次期生徒会長が決まりました。
「文化祭終わってから言おうかなと思ってたんだけど、今言ったほうがいいよね」
何を?と問う間もなく、金鳳君がニコッと笑って衝撃の言葉を言った。
「篠宮さんがそっちで大変そうな間話したんだけど、篠宮さんに次期生徒会長をお願いできないかなって」
「え……」
いや、聞いてないよ!そんなこと一言も聞いてないよ!?
「あれ、てっきり次期会長は睡蓮君かと…」
「いやあ、俺は暴れちゃったのもあるし、上に立つよりは支える方が性に合ってるよ」
「いやいや、私こそ上に立つのなんてそんな…それに金鳳君や桃華だって…」
「俺も業務回すのとか無理だし」
「私もそうなんだけど、それは皆同じでしょうし優美ちゃんも交えて話そうかとも言ってたんだ」
「言ってたならどうして私が…?」
困惑した表情で同級生を見回すと、皆照れくさそうに笑って睡蓮君がその、とつぶやいた。
「その時に、3人は自分達の中で誰になってほしいのか気になって一応聞いたんだよ。それで、俺は篠宮さんを推したんだ。合宿の時に俺の高校までを伝えても受け入れてくれたし、文化祭前も変わった俺に対して向き合ってくれた。椿先輩も卒業されてしまうから、そしたらもし万が一もう一人の俺が出ても篠宮さんなら戻してくれるだろうと思ったから」
「俺も、叱って引き留めてくれたのは篠宮さんだし、篠宮さんいなかったら生徒会辞めてただろうなあって考えたら篠宮さんがいいって言って」
「結局能力的には慣れもあるでしょうし皆一緒だから、皆が推す人の方がいいんだろうなって、満場一致で優美ちゃんを推したいってなったので、ぜひ優美ちゃんにお願いしたいなって話してたの。別に責任を押し付けてとかじゃなくて、私達の上には優美ちゃんが立ってほしいなっていう理由なだけなんだけど」
睡蓮君から金鳳君、桃華と言われ、経緯は納得した。
ただ、本当に会長なんてやれる気がしてなかった。
生徒会長ということは生徒会という組織のトップということだけではなく学校の一番上になる。そんな位置に怜様を恐れなかったなんて中途半端な理由で入った自分が立ってもいいものなのだろうか?
「でも、私が立候補しても落とされるんじゃあ…」
「問題ないですよ、劇での篠宮さんを見た生徒なら反対する人はいないでしょう」
手前の3人ではなく、3人の後ろにいた副会長から声をかけられた。
3年生の顔を伺うと、先輩方も3人ともいつも通りの表情をしていた。
「選挙はもうすぐですし、今回の騒動の噂もまだ残っているでしょうから当選すると思いますよ」
「その代が推すんだから俺らは反対する理由なんてないしな」
「自信を持ってやったらいい、卒業するまでは前会長としてサポートする」
怜様に頭を撫でられ、皆から信頼の眼差しを向けられたら、断るなんてできないじゃないか…
「精一杯、頑張りますね」
大変なこともあるだろうけど、信頼にはちゃんと返す人でありたいし、皆が支えてくれるなら大丈夫だと思えたから。
「それじゃあ、ひと段落終わったところで、まわりに行くか」
「あと30分しかないから急いで行かなきゃ!」
結局短い時間しかなかったため廊下からチラッと見るだけで閉会式の準備に行くことになったけれど、現生徒会の最後の楽しい時間を過ごせた。