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私達は仲良く遊びに出かけました。

 あの後結局、桃華の看病をしたりしたため、遊べた時間は約3時間程度だった。

 けれど、その3時間は今まで体験したことのないような時間だった。

 まず、メイクと関係ないところでいくと、人生初男性からのナンパをされた。しかも3回も。別に真純がモテないなどという訳ではない。しかし、可愛い系ではなくカッコいい系の真純が声をかけられることは少ない。あっても女性ばかりで男性というのは見たことがなかった。しかし、今回可愛い系ド真ん中の桃華がいる。しかも志穂もいるため、まあこんな集団なのだからナンパされない方がおかしい。

「あの娘達ちょー可愛くない!?」

「どこかのモデルさん達かなあ」

 というような声がちらほら聞こえたし、突き刺さる視線の数は学校にいるときの比ではない。

 そして、メイクしたことによるものは、その中に私をなじるものがなかったことか。

「やっぱり皆モテるんだねえ」

「なんで他人事みたいなのよ」

 真純に小突かれてあははと笑う。今の私の容姿は今までの3割増しだから3人の中に混ざっていたところでなんの違和感もなさそうだ。メイク映えする顔で良かったなあと心から思った。

 といっても、メイク映えするほどの凡人顔ってだけの話なんだけどね……と心の中で苦笑した。

「ねえ優美ちゃん、学校でもメイクしたらどう?」

 桃華にいきなり言われて私は思わずえ、と呟いた。ここは駅近くのドーナツ屋で、新商品の抹茶ドーナツがおいしいという評判を聞いてやって来たのだった。

「流石に学校で化粧は……それに生徒会役員は生徒の模範となるべき生徒でしょ?化粧はどうかと……」

「でも別に校則にメイク禁止とはないし、きつくないナチュラルくらいなら大丈夫なんじゃない?」

 役員であることを理由に桃華に反対したけれど、さらに言い返されてしまった。確かに、私立だからか校則はゆるく、化粧NGではない。授業の妨害にならない程度であれば多少は構わないとなっている。

「今のもそこまで濃いわけじゃないから少し手を抜いても学校は構わないと思うな」

 ね、それで学校行こ!と言う桃華の気持ちは何となくわかる。学校であれだけ不釣り合いだの言われている私が今の状態で行ったら誰も容姿が不釣り合いだなんて言わないだろう。日頃からそういう見た目に関する陰口に桃華は私より憤慨している様子を見せていた。

「何言ってるのあの娘達。優美ちゃんは超絶可愛いんだから!」

 と言っているのをたまに聞く。まあ、その時は私は必ずなだめる役に回るのだが。

 いつも生徒会の用事の帰りに髪をいじらせてと言ってくるのもそれが原因の一つであることくらい察していた。けど、

「化粧は遠慮しとくよ。面倒だし、あんまし化粧好きじゃないんだ」

 でもありがと、と声をかけた。私を見て桃華はそれなら仕方ないけど…と言って別の話題に切り替えた。恐らく桃華は私の表情から何かを悟ったのだろう。志穂も何も言ってこないから恐らく同じことだ。

 化粧は確かに便利だ。自分のコンプレックスを様々な科学技術で隠してくれる。でも、それで自分が役員でいることに相応しいなどと思われたくない。自分の実力で認めてもらわなきゃならない。そのためのあの演説なのだから。

「その代わり、髪ならいじっても」

「「いいの!?」」

 思わずぽろっとこぼれたつぶやきに過剰に桃華と志穂が反応する。思わず頷くと二人は言質取った!と大喜びしていた。

「あれ、私なんかまずいこと言った…?」

「バカ……エサばら撒いてどうすんのよ」

 驚く私の隣で真純が呆れた様子で首を振っていた。

「しばらくあんた離してもらえないでしょうね、優美」

「あ、やばい、やっぱて」

「「撤回は聞きません!」」

「えぇ!?」

 無邪気に笑いあう美少女コンビの横で私は今日何度目か分からない項垂れる羽目になった。


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