モブな私だけど頑張ります。
今日の朝は虹色の手紙&椅子には付け髭だった。
手紙………もう色のバリエーション無くなったのね………。
付け髭………これは悪戯じゃなくてプレゼントに近いね………。
さて、今日の昼休みは………ファンクラブ緊急集会である。
全ファンクラブメンバー召集により、いつも使う大会議室ではなく、第一体育館。第一体育館を使うのは前ファンクラブ会長が退任された時以来だ。
ファンクラブ会長がファンクラブ毎に学年別で並ばせる。ちなみに私も並んでいる。怜様ファンクラブは辞めてませんから!今でも怜様萌えですから!
………ねえ、視線がビシバシとんでくるんですが、しかも嫉妬に近いものばかり。勘弁してほしいんですが。居た堪れなさすぎて泣きそうです、いや心の中では号泣してますが。うえーん。
もう嫌、とため息をついた時、前方からパンパンと音がした。視線を向けると五人のファンクラブ会長さん達がこちらを見て並んでいた。怜様ファンクラブ会長さんは拡声器を手に持っている。
「さて、今日皆さんにお集まりいただいたのは、最近ファンクラブの風紀を乱す方の存在があまりにも目に付くものだったからですわ。」
その瞬間、視線が一気にこちらにとんでくる。そりゃ、皆の予想は私ぐらいだろうな。今の言い方からすると、やはり私には生徒会は相応しくないと思われているのだろうか、それともこのままファンクラブにいると私が厄介の種になるだろうと思っているのか。
「ですので、その方はお帰りいただきたいのですわ。………まあ自覚があるのでしたら、そもそもこの場にはいないでしょうが。ねえ、皆様。その方に分からせてさしあげましょう?」
その言葉にファンクラブメンバーは一斉に体ごとこちらを向ける。まるで事前に練習してたみたいに。様々な表情をしているが、少なくともこちらに好意的なものはない。
そして、ある生徒がこちらに帰れと叫ぶとそれをきっかけに一斉に帰れやあんたなんか生徒会に相応しくないのよという罵声が響く。
その声に先程まで抑えていた涙が出そうになる。もうすぐにでもここから逃げ出すかこの場にうずくまりたい。
どうしてとは言わない。自分が釣り合っていないことなど百も承知だ。けれど、もうその声を、その目をこちらに向けるのは止めて………
「あら、皆さん何していらっしゃってるの?私は篠宮さんとは一言も言っていないのに。」
ユリア様の凛とした声が響く。拡声器は通してないそのままの声。それが大音量になっていたファン達の声をかき消す。
「ですがユリア様。この女は身の程も弁えず生徒会の皆様に媚を売って堂々と生徒会に居座っているのです。この女こそ、我らがファンクラブには相応しくない、ユリア様の仰る方では?」
そこに反論した生徒の声に他の人達も賛同するように頷いたり罵声を再び始める。
「このファンクラブに相応しくないのは貴方達の方じゃなくって?篠宮さんは生徒会役員として頑張って下さってますわ。それに対して貴方達はそれを媚びを売るなどという下品な言葉で言われるのですね。果たして、どちらがファンクラブに相応しくないのでしょうね。」
それに、と副会長のファンクラブ会長、瀬島菊乃先輩が続ける。
「このファンクラブの存在意義は生徒会役員に近づくために役員の方々や他の生徒達に迷惑をかける生徒を諌めること。篠宮さんは迷惑は誰にもかけていないけれど貴方達はどうなの?そんな醜い姿を晒して恥ずかしくないわけ?それともそんなに役員の方々が信頼する篠宮さんは劣っていると言うの?役員の方々の見る目はないとでも言いたいんだ?」
………菊乃先輩、なんか副会長と同じようなオーラ漂ってません?気のせいですかね?
ユリア様と菊乃先輩の言葉により多くの生徒が気まずそうな顔をする。私への殺気立った視線はもう止んでいた。
「さて、改めて申し上げますわ。我らがファンクラブの風紀を乱す方はどうぞお帰りください」
ユリア様の言葉にファン達は動かない。まあ、今動いたら即刻ファンクラブ退会になるだろうし、色々恐ろしいのは目に見えてる。
ファン達が動かないのにユリア様達は皆不敵な笑みを浮かべた。
「ではこの場にはきちんとファンクラブに属する方々だけしかいませんね?それを聞いてホッとしましたわ。それでは、今回お集まりいただいた要件はそれでしたので、もう解散ということにしましょう。皆様、ごきげんよう」
しばらく動けなかったファン達颯爽と去って行くファンクラブ会長達を見て平静を取り戻したのか、私に何か言ったり視線を向けたりせず、そそくさと教室に戻っていった。
私はユリア様達に呼ばれているため指定場所の第二保健室に向かう。
第二保健室は第一保健室より狭目で、主に部活動や体育の授業で怪我した時の応急処置のために使われる。それでも人六人が入るには十分なスペースがある。
中にはユリア様達五人が勢ぞろいしていた。
前は気圧されてどうやって弁解しようか必死だったが、今はオーラはガンガン感じるけど、そこに安心感がある。
「さて、篠宮さんには辛い思いをさせてしまったわね。あなたを矢面に立たせたことを恨んだって仕方ないわ」
「いえ、むしろ感謝こそすれ恨みなど………」
「でも、辛かったでしょう?」
ユリア様の言葉に思わず頷きそうになる。顔が強ばる。
今まであんな経験をしたことがなく、初めて向けられる憎悪の視線にただ縮こまって耐えているしか出来なかった。正直逃げずに立ち向かうほどの勇気があったと言えば嘘になる。
「今は慣れていない分どうしようもないかもしれない。でも、これから生徒会役員としてやっていくつもりなら、ああいうのには慣れておかなければならないわ。それでも、あなたは役員を続けていくと断言出来るの?」
ユリア様の冷たい言葉に涙が滲む。
自分は弱い。また同じように厳しい視線を向けられたら、逃げ出したくなるだろう。正直、どうして自分がこんなに嫉妬されなければならないのか、体育館で叫びたかった。そのくらいに自分は弱いと分かっている。今後自分がどんな目に合うのかなんて分からない。こんな弱い自分で立ち向かえるのかなんてもっと分からない。でも、それでも、
「一度決めた道ですから。後悔しないようにやっていくだけです」
今後のことは今後決めればいい。今自分に役員を続ける意思があるのだから、一番優先すべきはそれだ。今はそれでいいと思う。
ユリア様達は最初厳しい顔をしていたが、私の決心を聞くと顔を緩め、今は休みなさいと言ってくれた。
「先生には言っておくわ。十分休んでから教室に戻りなさいね」
ではごきげんよう、とユリア様達は去っていった。
先輩達が去っていった保健室で一人パンと頬を手の平で叩き、よしと頷く。
今抱いた決意は今後折れそうになった自分の支えとなるだろう。この決意を忘れないようにしなきゃ!
篠宮優美、モブだけど頑張ります!




