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金鳳君は私の同志でした。

 私は無意識のうちにため息を吐いてしまった。ため息を吐くと幸せが逃げるとか言うけれど、そもそもため息を吐く原因は不幸なことなのだから、ため息は心の中のイライラを外に出す為の有効な手段だと思う。ため息を吐くと励ましの言葉もらえたりもするしね。まぁ、そんなことはどうでもいいのだけど。

「そ、も、そ、も、私が生徒会に入る羽目になった原因、金鳳君も一枚噛んでますよね?なのに「自分やりたくないから」って自分勝手に辞めるなんて許せる訳ないじゃないですか!金鳳君が役員のままで私がヘルプになれば良くないですか?私がわざわざ入る必要性ないですよね!」

 私はずっと、ずっと入りたくないって言っていた。副会長の脅しで折れたようなものだが、何度も「私には無理」って言ってきたはずだ。

 私が生徒会に入ることになったのは人数が足りないからだと思っていた。じゃなきゃ、そもそも私は役員の器に釣り合うような人間じゃない。

 それなのに「俺ヘルプだからもう生徒会来ない」とか言われて、キレない訳が無い。不公平だ。私も生徒会を抜けたいと言ったってバチは当たらないはずだ。

「それに、桃華が入った時点で庶務=ヘルプでは無くなったと思いますよ。金鳳君も選挙出てるし、庶務には庶務のお仕事ありますよね?てことはもう誰も金鳳君がヘルプって思ってる人、役員も含めて誰もいないでしょう。私に伝言頼むほどなんですからその自覚はあるはずですよね。直接言ったら辞めるなんて出来ないだろうって」

 この際生徒会辞めるのに下っ端に言うだけという一番の問題は棚に上げておく。それを除外したとしても、

「金鳳君、生徒会だからとか以前に、私達のことなめてません?」





 思わず説教してしまった。怒りが抑えられなくなるのなんて久しぶりのことで自分でもびっくりしてしまう。

 でも、言いたいことは全部言い切ったし、後悔はしてない。本当にここが空き教室で良かった。廊下の端でやっていたら明日には金鳳君のファンクラブの人達に責められてしまうだろう。ファンクラブに恨みを持たれると面倒なのは3月に経験済だ。私はまだアイアムチキンの称号を返上出来たわけじゃないのだ。

 まあ私が鶏なのはどうでもいいとして、金鳳君は私の話を黙って、真面目な顔で聞いてくれていた。そして暫く考えるような素振りをして、私が反省から戻ってくる頃にやっと口を開いた。

「別に生徒会をなめてた訳じゃないよ。皆が凄いのは僕が一番良く知ってる」

「でも、」

「それに篠宮さんのこともなめてた訳じゃない。ただ、居心地が一番良くて居場所を感じづらいあそこを辞めるには同情してくれそうな篠宮さんに言うのが一番可能性が高かっただけ」

 もし他の役員が来てもある程度篠宮さんがいなしてくれてるだろうって思ったから。

 そう言って彼は苦笑した。

「嫌な気持ちにさせてごめんね」

「いえ………でも居心地が一番よくて居場所を感じづらいって矛盾してませんか?」

「………生徒会は自分を着飾らなくったって素を認めて対等に扱ってくれるから学校で一番居てて楽しいよ。でも、同時に自分に対する劣等感も強まる。僕は生徒会に入れるような器じゃないって。落ちこぼれがいる意味なんて無いって感じちゃうんだよ」


 あぁ、彼も同じこと思ってたんだな。


「金鳳君」

「どしたの?」

「『生徒会辞めたい同盟』作りませんか?」

 えっ、と驚きを隠せない表情の金鳳君を無視し、そのまま続けた。

「生徒会役員に適任な人を見つけてきて代わりにやってもらう。これがこの同盟の活動内容です」

 それで、と私は言葉を続けた。

「もし辛くなったら相談しあいましょう同じ気持ちを持つ者同士、愚痴を言い合ったりしてらスッキリすると思うんです。それに、居場所を感じづらいなんてことにはなりませんから」

 どうですか?と私が尋ねると金鳳君はにやりと笑って言った。

「辞めれそうにないし、お互いいつか辞める日までなら構わないよ」

「そうこなくちゃ、です」




「でもこれで辞めることは出来なくなっちゃったな。もう他に有効な手段なんて思いつかないや」

 金鳳君は近くの机の上に座ってそうぼやいた。

「そもそも、辞めれるだなんて思ってたことが間違いじゃないんですか?副会長がそんなこと許すはずないですよ。絶対居させようと脅してきますよ」

 休部届け出した瞬間に入部届けとか出してきそう…………いやいっそもう出してある入部届けの日付だけ変えるとかあの副会長ならやりかねない。会長も反対しないだろうし。

「………まぁ、副会長だけじゃないだろうけどね」

 ん?副会長だけじゃないってどういうことだろう。

 と疑問に思ったが、取り敢えず話を進めなければならない。

「もういっそのこと「一週間無断欠勤なんて有り得ない、失望した」とか言って退部届け渡されないかな」

「それは無理そうですよ」

 と私は一枚の紙を渡した。それを見た金鳳君の顔がみるみる強ばっていく。

「これ…………」

「これからの金鳳君のシフトだそうです。暫く朝昼夕方全て出勤らしいですね、ご愁傷様です」

「聞いてないよ!?」

「金鳳君が来ないんだから言えませんよ」

 全く会えない金鳳君にもし会えたら、ということで役員は皆この紙を持っている。フル出勤はキツイだろうが、自分にも与えられた仕事があるし、自業自得なため無駄な同情はしない。

「あわゆくば辞めてやろうなんて馬鹿なこと考えずに大人しく社畜になっとくのが身のためです」

「………言うねぇ、篠宮さん」

「金鳳君のせいで仕事増やされて大変でしたから当たり前です!」

「同盟のよしみで」

「頑張ってください」

「やっぱり生徒会辞め」

「れませんから!」

 同情の前に生徒会室にまだある仕事を片付けなければならない。目に見えて落ち込んでいる金鳳君を引き連れ私は生徒会室へ戻った。

 この同盟は長くは続かないだろうな、などと思いながら。

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