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会長とハンカチと私  作者: 蒼指輝
特別編 王子とハンカチと私
143/151

王子と王女と騎士は雑談中です。

「というわけで、隠すのも無駄だし、時間もないからさっさと話してくれる?」


 目をキラリと瞬かせてシュンはショーエルを見る。肩を震わせていたショーエルは、肩を震わせるのを止めて、顔を上げため息を吐いた。


「やっぱりさっきのローゼ様のはまずかったですよねー」

 ショーエルは苦笑いして、肩をすくめた。


「まああれが無くてもシュン殿下にはバレてたみたいですけど」

「まあね。警戒心が強いもんで」

「流石この国の王子様だ」

「宰相の操り人形みたいにはなりたくないからね」

「確かにそれは私もゴメンですねー」


 ニコニコしながら毒を吐く彼らにユミリアは思わず顔をひきつらせた。今彼らが不敬罪で訴えられても弁護することは無理だろうなと思う。

 まあ、シュンがここまで毒舌を吐くということは、この部屋は誰にも見られていないだろうということは推測できる。密偵がいても、シュンの息がかかった者だろう。


「それで?宰相にはどこまで話してあるの?」

「レイモンド様とユミリア様が密会していること、接触はレイモンド様からであることだけです。それ以上は確証が得られなかったので話しておりません」

「本当に?」

「信じていただく他ありません。ハルバートからの話か噂程度でしか情報は得られませんでしたから」

「まあ、そうか」


 ふむ、と考え込んだシュンに対し、ユミリアはショーエルに体を向け訊いた。


「ということは、宰相様の中ではハルバートさんの印象はあまりよろしくないのですか?」

「いえ、こちらからフォローは入れましたし、宰相とハルバートで話す機会があったのなら大丈夫だと思います。ハルバートの監視なんてしていますが、ハルバートのことは割と気に入っているんです」

「なら、よかった」


 ホッと胸をなでおろしたユミリアを奇怪そうな目で見たショーエルは、この際だと思い、疑問に思っていたことを投げかけた。


「ユミリア殿下は、ハルバートのことを気に入っていらっしゃるようですが、ハルバートが宰相側の人間なのは分かっていらっしゃるはずなのになぜ?」

「なぜ、と聞かれても、自分によくしてくださる方がいたら信頼するのは当然ではなくて?」

「ですが、ハルバートが殿下によくしていても、立場としては監視員です。警戒なり変に報告されないようにするとか…」


「ユミリアに立場云々言ったって意味ないよ」

 言い募るショーエルを止めたのはさっきまで考え込んでいたシュンだった。


「ユミリアは昔から誰に対しても対等以上の関係にしかならないから、誰かを従えるとかそういうのが苦手なんだよ」


 王女としてはありえないでしょ、と少し不満そうな声で言うシュンに、ユミリアは珍しくムッとして返した。


「だって、仕方ないじゃないですか。リーダーシップとか、そういうのないんですもの、それに王女なんて肩書きだけですわ」

「開き直らないの。まあ、だから立場とかそういうの気にしない奴だから。それに、ユミリアは、とんでもないお人よしだから。ローゼにもそうだけど、城の隅に追いやられて大分経つのにずっと守ってニコニコしてるんだから。自分だったら耐えきれないよ」

「あら、シュン様でしたらきっとのし上がっていかれたはずですわ。私にはそんな力はないですから、楽しむ以外になかっただけです」

「流石に国王命令でのし上がるのは無理。英雄とかじゃないし、ユミリアとは違って、僕は元々頭の回転が速いとかじゃないから。僕がユミリアと同じ境遇だったら、今のユミリアほど頭は回んないよ」

「私も本で得た知識が多いですから、元々頭が回るわけじゃありませんわ。それより、脱線した話を戻しましょう」


 このままだとまた時間を食ってしまうことは予想できたのでユミリアは話を引き戻した。それに同調して、シュンも頷く。


「そうだね、と言っても僕が訊きたいことは終わったよ」

「私ももうありません。先ほどはぶしつけな質問をしてしまい、申し訳ありませんでした、ユミリア様」

「いえ、特に気にしておりませんから。それでは、私からシュン様にお話があるのですが、よろしいでしょうか」


 シュンとショーエルから何もないと聞いて、ユミリアは自分の話をすることにした。

 その場の状況を読んで、ショーエルが立ち上がる。


「それでは私はお邪魔でしょうからこれで」

「ああ、いえ別にショーエルさんがいてくださって構いません。特にバレても問題ないことですから」


 というか、立ちっぱなしも大変だと思うので座ってください、と促され、疑問符を頭に浮かべながらショーエルは促されるままに座った。

 ユミリアはショーエルの分のお茶を注ぎ、着席し直した時には、今までにない雰囲気をしていた。


 それにつられ、思わずショーエルは背筋を伸ばし姿勢を改めた。

 シュンの方は口角を上げ、目は好奇心に満ちていた。


「ユミリアからの話って?」

「はい。先日レイモンド様から直々にロランジュへ来ないかと誘われました」

「え?」


 調べた情報では、レイモンドとユミリアは接触しないようにしていると聞いていたため、ショーエルは思わず驚きの声を上げた。それに構わずシュンは話を促す。


「それで返事は?」

「もちろん、丁重にお断りいたしました」

「承諾すればよかったのに」

「そんな冗談を言わないでくださいませ」


 ユミリアが軽口を叩くシュンをにらむと、シュンははいはい、と手を上げ降参のポーズをした。


「ユミリアはレイモンドとは会わないようにしていたんじゃなかったっけ」

「密偵のように来られては私も拒絶できませんでした」


 予想できなかった私の問題なのですが、とユミリアはため息を吐いた。どう来たのかは分からないが、皇太子が密偵のような行動をするのはだれも予想できなかっただろう。


「まあ、あの皇太子様がそんな振る舞いするとは誰も予想できないよ。それで、話はそれだけ?」

「いえ、もう一つ。宰相様だけにはお話ししてあるのですが、シュン殿下にもお伝えすべきだと思いまして」

「内容は?」

「近いうちに城を出ようかと思っております」


 ユミリアのこの発言にはシュンも予想できなかったのか、大きく目を見開くと、息を飲んだのをユミリアは感じた。

 隣のショーエルも似たような感じで、宰相は約束を守ったようだとユミリアは安心する。


 ハルバートを退室させ、ユミリアと宰相の2人だけで話していた時、ユミリアは最後にここだけの話、と前置きをしたうえで宰相に話していた。


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