせるべき決定事項なのだ。

「なので、私は必要ないと言ったんです。別に今までのは強制じゃありませんし、色んな反論もあると思います。私の個人的感情ですから、気にするもしないも会長が決めることです。ただ、私はプレゼントは受け取りませんから」

 OKですか?と訊くと、少し考え込む素振りを見せた後、頷き、そして照れたように

「そんなことは気づかなかった………色々とありがとう」

 と下を見ながら仰った。

 なんか、前言撤回したくなったぞ、今。会長のありがとうの破壊力を見くびっていたようだ。これは、逆に会長のありがとう求めて盗みを働く奴が出てくるに違いないじゃないか!さすが攻略対象。イケボでイケメンにこんなこと言われたら鼻血吹いて倒れそうだ。しなかった私を褒めてやりたい。

「イ、イエ………キニシナイデクダサイ」

 と片言になったのは大目に見て欲しい。

「それと、やはりこれは必要ないから。今回のお礼だ」

 と先程のプレゼントをくれたので、ありがとうございますと言って受け取った。ほ、欲しかったわけじゃないし、憧れてたわけじゃないし、ひ、必要ないって仰るからもらうだけなんだからね!と内心テンパる私に、会長はそういえば、ともう一個、プレゼントなんかと比にならないくらいのダイナマイトを落とした。

「それと、悠也が今度篠宮を生徒会に入れると言っていた」

 うっそぉぉぉおおおおおおおおー!悠也って多分副会長のことだよね!?何考えてるのさぁぁぁぁあああああああー!?

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