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会長とハンカチと私  作者: 蒼指輝
特別編 王子とハンカチと私
132/151

王女に妹弟が訪ねてまいりました。

2018.02.18

タイトルが兄妹になっていたので、妹弟に変更しました。すみません汗


 そしてしばらく時が経ち、皇太子がやってくる日取りが城中に知れ渡ったが、もちろんユミリア達までは情報が伝わっていなかった。


 その日取りが伝えられた次の日、ユミリアの元へ赴いたのは意外な人物だった。

 それはユミリアが自室で手持ち無沙汰にハンカチに刺繍をしていたときだった。


「失礼しますわ」

「いけません、王女様といえどいらっしゃる際には事前に通達を…」

「まあ!私に指図なさるなんてどこまで世間知らずなのかしら!所詮は落ちこぼれたメイドね」


「モモ?一体何事?」

 言い争う声に扉へ向かうと、モモとローゼ・アル・フィオーラ王女が扉を挟んで言い合っていた。


「あら、ローゼ様。ご機嫌麗しゅう」


 ユミリアがローゼに王の時と同じようにしなやかな礼をしたが、ローゼはきい、っと怒って見せた。


「ローゼと呼ぶなと言っているでしょう!私はその名前が大っ嫌いなんだから!」

「すみません。取り敢えず立ち話もなんですから部屋へお入りください」


 ローゼは自分自身が女であることをあまりよろしく思ってなく、作法もファッションも女性としてのセンスは素晴らしく王や王妃の前ではきちんとするものの、親の前以外では男になりたいとよく言っていた。

 本人は美少女なのだが、それは確実に地雷なのでユミリアも言ったことは一度もない。基本スルーが相手も自分も傷つかないと思っているのですぐ部屋へ招き入れた。


「あー、もうほんと何で私は男じゃないのかしら。男だったら次男だし楽に過ごせたのに女で贅沢するには他国に嫁ぐしかないじゃない!」

 紅茶を注いでもらっている間ローゼはずっとそう言っていた。


「それで、今回はどのようなご用事で?」

「あぁ、貴女に釘を刺しに来たのよ。皇太子様が1週間後には来られるから絶対お父様から言われたところ以外には行かないでよ。大事な玉の輿相手なんだから」

「はい、もちろん承知しております。私が今城で居られるのは国王様のおかげですから」

「分かっているならいいのよ。くれぐれも皇太子様に近づこうだなんて考えないことね。まあ、貴女なんか相手にされないでしょうけど」


 ふふん、と鼻で笑うと、紅茶も飲まずに立ち上がった。


「それじゃあよろしくね」

 そのままローゼはご機嫌な様子で立ち去って行った。


「もう!ほんとあの方嫌いです!なんなんですか、仮にも姉に向かってあの態度!」

「モモ、そんなピリピリすることじゃないわよ。それに、ローゼ王女は悪い娘じゃないもの。そりゃあ、切り捨てた元主だから嫌かもしれないけど…」

「別に私のことはどうでもいいんです!ほんと、ユミリア様の爪の垢を煎じて飲ませたいわ!」


 ぶーっとモモは膨れているが、ユミリアはローゼをとても優しい子だと感じていた。

 釘を刺さなくたって今までのユミリアからそんなことしないとは分かっているはず。


 けれど、来たのは皇太子が来るのは1週間後、それまでは外に出てもそこまで叱責されないから大丈夫だと遠回しに伝えたかったのだろう。

 あの子は自分とユミリアが好意的に接しているとあまりよくないと感じ取っているのか、けんか腰だったり見下す姿勢を取るけど、本心ではそう思ってはないだろう。

 それを言うたびモモに「だからユミリア様はお人好しがすぎるんです!」と言われるけど、あながち間違ってないと思う。


「ただいま戻りましたー」

「あら、2人ともお帰りなさい。ありがとうね、重かったでしょう?」


 そのままモモと話をしていると、シフォールとハルバートが本を何冊も抱えて帰ってきた。2人で10冊以上は持っているだろう。


「いえ、これから迂闊に外に出れませんから、一気に持ってくるしかなかったので仕方ありません。ハルバート様のおかげで何とかなりました」

「女性1人で10冊はしんどいですからね…あれ、誰か来られていたんですか?」

「ローゼ王女がちょうど来ていて」


「ローゼ殿下が?それはまた偶然というか…」

「どういうこと?」


 顔を見合わせて不思議そうにするシフォールとハルバートにモモが率直に聞くと、ハルバートがユミリアに「言いにくいのですが…」とつぶやいた。


「どうしたのですか、ハルバートさん」

「その、帰る途中でユミリア様にお会いしたいとおっしゃる方に会いまして、自分も少し用事があるから終わったら早急に向かう、と」

「それは誰から?」


「実は、シュン殿下から…」

「そ、僕が言ったんだよ」


 その場にいない声がして視線を外すと扉にほど近い壁にもたれかかるようにしてシュン・サザ・フィオーラ殿下が立っていた。


「いやあ、別にあいつが来るとは思ってなかったし、示し合わせたわけじゃないんだけどね。一応血のつながった弟として皇太子が1週間後に来るって教えに来ただけだよ」

「ごきげんよう、シュン様。わざわざありがとうございます」


 立ち上がって礼をすると、シュンは別に構わないよ、と手をひらひらさせて言った。

「不自由な思いさせちゃってるからね。これくらいは言っとかないと準備もできないだろうし」


 でも、ローゼと入れ違いかあ、茶化すのは戻ったらかなと意地悪そうに笑うシュン殿下に、2人は本当に仲が良いのだなあとユミリアは嬉しくなる。

 たとえそこに自分は入れなくても兄妹は仲良くあってほしいと、やっぱりそう思うのだ。


「それじゃあ、この皇太子とローゼがうまくいったらお前ももう少し自由になるだろうから、それまで悪いけどよろしくな」

「はい、取り敢えず自室でおとなしくしておきますね」


 ユミリアの肯定に頷き返すと、そのままシュンは引き返して行った。


 そして1週間経ち、皇太子が王国に到着した。


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