金鳳君は無断欠勤中です。
………ここのところ、金鳳君が生徒会に来ていない。
私と桃華と柘植先輩とで話し合いをした日以降、数日は来ていたものの突然、金鳳君がパタリと生徒会に来なくなった。
今まで用事などで休む事例は何度もあったけど、ここまで長く休んでる事例は初めてだった。
「金鳳君、最近見てませんね」
一緒に仕事している睡蓮君に話を振ると、
「これであいつ1週間連続無断欠勤だ」
とあきれた表情をして言った。
「あれ、休む理由とか連絡してなかったんですか?」
「それが、怜先輩には「もしかしたら暫く生徒会お休みするかもしれません」って言ってたらしいけど、休む理由もいつまで休むかもしれないのかも言わなかったらしい」
「あぁ、そうなんですね。一応私も桃華と何度か4組覗いてみましたが、毎度居なくて」
4組の子に聞くと毎回「翔汰様はランチに行かれました」とか「金鳳君帰っちゃってるみたい」と言われ、毎度会えてない。
「俺も先輩達もちょくちょく行ってんだけど何でか居ないんだよな。まるで俺らを避けてるみたい」
避けてるみたいというか、絶対避けてるだろう。ここまで毎度教室で会えないのもおかしい。これがたまたまのすれ違いだったら、相当忙しいだろう。でもそれならまず学校来ないだろうし。
「前にも似たようなことがあったんですか?」
「いや、まぁあいつおちゃらけて見えるけど根は真面目なんだよ。一応生徒会入ってるくらいだし。休むにしてもちゃんと理由報告してたよ。」
うーん、学校に来てはいるから何かに巻き込まれたとかじゃないんだろうけど。
「だから副会長の機嫌も悪いんですね」
同じくここのところ副会長のオーラが黒くなっている。1人休むとその分他の人の仕事が増えるし、桃華は入りたてのため、詳しく庶務の仕事を理解出来ているわけではない。テスト期間は部活動がほぼ禁止されており、かつ6月にある体育祭だったり修学旅行だったりの仕事も入ってくるため、今結構忙しいのだ。そろそろ朝シフトも始まるだろう。つまり、今時期の金鳳君の連続欠席は我々への負担が大きい。
「あー………今副会長に近付かない方がいいよ」
「ん?どうしてですか?」
「副会長今ブラックホールだから」
「……ブラックホール?」
仕事がキリが良かったので手を止めて右を向くと、睡蓮君はげんなりした顔をして手元の仕事を指差した。
「副会長に「翔汰来ませんね」って話しかけたら「本当だねぇ、ところでちょうど良かった。これもお願いしますね」って言われてこの大量の仕事渡された」
「………ご愁傷様です」
やっぱり魔王様恐い。
そんなある日。私が職員室に資料を届けた帰りで
「あれ………………金鳳君?」
「久しぶり、篠宮さん」
「今まで生徒会に来れなかったのは、というか私達避けてましたよね!どうしたんですか!」
「ごめんね、その……ちょっと時間いい?」
金鳳君は私の質問を無視し、伺うような様子に、前までの金鳳君とどこか違った雰囲気を感じた。悲しそうな、けれど決意が篭ったような瞳に押され、私は息を呑んだ。
近くの空き教室に入って、金鳳君はこう切り出した。
「僕さ」
「生徒会辞めようと思う」




