今回のイベントは想定範囲外でした。※柘植先輩視点
「いや、まさか翔汰を説得したのが篠宮だなんて」
俺は生徒会室にいる役員達を想像しながら驚きを隠さずに言った。
今は渡辺と資料室で目当ての資料を探している。金鳳が戻るまで何かと忙しかったが、今は休んでたツケ分を必死に払ってるから、残りの俺達はそこまで忙しくない。といっても、通常分の仕事は分配されてるから、いつも通りに戻っただけだが。
「まさかじゃないですよ、必然です!優美ちゃんは天使なのですから、優美ちゃんが金鳳君を改心させたのは当たり前のことだったのです!!」
「………聞いた人間間違えたわ」
というか、相変わらずぶれねーなこいつ。アイドルオタクでもここまでアイドルに熱中してるの一握りだろう。これが演技だったら演技派女優で売れてる奴らでさえ腰抜かすぞ。あぁでも、その前に篠宮が驚愕する方が先か。
キラキラ目を輝かせながら言う渡辺にふと疑問が浮かぶ。
「お前、篠宮に会う前も、なんつーか、篠宮ポジ的なのいたのか?」
「熱中してる子みたいのですか?いなかったですねぇ。天使にはなかなか出逢えないものですから」
先輩もこれぞって思うゲームにはなかなか巡り会えないでしょう?と訊かれ、確かにと頷かざるをえない。今している「サイレンサー・エスケープ」も確かに面白いが、神ゲーとまではいかない。一生のうち何度かしか出逢えないからなぁ、神には。
「まぁ気持ちは分かるが、流石に」
「すみれ先輩には及びませんよ!」
は、今何つって………
「『すみれ先輩』って………青木のことか?」
「それ以外に誰がいると言うんです?」
だってすみれ先輩、柘植先輩が
「このゲームどんなんだろう」
って先輩言ってたやつの情報、こと細かく調べて教えてたんですよね!
そう言われ、俺は言葉を失くす。
一度だけ、しかも誰もいないところであのゲーム気になるなと呟いた、たったそれだけでゲームの情報を青木が1から10まで教えてくれたことがあった。しかも、
「もし何でしたらゲームの攻略法も抑えてるので、気になることがありましたら是非言ってくださいね?」
おい待て、そのゲーム発売して1週間しか経ってないぞ?なんで攻略法知ってんだよ?このゲーム結構複雑で攻略困難って言われてんのに………
取り敢えず自分は攻略法は自分で見つける派だから、と言って断ったが、あれはマジな目だった。攻略法どっから調達したんだ……
「………それは置いといていい。あぁ、そう言えば少し気になったんだが」
青木のことはこの際脇によけとこう。変に突っ込むなと俺のゲームの勘が告げてる。俺のゲームの勘は結構当たったりするのだ、特にゲームオーバーになるほどの危険性の高いものには。
「ゲームで思い出したが、今回のはイベントの1つか?」
「はい、金鳳君ルートイベントです。ですが、」
「ですが?」
気になって先を促すと、渡辺はうーんと唸って
「不思議なことに、このイベント、金鳳君ルートの一番最後のイベントなんですよね」
「時期外れだな」
確かこのゲームの終わりは文化祭だったはずだ。ということはこのイベントが起こるのは本来文化祭。
んでもって
「何で篠宮がお前の代わりやってんだよ」
「それは不思議じゃありません。だって優美ちゃんはあんなに可愛」
「それはわかった」
というか飽きるほど聞いた。飽きるを通り越して何が言いたいのか目で分かるようになったし。篠宮溺愛しすぎだ。
「何で今起こってるんだ?」
「私も謎なんですよね。しかも金鳳君ルートのイベントが以前に起こっていた訳でもないようですし」
どうすべきか、このゲームは何に向かって進んでいるのか、謎は深まるばかりで何も手がかりが見つからない。
暫く俺達は思案していたが、いきなりすっと渡辺が立ち上がった。
「ここで悩んでたってどうしようもありません。取り敢えず次のイベントを終えてから考えましょう」
「次のイベントって?」
そう訊くと、渡辺はきりっと表情を引き締めて言った。
「次のイベントは、優美ちゃんと私の信任選挙です」




