初めて差し入れをもらいました。
「はぁ~、終わったぁ!」
弁当の唐揚げを摘みながら私は盛大なため息を吐いた。
「お疲れ様。大変そうだね」
「うん、私得点をそれぞれのクラスの選手代表から聞いて紙に書き込む係の補助やってたんだけどさ、人が一気にわんさかやってくるし、皆疲れて早くクラスに戻りたいからすごい勢いでやって来てなんか気負されそうになるしでてんやわんやだったよ」
でもまあ午前中ずっと得点係やった分、午後の仕事は全部の競技が終わって賞状作成を手伝うだけだからその分ゆっくり出来て有り難い。代わってくれた桃華には本当に感謝している。
「次の綱引き、優美出ないと行けないんでしょ?今の内に休んどかないときついよ?」
「ありがと。そういえば真純リレー3位でしょ?凄いよねぇ」
「まあ運動は得意な方だし一応運動部所属としてはちゃんとやらない訳にはいかないかなって」
「よっ、流石バスケ部員!」
「あ、あのっ!」
ん?と思って振り向くと、体操着から見て恐らく同級生の女の子2人が顔を赤らめ恥ずかしそうにしていた。よく見たら5組の高崎さんと島本さんだった。桃華に次ぐ学年の美少女として知られている。
そこでふと誰かがこんなことを言っているのを思い出したのだ。
『薊祭で結ばれたカップルは別れない』
そういえば様々な時代の様々な学校でよくあったジンクス、ここにもあったなぁ。でもこんなの誰かが言い出した嘘で、現に様々な時代の様々な学校の様々なカップル全員が別れないとか無理な話だ。それでも恋する男子諸君女子諸君のウケはいいのだろう。浮き足立っている生徒達も何人もいるし。
まあつまり何が言いたいかと言うと、これは告白だろうなってことだ。私?こんな平と凡を足した奴にではない。だってここには真純がいるからね!
ここは友として身を引くべきだろうと立ち上がると、
「私ここにいない方がいい?」
「あ、ううん!轟さんにいてもらった方がむしろありがたいな」
どういうこと?私の台詞をなぜ真純が?そしてなぜ普通に高崎さんは答えてるの??
動揺を隠しきれず交互に3人の顔を伺うが、逆に3人は不思議そうに私を見るばかり。
「えっ、真純がいなくなるって、えなんで」
モブだから空気を読むスキルは身に付けてきた筈なのに!いきなりヒロインと役員とで恋話になっても壁と同化できるよう雰囲気を察せるよう日々努めてるのに!!我の修行が足らぬというのか!
私が心の中で悔し涙をにじませていると、
「だって2人が優美のやつに入ったって聞いたから」
「はあ!?」
優美のやつってことはまさか…..
「あ、篠宮優美ファンクラブ会員ナンバー20番の高崎凜です」
「同じく篠宮優美ファンクラブ会員ナンバー21番の島本鈴乃です」
「「よろしくお願いしますね」」
「もっと別の形でよろしくしたかった!」
めっちゃ可愛いのになぜこんな平凡顔のファンクラブ会員やってるの!?普通逆だよ!平凡な奴が美男美女見てキャーキャー言うもんでしょ!
何度目とも知れないやり取りに軽くめまいを覚えると、そうとも知らない二人は頬を赤らめよく見る「アイドルファン」の顔になった。
「選挙の時にかっこよく演説してる篠宮さん見て私達ファンになったんです!」
「とっても風格があってかっこよくって、渡辺さんが篠宮さんのファンクラブを作ってるって聞いて即加入を決めたんです!」
ねー、と可愛らしく言う姿は周りの男の子達が顔を赤らめるほどだ。
「それで、差し入れをと思いまして!」
良かったらどうぞ、とこれまた可愛らしくラッピングされた袋を譲り受けた私は、周りの「何であいつが美少女達から物をもらってんだ」視線を苦笑いでスルーしながら
「ありがとう」
と答えた。
「ちなみに中身は…」
「あ、クッキーです!」
「二人で頑張って作りました!」
「あ、そうなんだね、ウレシイナ!」
先生!周りの、特に男子たちからの
「何こいつ美少女二人から手作りクッキーもらってんの?うらやましすぎる!」
っていう視線が痛いです!いたるところから刺してきます!痛い!
「ちなみに、渡辺さんに味見してもらったので、味と安全面はばっちりです!」
「へえ、桃華に…」
可愛い子3人がきゃっきゃしながらクッキー作る姿を想像した者、挙手せよ、大丈夫だ、私もだから!でもさ!渡す相手が私ってありえんと思った者も挙手せよ、大丈夫だ、私もだから!
「それじゃあ、応援してますね~」
と言いながら去っていく美少女達を見送りながら、まさか自分がアイドルのような体験をするとは思っておらず、嬉しい反面得点係の疲れが倍増して、再び大きなため息を吐いたのだった。
高崎さんと島本さんが組が違っていたので5組に修正しました。




