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そろそろ新任選挙が始まります。

 金鳳君が生徒会に復帰(強制帰還)して3日程。仕事も落ち着き、というか金鳳君が割増部分をやってくれてるのでいつもどおりに戻ったのだが、1つ気になることがあった。

 副会長の機嫌はイライラの対象かつストレス発散の1つらしい金鳳君が戻ったことにより事無きを得たし、他の役員もいつも通りだろう。ここまで変な所はなんにもない。

 ただ………ただ、最近よく会長とよく目が合う。仕事を終えて顔を上げると、会長の顔が必ずと言っていいほど私の方を見ている。まぁ、すぐに方向転換するので、私が顔を上げるタイミングと会長が周囲を見回してる際に私の方を向くタイミングが合ってるだけ、たまたまと思っていたのだが、1週間毎度同じだと気になる。凄く気になる。しかも、目線が合うやり取りの後、睡蓮君がこちらの方を不思議そうな、可哀想なものを見る目で見てくるのも気になる。何故だ、と考え、ふとそう言えばもうすぐ選挙だわ、と思いつく。


 生徒会役員になるには大きく2つの方法がある。1つは、秋の生徒会役員選挙に立候補し、当選すること。もう一つは、役員に推薦してもらい3ヶ月間仮役員として務めた後、生徒会役員信任選挙で当選すること。今の役員達は私と桃華以外は皆立候補で当選しているため、新任選挙はしばらくぶりらしい。

 新任選挙について良く知らないため怜様に確認したら、

「第一回考査最終日に役員候補が演説をする。それを見て全校生徒が候補者を生徒会役員として相応しいか審査する。そして過半数の賛成者がいた場合、候補者は正式に生徒会役員として認められる」

 とのこと。


「ねぇ、真純。私ってさ、選挙通ると思う?」

 一番まともな答えをくれそうで、かつ私に対する周りの生徒からの好奇心やら嫉妬を知っている真純に訊くと、真純はしばらく考える素振りを見せ、こう言っちゃなんだけどさ、と続けた。

「今唐突にやったら生徒会とか気にしてない人達もいるわけだし半数はいくだろうね。ただ、事前にめんどくさい連中が周りの奴らに優美のないことないこと吹き込んじゃったらアウトかも」

 3月以来嫌がらせ以来余り酷くはなっていないけれど、ファン心としてやはり不信感は消えていない。なかなか私を役員として認めるまでには至っていないと思われるのだ。

「演説の原稿考えてるの?」

「それがなんとも。ありきたりで良いなら考えてるんだけどさ、私の場合風当たり強そうだから、ありきたりじゃダメって皆承認してくれなくて」

 役員というのは、頭の良さや仕事を忠実にやる真面目さもいるが、何より一種のカリスマ性もいる。ちゃんと生徒が役員であると認め、慕ってくれなければ生徒会の存在が危うくなる。簡単に、雑に言うと、顔が良い人やしっかりしてる人の言う事って聞きたいなって思えるけど、顔が普通以下の人やなよなよしている人の言う事ってちょっと疑ってしまうということだ。人は見た目が9割なんていうのも昔聞いたことがあるのも同じことだ。

 そして、そのカリスマ性に欠けてしまう私は何とか演説で稼がなきゃならないとのこと。じゃあどうすればいいのかと聞いても、

「自分を全面に押し出せば良いよ」

 とか

「か弱い雰囲気見せて庇護欲駆らせれば?」

 とか全く参考にならなかった。まぁ、そもそもカリスマ性を持ってる人達に聞いたのが間違いだったんだけど。モブとイケメンやヒロインを比べちゃなんねぇ。あれは次元が違うよ、と何度涙したことか。

「まあそんなこんなで結局原稿未だに進んでなくて」

「でも来週からテストでしょ?」

 大丈夫なの?と真純の心配に私はただ苦笑いで答えるしか出来なかった。




 勉強と並行して家で原稿を考えてみるも、なかなか思うような物が思いつかない。もう遂には落選したっていいや、と投げやりな気持ちになってしまう。




 だってそもそも自分は役員になりたかったわけじゃないんだから。別に落ちたって構わないじゃない。




 まぁ、落選したらしたで陰で散々叩かれるのも見えているが。前にも後ろにも引けない。

「何でこうなっちゃうかなー」

「どうしたの優美」

 突然声がした方を振り向くとそこには俊君がいた。

「お風呂空いたよって言いに来たんだけど。大丈夫?」

「何だかまとまんなくて」

「そう言えば選挙があるんだっけ?」

「そう、でもなんかモヤモヤしてて」

 当選と落選、自分が本当に望むのはどっちなんだろう。そもそも、自分はどっちになっても幸せではないのではなかろうか。

 何と言うか、自分の気持ちは置いてけぼりな感じがして素直に原稿を作れない。

「どうしよう」

「そういやさ、学校でアルに会った?」

「アルちゃん?見てないけどどうしたの?」

 アルちゃんは、私と俊君が保育園の頃近所に住んでいた友達で、まるで人形のような女の子だ。黄緑色のつやつやした髪の毛をツインテールにし、いつも可愛い服を着ていた。しかも顔立ちも整っていて、子供の時は決まってお姫様役はアルちゃんだと決まっていた。小学校に入る前に引っ越してしまったけれど、未だに俊君とは年に数回程取り合っているらしい。私は何故か避けられていて、引っ越して以来会ったことはなかったけれど。また会いたいなぁ。

「いや、アルがお前のこと気にしてたからね。まぁまた学校で会うんじゃない?同じ学校らしいよあいつ」

「えっ!?それはないよ。だって可愛い子入ったって噂ないよ?」

 今年の1年生に関して、イケメンは何人か噂を聞くが、美少女の噂は未だ聞いたことはない。アルちゃん程の超美少女なら1日で噂が広まるだろうし。

「ん、まぁそりゃそうだろうけど。会ったら話しかけたら?」

「そりゃ勿論!当たり前だよ」

「多分あいつは根はいい奴だから力になってくれるだろうし」

 んじゃ風呂入れよ、と俊君は立ち去った。

「アルちゃん薊高校にしたんだ」

 いつか会えるといいなー、という期待は生まれたものの、一番の肝心な原稿案は生まれてこず、少し涙してしまったのは別のお話。

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