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薊高校を訪れました。

 それから1年後、母と薊野さんは結婚し、私に新しいお父さんが出来た。

 母と父(薊野さん)の父母、つまり私の祖父母達はほとんど反対しなかった。皆いい加減年だから一生独身よりは、桃華だって賛成してるしとのこと。自分達の老後問題にも関わってくるためでもあるだろう。

 結婚後も特に大きなことは無か………あ、いやあったらしい(・・・)。母も父も同じ職場なので、結婚したのはすぐ知れ渡ったらしく、暫く父はやっかみを言われたようだ。父本人は「覚悟してたから別に気にしてないよ」と言っていたが、母が悲しそうな演技をするとすぐにやっかみが無くなったと聞いた。ちなみに悲しそうな演技をしろと言ったのは私だ。母が父へのやっかみを「自分のせいだわ」と悲しんでいたのは事実なため、さりげなくそれを周囲に示したら減るだろうと考えたからだ。まさか無くなるとは思ってなかったが。母の影響は恐ろしい程絶大のようだ。

 ちなみに名字は母の姓である「渡辺」を使っている。本来なら父の姓である「薊野」を名乗るべきなのだが、父が

「僕は「渡辺家」に入るんだから、「渡辺家」が「薊野家」になる必要なんてないよ」

 と言って半ば強引に自分の姓を「渡辺」にしてしまった。私からしたらその方が楽なのだが、父には申し訳ないかな、と思ってしまう。まあ、父も母も合意しているのだから自分が首を突っ込むわけにもいかない。教科書やら友達に知らせる手間やらが省けて良かったと思うことにしよう。

 まあそれ以外は特に取り上げるようなことは何もなく、一般的な家庭を築いていた。




 そして、私が中3になった頃、志望校をどれにしようか悩んでいたところ、父が、自分の弟の経営している高校はどうかと提案された。

 父の弟、つまり私にとっての叔父である薊野司さんは、私立薊高校の創始者かつ現理事長だ。私立薊高校は創立15年と出来たのは最近で歴史も浅いが、高度な授業と充実した設備環境を目当てに毎年多くの生徒が受験する難関校。そりゃ、私も通えるなら通いたい。でも、

「薊高校はここから新幹線で2時間かかるよ?」

 いや、その新幹線に乗る駅までここから電車で1時間かかるため、合計3時間か。片道3時間はきつい。

「実は高校のある辺りの部署に転勤することになってね、そっちに引っ越すからどうせなら薊高校に進学もありかな、と思って」

「え、転勤?お母さんも?」

「勿論。たまたまそっちの方に2人移ることになって、なら自分達が行こうか、って里香さんと話したんだよ」

 地元の高校と桃華の学力は全然釣り合ってないだろう?と言われ、担任の先生同じことをに何回か言われたことを思い出す。

「渡辺さんならもっと上の高校に行けるわ」

 と提示されたなかの隅の方に薊高校も入っていた。

 友達がいる地元でも構わなくはないけど、将来のことを考えると上の高校に行った方が可能性が広がる。薊高校なら頑張って勉強すれば入れるだろう。

「オープンスクールにも行ってみて考えてみるよ」

 と言いはしたものの、内心薊高校に入学した自分を想像してわくわくしていた。




 9月末、母とオープンスクールに参加しようと薊高校へ向かった。

「桃華、薊高校S判定なのよね。余裕で入れるじゃない」

「余裕じゃないけど、これから勉強怠らなかったらいけるね」

 お父さんに薦められてから必死で勉強したから、よっぽどのことがない限り薊高校に入れるくらいの学力は付いていた。ここで気を抜くとすぐC判定になるだろうけどね。

 そして色々話している内に念願の場所に着いた。

 パンフレットで見たけれど、実物は良い意味で全然違った。

 まだ真新しい校舎はそれでも難関校の威厳も感じられ、そしてとにかく広く大きかった。敷地面積は地元の高校と比べ物にならないくらい広く、中高一貫校と同じくらいの規模である。

 ここに桜が咲いてたらとても綺麗だろうなぁと思っていると、

「ん?」

 ふと何か引っかかりを感じた。まるで自分はこの校舎を前にも見たことがあるように感じてしまった。パンフレットで見たとかではなく、それ以外のどこかで。でもそのどこかが思い出せない。まるで魚の小骨が喉に引っかかったように、違和感を感じてしまう。

 とにかく早く会場に行こうと大きい方の体育館に向かおうと足を踏み出すと、遠くの方に数人の男子生徒達がいた。薊高校の制服を着ており、皆モデル並に見目麗しい人達だ。周りの入学希望者達やその保護者達もきゃーきゃー騒いでいる。

 あれは確か、生徒会役員の………あれ、なんで私彼らが生徒会役員なんて分かったの………?パンフレットにはそんなこと載ってなかった。

 何かがおかしい。まるで自分が自分じゃないみたいな。あれ、自分ってどんなだっけ。

 取り敢えず落ち着こう。落ち着いて考えたら何か分かるかもしれない。

 そう思い目を強く瞑った瞬間、体から全ての力が抜ける。同時にどこかの部屋のTV画面に目の前にいるはずのイケメン達が映っている情景が浮かぶ。あぁ、あれは

「桃華!?」

 あれは前世の(・・・・)の部屋だ。

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