ヒロインと友達になりました。
翌日、学校に行くと早速ヒロインこと渡辺さんと山中さんが話しているのが見えた。なんだか少し興奮してるようで、二人で「だよね、だよね!」と言っていた。何に興奮しているのかはさっぱり検討もつかない。
鞄を机に置き、しばらく渡辺さんと山中さんの話が終わるのを授業の準備をしたりしながら待っていたが、なかなか終わりが見えない。
話しかけていいのかな?ダメかな?人に話しかけるのあんまり得意じゃないんだけど………まあ仕事だし、副会長に怒られるのも嫌だしなあ。
仕方なしに「あの、渡辺さん」と興奮冷めやらぬ2人に話しかけると、彼女はビクリと肩を震わせて振り向いた。顔が若干赤いのは先程の興奮していた何かしらのせいなのだろう。こういうのを庇護欲駆り立てられるっていうんだろうな、としみじみ思っていると、彼女の方は何かを言いかけて、止めて、を繰り返している。口がパクパク開いたりとじたりして、目線を左に、右に逸らしたりと忙しない。山中さんはそんな彼女を応援している風に拳を胸元で強く握っている。
なんだろ、それこそ生徒会はなんちゃらとかだろうか。彼女が転生者で攻略ばっちり狙ってます!という可能性も捨てきれないしね。
「あ、あの」
「えと、何でしょうか?」
悪口じゃないといいな、可愛い子に文句言われるのって一般人に言われるよりキツいよね。
「その、あの、私と友達になってもらえましぇんか!?」
文句言われた後の対処法を考えていた私は彼女がかんだのを指摘できないほど固まった。え、今友達になってほしいって言われた?ヒロインが?モブに?友達なろって?
「えと、その、よろしく?」
と右手を差し出す。
断る理由ないし。もしかしたら生徒会と近づきたいから私と友達になりたいのかな、とも思ったけども、今それを気にする必要はない。それより任務遂行が優先だ。
「えとね、生徒会長が今週中のいつかに生徒会室に来てくれませんか?って」
「え!生徒会長さんが!?」
渡辺さんの声が大きかったからか、周りの皆も呆気に取られている。それでもほとんどの人達が、彼女が転校生だから呼ばれたと納得したのかすぐにおしゃべりに戻った。
「話の内容は?」
「また行ってから説明するって」
「じゃあ今日行くね。でも場所分かんないから案内してもらってもいい?」
「別に構わないよ」
それにしてもこうまで喜んでるということは………確実に彼女転生者だ。しかも生徒会の誰かを攻略する気満々だ。
「じゃあ今日の放課後ねー」
と苦笑いして遠ざかる。これから色々気を付けないとならないようだ。ストレスがぁー、うぅ。
放課後、渡辺さんと2人で生地会室に向かった。
ちなみに、昼休みも渡辺さんと山中さんに一緒に食べていいか訊かれたので、OKして4人で一緒に食べた。
渡辺さんは恐れている程悪い子ではなさそうで、こうやって普通に話してても印象としては可愛いいい子だ。でもこれはあくまで今の印象。彼女の本心は分からない。
「ねえ、渡辺さん」
「どしたの?」
………なら、率直に訊くのが一番良いのではないだろうか。
「貴女は『ヒロイン』としてこの学園に来たの?」




