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悪魔より恐ろしいモノが降臨しました。※柘植先輩視点

遅れましてすみません汗今回件の方を止められずいつもより長くなっております。

「…分かった。彼女がそれで良いと言うんだったら、その言う通りにしてくれたら構わないよ。先生方や保護者の方々には私から説明しておくから」

 俺たちの目の前にいた校長は真剣に考えこんだ後、そう言った。


 今は応接室にいて、校長と俺、悠也が対面になって座っている形だ。

 校長にはさっきまでの風紀委員会の部屋の中の音声を聞いてもらい、ちょうど篠宮が出て行ったところで判断を仰いでいた。


 先生はまだとりなしやすいだろうが、保護者に関しては説明が難しいだろうに自分から言うと言った校長には本当に頭が上がらない。

 頭上の後退がおさまることを心の底から願ってますから、校長。


「これからどこに?」

「もちろん風紀委員会のところに向かいます。彼女達に状況を説明しに行かなければなりませんから」

「別に後からでもいいんじゃないか、なんては言いはしないが、あまり強く当たるなよ」

「当たり前です。度は弁えてますから」

 そう言って笑顔は見せるものの、一切目は笑っていない。


 いつもの様子から2年達には他人に厳しい奴だと思われてるだろうが、悠也は心を許した奴にはめっぽう甘いほうだ。

 身内と他人で応対はそれほどの変化はないけど、10を頼まれたら他人には10で渡し、身内には20で渡すような男だ。篠宮のは結構長かったから恨みはそこそこ募っているはず。それが100どころか1000や10000で返すのだろうあの子が無理矢理絡まされていたからには相当ご立腹なはずだ。


 ノックを四回して入ると、2人は静かに居住まいを正し、2人は顔を真っ赤にした後真っ青にした。4人とも主犯と言われているけど、冷静になっている方が真の主犯なんだろうな。


「ずっと待っていただいてすみません。私の話が終わったら帰っていただいて結構ですから」

 向かい側に設置された席に座り、悠也は笑顔を崩さないまま言った。

 俺は万が一座っていたら咄嗟の対応ができないので悠也の斜め後ろに立った。

 前の4人は居住まいを正してからは黙ったままだ。


「まず、皆さんには明日から2週間の自宅謹慎をしていただきます。反省文を書く用紙はもうお渡ししていると思いますので、自宅謹慎中に書いてきてください」


 分かりました、の声を受け悠也は手元にある紙を見る。

 俺は知らずのうちに額に汗が浮かんでいたので、慌ててぬぐった。


「それから自宅謹慎中、自宅謹慎が明けた後も生徒会役員やファンクラブ幹部、山中姉妹への接触は禁止です。ファンクラブも脱退していただく形になりますので悪しからず。ファンクラブの脱退に関してはファンクラブの方で行うそうなので、貴女方は何もしていただかなくても結構ですよ」


 よかったですね、なんて添えて言っているけど、目が全然笑ってない。

 いつも生徒会で見せる2年が言う『鬼副会長モード』がただの人間くらいには見える。この場にいる役員が俺だけで心底よかった。


 慣れている俺でさえ冷や汗かいているんだから向けられる側は結構キテるだろう。

 現に俺たちが入った時に百面相を見せた2人は肩が震えている。冷静に聞いている真の主犯2人はどんな気持ちで今その表情が出来ているのか理解に苦しむ。


「一応ここで一旦区切りますが、何かご質問は?」

「いえ、ありません。続けてください」

 冷静な方の1人、篠宮に「こゆりちゃん」と言われていた方の子が答える。

 声もはっきりしていて、一瞬青木を思い出す。

 …もうここにいたくない。帰ってゲームやりたい。


「ありがとうございます。他の皆さんもいいようなので続けます」

 ニコニコを崩さず続けようとしているけど、実は俺が処遇について話し合ったうえで聞いたのはここまでだった。他に聞いてないんだがどういう…


「とまあ、生徒会の総意としてはここまでです。いくら篠宮さんがドが付くほどのお人よしでも被害者と生徒会長の意見がそうである限り他は守ります」

 篠宮、これは後で色々言われるな、頑張れよ。


「ですが、それとは別に薊高校にはいじめや非行を起こしたが退学にならなかったイエローカードの持ち主には、監視の意味も含めて毎度『生徒会直属庶務係』についていただくことになっております」

「えっ、あの、生徒会の庶務って金鳳様と渡辺さんなんじゃ…」


 一番端の百面相の一方の子から質問がきた。俺もてっきり庶務は生徒会役員がなるものだと思ってたんだが。


「確かに翔汰と渡辺さんには『庶務』の役職になっていただいてますが、元々彼が生徒会に入るころ『生徒会直属庶務係』がおらず、翔汰はいつ抜けるか分からない状態でしたから、特例として『生徒会直属庶務係』を『生徒会の庶務という役職』に引き上げて翔汰につかせたのだ、と先代のバ会長が仰ってましたよ。翔汰本人もこのことは知らないんですけどね」


 あの会長そんなことやってたのかよ

 …まあ確かにいないなら引き上げてもいいだろうけど、もし翔汰がいるときに庶務につきそうな生徒出たらどうするつもりだったんだよ…

 って今か……


「そろそろ生徒会の新任選挙も始まりますから、庶務の役職は何かに理由をつけて無くしてしまっても問題ありませんから。まだ今年は一年生から生徒会になれそうな人材を発掘できていないので、正直人手が欲しいところなんですよね」

「…拒否権は」

「あるとお思いですか?」


 そう言いながら立ち上がりスタスタと拒否権について言った例の「こゆりちゃん」の真横まで歩いて行った。慌てて悠也の後ろにつく。


「いじめの犯人を校内に野放しにすることを承知すると思ったんですか?」

「仕事内容は…」

「基本的な雑務です。生徒会で作成した書類を多方面に届けたり、書類をコピーしてもらったり。生徒会の扉の横にポストがあるのであれでやり取りします。期間は貴女達が卒業するまで。生徒会の活動がある限り、合宿以外は毎日仕事はあると思ってください。長期休みも生徒会の活動はありますので全員そろって出席お願いしますね。あまりに休みが多い場合は強制的に呼び出しますので。あぁ、そうそう。役員に自分達が『生徒会直属庶務係』をやっていることがバレた場合には、反省文書いていただきます。」


「バレただけで!?それはいくらなんでも…」

 さっきまで冷静だった彼女の顔から一気に焦りが生まれる。

 いや正直そんな理不尽な、と思わないでもないけど、反論はできない。


「気を付けていただければどうとにでもなります。あなた方の監督は代々の風紀委員長と生徒会の方では歴代の指名制になります。私の次は恐らく渡辺さんにやっていただくことになるでしょうね。彼女篠宮さんに惚れ込んでいるところありますからね。あぁ、今の代の風紀委員長も篠宮さんのファンクラブに入っていて、渡辺さんのとこの会長でしたね。頑張ってくださいね」


 それ励ましじゃなくて死刑宣告言い渡してるじゃないか。

 4人とも涙目だし俺だって汗は止まったけど今度は背筋が凍ってるよ…帰りたい。


「退学にならなかっただけ温情だと思ってくださいよ?自分達だけで篠宮さんをいじめたならともかく別の人に濡れ衣を着せてやっていたんですから。いじめの理由も聞いていましたが実にくだらなすぎてもう忘れちゃいました。もし山中さんがいじめに加担しなかった場合全く関係のない彼女の姉をいじめるつもりだったんでしょう?そんな方達を野放しにすることなんてできませんし、こうしておく方が監視はしやすいですしね?」


 顔は笑っているのに後ろがものすごくどす黒いオーラを感じる。

 4人とも泣くの通り越して顔真っ青にして震えてるんだけど。


「貴女方が今までやってきたことに比べたらこんなこと大したことないですよね?せっかく篠宮さんのゆるい温情で停学におさまっているんですからこれくらいやっていただかなくては、ね?」


 笑顔でそういってるが、ねなんて可愛さのかけらもない。

 止めるべきかと俺がモタモタしてると、前触れもなく目の前の子のあごを右手ですくい自分の方に顔を向かせて真顔になった。

『俺らなめてんじゃねえぞ?今まで散々好き勝手やってきた分、償いぐらいしてから去れよクズ共』


 失神して倒れる彼女をそのままにして笑顔に戻り、

「それでは、諸々よろしくお願いしますね」

 と言って扉へ向かった。

 フォローしようかと思ったが、まあ、俺自身も内心いじめに関してはムカついてはいたのでそのまま出て行った。

 後は彼女達自身で頑張ってほしい。4人もいるんだからどうにかなるだろ、トラウマで生徒会には近づけなくなるだろうし、悠也が例の『庶務係』の監督になるなら問題なさそうだ。


「ただ、やりすぎだろあれは」

「調教のためには必要なことですよ?それに『彼女』に危害を加えようなんて思っている時点で私に敵意を向けているとしか思えませんから。むしろ褒めてほしいくらいです、大分大分色々言いたいことを我慢したんですよ?まあ褒められて嬉しいと感じるのは『彼女』くらいですが」

「重いな、愛が」


 彼女達のいじめに関して同情なんて一切感じてないものの、こいつが重い重い片思いを寄せている『彼女』を巻き込もうとしてしまったことに関しては少しだけドンマイ、と感じた。


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