会長と2人でお話ししましょう。
結局そのまま2人で座って写真を撮り、終わったと思ったらほぼ変わらない距離で怜様と2人の写真を撮って一旦怜様とは別れた。
「お姫様抱っこでお互い見て笑って」
ってユリア様に言われた時は本当に
「いやそんなことしたら私の顔面女の子達が切り取れなくて嘆くのでー!!」
とか言いそうになってしまった。言わなかった私頑張った。
大分昔に比べたら近い距離で話すのも普通にできているけど、近い距離はさすがに緊張してしまうのは許してほしい。生徒会役員とはいえまだ怜様のファンクラブは抜けてない。
怜様の1ファンには変わらないのだから。
そしてそのまま残りのメンバーで2人ずつをどんどん撮っていき、最後に集合写真で前列でいた4人で撮り、そしてファンクラブ会長達とも撮った。
小林先輩は最後の方に顔を出し、桃華も含めたファンクラブ会長全体と私、桃華とそれぞれ撮ってすぐにまた行ってしまった。
なんとか撮り終え、残ったファンたちの拍手に包まれながら退場も有無を言わさず横抱き、別名お姫様抱っこで会場を後にした。
「約束、忘れるなよ」
「は、はひ!」
私を控室に連れてきて、それだけ耳元で忠告して怜様は理事長室を後にした。
「ん?怜先輩なんて?」
「いや、その、あはは…」
桃華に聞かれてはぐらかしたけど、実は撮影で集合写真から2人の写真に写るときに小声で
「後で話があるから終わったら生徒会室へ」
とお願いされていたのだ。
今日は一応生徒会役員はクラスの方には顔を出さないことになっているから構わないんだけど、絶対分かってて耳元で言ってると思う。あれか、写真の時に顔が赤かったのがまずかっただろうか。
着替えている最中もずっとドギマギしていたおかげか桃華からは執拗に突っ込まれた。総スルーしたけど。あーあー、着替えが忙しいな!
化粧も落とし髪も惜しいけど通常のひとつくくりに戻し制服に着替え終わると、恨めしそうな桃華と別れ生徒会室に向かった。
道中何故呼ばれたのかを足を進めながら考える。
まず1番に浮かぶのはこゆりちゃん達のところ。直接にしろ間接にしろ必ず会うことにはなる。2番目は志穂。そこまでは範囲内。
ただ耳元で言われた理由がわからない。からかうのが得意な怜様ではないから桃華にはついて来られないようにだと思うけど何故?
そうこう考えていると生徒会室についた。道中すれ違う生徒のほとんどに凝視されていたなんて知らずに私はノックして生徒会室に入った。
中に入ると制服に着替えた怜様1人だった。
「あれ、他の方は…」
「悠也と大輔は校長に事情を説明に行っている。遥斗と翔汰は明日の閉会式の段取りの調整に向かった」
「あ、そうなんですね」
扉を閉め怜様の方へ向かう。
ほぼ毎日顔を合わせてはいるけれど、2人きりで話すのはあの合宿以来…そう思い出してついでに出てきたその時の思い出に赤面してしまう。
いや、あれは怜様のために忘れた方がいいもので…と同時に心がチクりと痛んだ。あの時は確かにそう言ったけど、自分の気持ちに気付いた今にとってはむしろ真逆。でもそんな都合の良いことなんて許されるはずないし、私が許しはしない。
会長の席のそばにいる怜様の元まで行くと、入った時から感じていた違和感が気のせいでないことを感じた。
会長は私が入ってきた時からずっと苦しそうな表情をしていたから。
「あの、どうかされましたか」
これは疑問形ではなく確信を持って聞く。
すると、怜様はふらっと腕を上げ、私の頭の上で迷ったように一時停止した後、ぽんと頭に手を置いた。
「これから、例の彼女達の元へ行って事情を聞きに行く。そして、生徒会の長として、生徒の代表として、彼女たちに確定ではないけど、ほぼ決定している処罰を告げに行く。本当は、先生方の仕事なのだが、処罰を決めたのは生徒会と風紀委員会が中心だから、自分たちが行くのが筋な気がしているんだ」
いつも簡潔にはっきり物事を仰る怜様が、今はたどたどしく言葉をつないでいる。
言葉を大事に、けど言うのをためらっている怜様は、生徒会長としてではなく1人の生徒に見えた。
「先生方と予め話したことにのっとると、彼女たちは、退学になる可能性が、一番高い。後から事情を聞いた校長先生が理事長とどうするかを決めるだろうけど、8割方退学になる。この、学校にいたとして、篠宮や他の生徒に危害を加える可能性がある以上は、在籍させてやれない」
「退学…」
この学校を退学というのは今後相当なものが彼女達にかかるんだとわかる。でも、一歩間違えば死ぬ可能性があったことでもある。
「会長…」
頭に置かれた左手を両手でつかんで胸元に引き寄せた。いろいろ考えて取り敢えず出た答えを言う。
「会長、あの権限の有効期間はまだ、でしたよね、今使ってもいいですか?」
「あの権限って、大分前の…」
「はい、生徒会長権限ってやつです」
使うのは今しかないと思った。