私は只今迷走中です。
はあ。この気持ちどう言ったらいいんだろう。
頭の中がぐるぐるしてて、信じられないというか、半ば呆然としてしまう。
渡辺さんの本当かどうか分からない目的を聞いた後、立ち往生しててはだめだ、と取り敢えず生徒会室に行った。無事役目は果たしましたぜぇ、副会長。
そして渡辺さんは生徒会長から学校説明を受けてそのまま帰っていった。
役員の間では彼女に好感が持てたようで、彼女を生徒会に入れる?なんて話も出ていた。流石ヒロイン、攻略対象ウケがよろしい。
その間も混乱が続いてた私は、話をふられても曖昧に笑って、そうですね、などと言うしか出来ず、ひたすら彼女の行動に疑問符を浮かべていた。
家でベッドの上でそのことについてうなっていると、携帯電話が鳴り始めた。相手はというと、
「柘植先輩?」
実は生徒会に入った時に緊急の連絡があるかもしれないから、と役員全員と連絡先交換をしたのだが、利用した試しはまだ一回もなかった。
何だろう?、とは言っても思い当たる節は一つしかないけど。
「もしもし。篠宮ですが」
『柘植だ。今大丈夫か?』
「構いませんよ。渡辺さん………ヒロインについてでしょう?」
「ああ。放課後お前の様子がおかしかったからな。何かあったのかと思って」
「何かあったというか、あったのはあったんですけど………」
と取り敢えず生徒会室に行くまでのあらましをざっと話してみた。それで、彼女のことを信じても良いのか迷ってるんです、と。
「ふーん。そうか」
「そうかって!なんか軽くないですか!?」
他人事ですか!いやそうだけども!
「なら、確かめてみるか」
「確かめる………ですか?」
「いつでもいいからあいつを昼休みに2号館2階の小会議室に呼べ。やっぱ話して確かめるのが一番だろ?」
「そりゃ、確かにそうですが………」
先輩が万が一彼女に魅了でもされたら、話し合いも関係なくなってしまう。
「魅了はされない。これは断言できる」
「世の中絶対はないんですよ?」
「安心しろ。俺は恋愛に興味はないし、今は最近発売されたRPG「サイレンサー・エスケープ」にしか愛を注いでない」
そういえは、さっきからピコピコ音がすると思ったら、先輩ゲームしながら電話って…………まあ先輩らしいけど。
「分かりました。明日にでも話してみます」
「了解。んじゃ、また明日ってことで。」
「はい。おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
先輩があそこまで言い切る程だし、取り敢えず先輩を信じて話をしてもらおう。
翌日、朝一番で渡辺さんに抱きつかれた私は、柘植先輩がいつかの昼休みに会議室に来てくれと言ってた、と伝えた。
「柘植先輩って、生徒会の役員の人?私はいつでも構わないけど………」
「あ、ちょっと連絡してみるね!」
メールで今日大丈夫ですか?と連絡すると、約十分後、『了解、場所はお前が案内してやれ』と返信がきた。
「先輩今日でもOKだって。場所は私が案内するから」
「分かった!」
表情を見るからに、嬉しそう、という訳でもなかったけど、呼び出される理由を聞かなかったあたり、予想はしていたみたいだ。昼休みでちゃんと解決するのだろうか………?
放課後、生徒会室に入って早々、仕事の書類とともに柘植先輩に例の会議室に引っ張りこまれた。
昼休みは案内はしたものの、私自身は話を聞く前に強制送還されて、昼休み以降も渡辺さんに昼休みどうだったのか訊いても、別段何にもなかった、と言われるだけで、結構もやもやしてたのだ。
「で、先輩。昼どうだったんですか!?」
彼女の目的は?どんな感じでしたか?と矢継ぎ早に質問する私をまあまあと鎮めて、取り敢えず席に座った。
「話し合いはした。俺の感想だと」
「感想だと?」
とそれまで平然とした顔だった先輩は急に顔をゆがめた。
「あいつ、変人だ」




