会長のハンカチの柄は〇〇でした。
ことの始まりは1年生の2月のこと。マフラーと手袋をして、冬ってなんであんなに眠くなるんだろうなー、と思いながら、少し寝坊した分、歩調を速めて登校していた。
そして、学校にはあと5分くらいで着きそうかな、というところでハンカチが落ちているのを見つけた。まあ、多分少し前にいた男子生徒のだろうなあ、あの人歩くの早いから、早めに声かけないと落し物って大概持ち主のところに返んないんだよねー、とハンカチや男子生徒にあまり意識がいかないまま、「あの!」と声をかけてしまった。
そして振り返ったのは………なんと生徒会長様でした!自分ホントに馬鹿だと思う。ファンクラブに入ってんだからいくらなんでも気づくでしょ、自分!
でもまあ、会長振り返っちゃったし、こっちの方に歩いてくるし、何?という目線が来てるので、会長が来たところで、ばっとハンカチを差し出し、
「あの、こ、これ落としましたよ」
と報告する。
早く取ってー、解放してー。怜様のことなんか直視無理だし、前にいるだけで心臓バクバクいってるよー、なんか告白してる気分。懐かしー、何年前?夫に会う前だから、あれは………と現実逃避してるときに、やっとハンカチの柄に目がいった。
………これ、機関車トー○スだよね、喋る青い機関車だよね、れ、怜様の持ち物のはずがないよねー。うわー、私馬鹿だ、今日朝だけで自分の馬鹿さ加減に嫌になるなんてなー。きっと近くの小学校の小学生が落としたんだろなー。取り敢えず手下げて何でもないって言おう、と思ってると差し出した手からハンカチが消えた。
分かりやすいようにもう一度言おう、機関車トー○スの、ハンカチが、怜様の方に、消えていった。そして、それはカバンの中に仕舞われた………
ってうそぉっ!ありえぬ!怜様のハンカチトー○スとか信じられんし!
頭を10秒抱えた私はそして驚きのあまり1歩下がりながら怜様を見上げた。所謂ドン引きですね!それに気分を害されたのでしょう(初めて会った奴に引かれるって私もやられたら傷つくしね)、怜様の視線は吹雪のようですが、恥ずかしいのか顔赤いです。レア顔だ。写真撮りてー!
でも、可愛いと思っているのが通じたのかは分からないけど、視線のブリザード度が増し、赤らみがとれました。
………これは、言わずもがな怖いっす、視線で殺されそうっす。
逃げたい、よし、逃げよう!と自分に甘い私は
「このことは誰にも、決して誰にも言いませんから!私の中でも無かったことにしておきますから!それじゃ!」
となぜか最後敬礼して、自己保身のために必死に教室へと向かった。
怜様のレア顔見れたのは嬉しいけど、これは望んでないぞ!印象悪かったらやだな、これでもファンの端くれだから。今度見るときは私のことは忘れてくれてたらなー、と思いながら。
このことは親友である真純にさえ言わなかった(真純は頼りになる私の大親友様である)。いや、言ったって誰も信じないだろうし、約束(一方的にだけど)もしたしね。そして、その日1日怜様に会わなかったので、大丈夫だろう、きっと怜様も何もなかったことにしてくれたのだな!と軽く考えていた。
しかーし、これが甘くないんだなー。
次の日「1年3組の篠宮優美さん、至急生徒会室まで来てください。」という放送がかかってしまった。
勿論私は箸持ったままフリーズ。
「優美、あんたなんかしたの?」
「いや、あの、その、と、とりあえず行ってくるね!」
親友の言葉にはっと気づき、なんとか回復したあと、親友に手を振りダッシュで教室を飛び出した。
まあ、情けなくもそのすぐ後
「弁当持ってきてねー」
という放送で戻らざるを得なくなったのだが。
追記、御指摘頂いたので、訂正しました!
小学校→小学生
C組→3組