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僕は生徒会を辞めようと思う。※金鳳翔汰視点

「えっ………!?」

 何で、と続けようとした篠宮さんを、僕は苦笑いで制止した。

「訳を、聞いても良いですか」

「構わないよ、元々そのつもりで呼び止めたんだし」




 そもそも、自分は生徒会に入るつもりは毛頭なかった。あんなキラキラしたエリート集団に自分が入るなど考えられなかったのだ。だから、先輩に生徒会に入らないかと訊かれた時も僕は拒否した。

 勉強も運動もそこそこ、顔が良かったからモテる方だったけど取り柄と言えばそれだけ。そんな自分が生徒会に入ったって何の役にも立たないと思った。何度も勧誘されたけれど「僕には無理です」と断っていた。

 そんな時、当時の生徒会長に頼まれたのだ。

「それじゃあ、忙しい時のヘルプとして、仮役員ではダメですか?人数的に行事関係で忙しくなる時の人手が欲しいので」

 その時の役員はちょうど5人で、時期的に文化祭を控えているため、生徒会の仕事も増え、忙しくなってしまうが、自分は受験の勉強や模試で来れなくなる日も増えるし、入ったばかりの睡蓮君は高2の3人程仕事は出来ない。

「いくら仮役員とはいえ誰にでも頼める訳じゃありませんからね。頼めそうなのが今のところ貴方しかいらっしゃらないので、お願い出来ないかと思ったのです」

 そう言って会長は僕に頭を下げた。………そうまで言われると断りにくい。そもそも、自分は流されやすいタイプなのだ。頭を下げられてまで断るより、

「………分かりました。ヘルプだけなら」

「ありがとうございます!」

 会長に手をガシッと握られ力強い握手をしながら、それよりは引き受ける方が穏便で良いなぁ、などと考えていたのだった。




「そもそもヘルプだったんですか」

「そう、でも会長文化祭辺りでほぼ引退じゃん?だから結果それ以降も出なきゃならなくて出ずっぱり。それでなんか役員っぽくなってるだけなんだよね」

「そもそも『庶務』っていう係はイコール『ヘルプ』ってことだったんだけどね。ずっと僕が出てるから今では他のと同じ扱いなんだけど、あれは先代の生徒会長が作ったんだよ」

 ほんと、策士だよね、と笑ってしまう。まぁ、ヘルプの案も庶務を作る案も会長以外の誰かの案だろうけど。先代の生徒会長はなんというか………自信が無さすぎたから。

 いつも

「何で私の代は自分しかいないんだろう、他の人がいたら絶対その人に会長の座を譲るのに。なんなら、高2の3人の誰かに譲っても構わないのに」

 って先代の会長が言ってるのを高2の3人の先輩が

「そんなことないですよ、私達には生徒会長なんて務まりません。頑張ってください」

「………お願いします」

「(不憫そうな眼差しをする)」

「酷くないですか!」

 明らかに『めんどいから嫌』というのを顔に張り付けて完全拒否していた。まぁ、その後大抵

「なら睡蓮さんや金鳳さんでも」

「1年なんで無理ですよ」

「僕ヘルプだから」

「………皆さん冷たくないですか?」

「そんな訳ないじゃないですか」

「冷たくなんてないです」

「(無視)」

「頑張ってください」

「無理なものは無理なので」

 だってめんどいんだもん、と言いながらしらっと仕事に戻る。そして会長は暫く凹んで仕事に戻るのが日常の光景だった。

「まぁそれは置いといて、自分はヘルプだった訳だよ。だから、篠宮さんも渡辺さんも入った今、僕は別にいなくても良いって思うんだよね」

「そうですか………」

「と言うことで、悪いけど怜先輩に『ヘルプに戻ります』って説明してくれないかな?」

「分かりました…………」

 やはりか、寂しそうに肩を震わせていて、自分でも気付かず感動してしまった。まぁ、ここは去らなきゃ、と一歩踏み出したところでぐいっとウデを掴まれた。

 後ろを振り返ると、俯いたまま体を震わせていた篠宮さんがいきなり睨みつけてきた。

「金鳳君、ところで私は金鳳君みたいに(・・・・・・・)、そんなのに流される程馬鹿じゃないですよ」

 その言葉に思わず目を見開き、そして肩を落としてしまった。

「やっぱり篠宮さんを騙すのは無理だったかな」

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