恋愛ラッシュは突然きます。
あの後帰ってきた他のメンバーと話し、13時からみんな時間が空いていたので閉会式の準備もあり1時間ほどではあるが一緒に回れることになった。
他の2年生がこそこそ何か話していて気になったけど、きっと私に関係することなら言ってくれるはずだと思ってそのまま帰ったんだけど。
お風呂の後部屋で髪を乾かしていると扉をノックされた。
「どうぞー」
「優美、明日の事なんだがちょっといいか?」
「明日…」
明日、と思い返してふと餃子が頭に浮かんだ。
「あー!!!」
そういえば俊君とアルちゃんに会う約束してたんだった…
「もしかして今思い出しちゃった感じ?」
「うん…何時だっけ」
「俺は朝から行けるんだけどアルの都合的に12時過ぎくらいになるよ」
「12時過ぎかあ…」
生徒会メンバーとの待ち合わせは13時だし大丈夫そうかなあ。
「13時から生徒会の子達と回ることになってるからそれまでならだけど一緒に回れるよ」
「了解、13時までには会えると思うよ」
「良かった」
「もう1回確認してなくて悪かったな」
「ううん、多分私が色々悩んでたからそっとしといてくれて、でしょう。行けるから大丈夫」
「そう言ってもらえると助かる。じゃあまた明日」
「うん」
生徒会で回れるのもアルちゃんと会えるのも楽しみだなあ。
次の日、展示の裏方を手伝いに教室へ行くと真純が心配そうな顔で近づいてきた。
「昨日大丈夫だった?」
「ああ、うん。なんとか無事治まったよ」
真純にはメールで他言無用と添えて事情を説明していたので大体何が起こったかは知らせてある。さすがに私と怜様が付き合うことは言ってないけど。
「志穂は?」
「あ、うん。今は自宅療養中ってことにしてる。私も会ってないから詳しいことは分かんないけど今月中には登校できると思うよ」
こゆりちゃん達と違って一応志穂は加害者ではなく被害者扱いになってるからいつでも登校はできる。
後は本人の意思次第だけど、きっと立ち直ってくれると信じているし、彼女の傍には芹那先輩がいるから先輩が支えてくれているだろう。
「それよりも桃華の様子の方が気になって…」
「それよりも、って片付けていい案件じゃないけど、確かに珍しく寄ってこないわね」
昨日のこそこそも気になったのだが、今日私が教室に着いた時点で桃華は教室にいたのに、いつもならすぐさま駆け寄ってくるのに今日は別のクラスメートと話していた。クラスメートと話すことくらい普通なんだけど、いつもなら他の子と話してても寄ってくるくらいなのに今日は全くそれがない。
やっぱり昨日何か気に障ることしたのかな…
もやもやした気持ちを抱えたまま、クラスの子の指示に言われるがまま従って、交代の時間になったので11時で抜けさせてもらった。
「これから俊君と会う約束してるんだけど来る?」
「あー、一応顔だけ見とくか。顔だけ見たら彼氏と会う約束してるからそっち行くわ」
「あ、それでね」
報告するなら彼氏というワードが出た今しかない。
でも、友達に彼氏ができた報告ってとても恥ずかしい。揶揄われたりすることは真純に限ってあり得ないけど、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
「あ、その」
「もしかして彼氏でもできた?」
「な、なんで分かって…」
「相手はどうせ会長サマでしょ?」
「そ、そこまでどどどどどうして……」
エスパー真純様恐るべし…
というか何で分かったんだろう…
『怜様と付き合うことになりました』って顔にかいてるわけじゃあるまいし…
「いや、顔でなんとなく分かったよ」
「そんな分かりやすかった…?」
「何年あんたと一緒にいると思ってんのよ」
この先真純に隠し事は絶対できないし、昨日までのことメールで言わなくても絶対分かっていそうな…
てか察してるって言ってたわ。まあ言わなかったら怒ってたのは目に見えてるけど。
「おめでとう、あんま他の人には言わない方がいいかもね」
「ありがとう…そうする…」
そのまま教室を出て俊君と待ち合わせをしている中庭の池の方に向かうと、俊君となぜか桃華がいる。
「あれ、桃華?なんで」
「あ、優美ちゃ、あの、その…」
何故か慌てた様子で私、真純、俊君の顔を順に見ていたが2周した辺りで俊君が止めた。
「俺から言うよ。実は、桃華さんと付き合うことになった」
「へー、付きあ…付き合う!?」
やっぱり、みたいな表情の真純と違って私は動揺が隠しきれなかった。
「俊君と、桃華が、付き合ってる…」
「うん、優美ちゃん黙っててごめんね」
「ちなみに、いつから…?」
「8月末。連絡先聞いて2回ほど会ってから俺が告白したんだ」
「ふぇ、そ、そっか」
ヒロインである桃華が攻略対象(生徒会役員)達じゃなくてまさか俊君とくっつくとは…
「おめでと、2人とも」
「あ、うん!おめでとうね!」
「ありがとう」
ニコニコ笑いあう2人に、好きあって恋人になったんだなと分かって、乙女ゲームなんて関係なく2人が幸せならそれでいいか、と思った。
「恋愛ラッシュね」
「恋愛ラッシュって?」
キョトンとする桃華と俊君に対し、私は顔が真っ赤になる。
それに気づいた桃華が詰め寄ってきた。
「まさか、優美ちゃん!?会長と!?ついに!?」
「声が大きい!」
「そっかあ!よかった、よかったよおめでとう…あとで会長に色々言っておこ」
「最後の一言すごく気になるんだけど色々って!色々ってなに!?」
「優美ちゃんを選んでくれてうれしい気持ちと優美ちゃんを選んでしまって悔しい気持ちと半々で」
「それ喜んでんのか喜んでないのか分かんないよ!」
「もしかして桃華が優美を避けてたのってそれで?」
真純の質問にハッとなり、照れながらそうなのと桃華は言った。
「隠してたことがバレて嫌われたら私立ち直れないから…」
「まったく、そんなことで嫌いになるわけないじゃない」
そのまま頭をぽんぽんすると桃華は勢いよく抱きついてきた。
「優美ちゃーん!!好きー!!」
「彼氏の前ですることじゃない!」