買い出し当番に任命されました。
私のファンクラブ(私本人は不本意だけど!)が出来て数日。
桃華と一緒に生徒会に行くと、いつもは仕事に追われているのに、本日は何故か席に座って話をしていた。
「こんにちはー」
「あ、やっと来た!」
「遅いよ2人ともー。早く席に座って」
睡蓮君と金鳳君に促されるままに席に着く。よく見ると皆机の上に紙を出してる。これは………今日返されたテストの紙?
「さて、買い出し当番を決めようと思いまーす」
副会長のその言葉に、そういえば、と生徒会に入ったばかりの頃を思い出す。
それは、生徒会に入って一週間後の水曜日の昼休み。私と会長と柘植先輩で仕事をしていた時のこと。ふいに会長が私の方を見て問いかけた。
「篠宮。買い出し当番について誰かから話を聞いたか?」
「買い出し当番、ですか?」
買い出し当番とはなんぞや?
「生徒会室には常時紅茶とコーヒーと緑茶、お茶請けがあるだろう?」
「そういえば………」
柘植先輩に言われてキッチンを見ると、職員室にある、いやそれを越すくらいの量のそれらがあった。
「あれは買い出し当番が買ってくるんだ」
「して、その買い出し当番とは?」
「この学園には定期的に実力考査がある。その結果を元にして、目標値に届かなかった者、順位が生徒会の中で一番低かった者から2人買い出し当番が選ばれる」
「例えば俺の目標値は900点中800点を取ること。怜の場合だったら900点中850点取ること、っていう風にそれぞれで目標値が設定されてるんだ」
なるほど。つまり買い出し当番っていうのはテストで悪い点取った時の罰ゲームってことだ。
「それで、今までの篠宮のテスト結果から考えると、お前の目標値は600点中500点ということになった」
「承知しました。それならまだ勉強頑張ればいけそうで…………いやちょっと待ってください。」
そういえば、と不安になる私に2人の先輩は首を傾げる。
生徒会にすぐ入った睡蓮君や金鳳君は絶対頭が良いに違いない。副会長も、あんな魔王様が成績が会長や柘植先輩に劣っている訳が無い。つまり、
「今までの私の成績から考えたら、私以外の誰か2人が目標値に届かない限り、私絶対買い出し当番になるんじゃ?」
「………た、多分大丈夫じゃないのか?」
おかしい!柘植先輩どもってるし、会長なんかあからさまに目逸らしてるし、予想的中じゃないか!
「私皆さんと違って凡人なんですよ!?」
「篠宮」
「………はい?」
「諦めたらそこで終わりだぞ」
会長の言葉に私も柘植先輩も押し黙る。確かに深く響くような言葉ですが………今ここで使うのは止めた方が良かったと思います、会長。
あの時の予想が的中してるとなると、まあ私が行くのは決定事項だなあ。別に皆良い人だから、苦手な人がいるわけではないけど、何にしてもキラキラし過ぎている彼らや桃華と買い物というのは、どうしても目立ってしまうのは避けられない。特に、私みたいな地味子が隣だとやばいんだろうなあ。
「今回のテスト結果で目標値を取れなかった者はいなかった。そのため順位が一番低かった………篠宮、悪いが当番行ってくれるか?」
「承知しました」
前の話を覚えていたのか、気まずそうにする会長に返事を返す。うん、もう良いけどね、どうせ誰かが買いに行くんだし、受けてやろうじゃないかペナルティ!
「さて、もう一人の当番だが………」
「はい!私当番やりたいです!」
と会長が言うのを遮って桃華が元気良く手を挙げる。
うん、言うと思ったよ。手がなんかわきわきしてるように見えるのは………いつも通りの放置プレイで。
でもなあ。桃華と2人はキツい。何されるか分からないところが特にキツい。いい子なんだけども、いい子なんだけども、この子変人だからキツい。
「………進んでしてくれるのはありがたいが、それじゃ当番の意味が無くなる。じゃんけんをしよう」
私の視線を悟ってか、桃華の暴走を止めるためかは分からないが、なんとか会長が足止めしてくれたようだ。セーフセーフ。
そして、じゃんけんの結果は。
「負けた、折角のデートだったのに」
としょげる桃華の隣で私は固まっていた。いや、桃華も嫌だったよ?嫌だったけど……………会長と買い物も精神にくるものあるよね………………。




