女の勘はよく当たります。
生徒会から呼び出され、ダッシュで教室に戻った時の皆からの視線は凄かったです。アイドル達に見られるのとは別の意味で耐えるのが辛かった………
ファンクラブに入っている人達からは羨ましー、いいなーのような憧れや嫉妬のような、他の人達は好奇心が隠しきれてなさそうに(授業中に何があったのか聞かれる手紙が複数届いてきたし)、親友からは同情のような視線を向けられながら、五時間目をクリアした。
そして、休み時間になったとたん、クラスメートが波のように押し寄せてきた。流石生徒会としか言えない………
皆口々になんで呼ばれたの?とか生徒会の皆様どうだった?とか羨ましいとかエトセトラ………
まあ、取り敢えずの誤解を解いておこうと思います。あとあと面倒だしね。
「えっと、生徒会に呼び出された理由は、昨日たまたま拾ったものが生徒会にとって大事なものだったらしくて、口外しないでくれって頼まれただけだよ」
よし、間違いは言ってない!会長のハンカチは生徒会の重要秘密だしね。
そう言うと、流石に生徒会の秘密に関しては触れちゃいけないと思ったのか、皆退散していきました、ふぅ。五時間目を潰して考えた甲斐があったものだ。
「お疲れ様」
「ありがとー、なんかあそこにいると自分が惨めに思えてきたよ」
「まあ、あれだけハイスペックなら仕方ないんじゃない?今更顔は変えらんないしねー」
ま、私は興味ないけど、と言うのは私の親友の轟真純。勿論、さっきの言葉から分かるようにファンクラブには属していない。しかも顔は綺麗で彼氏持ち。羨ましいことこの上ない。
「まあね、でももう彼らと会う理由も無くなったし気が楽になったけどねー」
「それは甘いんじゃないの?」
「え、なんで?会ったってなんにもならないじゃない、私と生徒会じゃ」
キョトンとする私を見て真純はフフフと笑いながら
「女の勘ってやつよ」
と意地悪く言った。
そのとき女の勘の命中率、特に真純の勘の鋭さに気づかなかった私は、有り得ないってーと笑い飛ばした。
翌日の朝、登校して真純と話していたると、急に教室の後ろ扉の辺りで騒がしくなった。
振り返ってみると………はい、またまた会長様登場です!しかも何か持ってるよ!?怜様は教室を暫く見回し、ある一点で視線を止め、そのままその方に歩いていった。
その方というのは、お察しの通り私のことです。ばっちり目合っちゃいましたよ。現実逃避させてくだされ。じゃないと視線が一点集中なんだよ、辛いんだよ凡人には!!
と考えている間に長いコンパスをお持ちの怜様は私の前までやってきて
「先日の礼だ」
とずいっと袋を渡してきた。数人の人は納得したような顔をしている。
はっ、失念していた!というのも実は、怜様は落し物を拾ってもらったときは必ずこの袋を手渡す。中身がハンドクリームと化粧水(勿論お高いです)なのもいつものこと。
男子用だと変わるのかもしれないけれど、今まで女子ばかりだったので分からない。年に2、3回起こる落し物のお礼渡しはファンクラブの話のネタにもなっていること怜様は知らないだろう。
私も誰かがプレゼントを貰ったという情報を聞くと、その子が羨ましく感じる。遠くから眺める派だとしても、好きな人からのプレゼントは誰だって嬉しいものだ。
ただ、その時も感じていたのだが、やはり………これは………
「会長、このお礼は要らないのでお返しします」
私はおかしいと思うのだ。