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念は去り際に強く込めるのがポイントです。

ステージ下の会場は球技大会の時以上の賑わいで、入場に気付いてファンの皆さんが全員こちらをガン見しているのは授業中先生に退室の許可をもらいに行くときの見られているのよりも恥ずかしい。


私のところは怜様と桃華の間の真ん中の方と聞いていて、聞いたときは自分のところにはあんまり人が来ないから内心端の方でいいのにと思ったけど、舞台の道具で使っていた椅子にそのまま座らされて前を見ると、他の方々と変わらないくらい人が並んでいた。

他の役員と違うところと言えば、異性だけでなく同性の女子生徒も半分ほどいるところだろうか。


って冷静に分析しているけど内心では驚きすぎて思わず背筋をピンと伸ばして膝に握りこぶしを作ってしまっている。

聞いているファンクラブ会員の数より多いし、怖くて前向けないから何度も芹那先輩の方を向いてしまっている。向くたびに先輩がにこにこしてくれるのでそれで椅子にいると言ってもおかしくないくらいには緊張していた。


これなら写真会断って保健室にいた方が良かったかな、いやこんなにいるから余計にいかなくて良かった、注目されているときほど下手なことはしない方がいいというのは前世今世含めた人生経験で体に染みついている。


「それでは撮影会開始しまーす」

アナウンスがあり撮影会が始まった。


システムとしては、並んでいる順で何人で写ろうが構わないけど、撮影は1グループにつき2回のみ最大3分、並び直しも構わないけれど1人につき1役員3回までになっている。そしてポーズや構図はカメラマンに伝えOKが出たものに限る。

そしてカメラマンは役員の指名制、まあ歴代ファンクラブ会長がカメラマンをすることになっているため撮影会もカメラマンももめたことはない。


1人目は気弱そうな女の子と逆に勝気そうな女の子の2人組だった。芹那先輩に伝えすぐにこちらに向かってくる。


立ち上がろうとしたところで慌てて座り直す。

実はアナウンス前に芹那先輩にこっそり言われていたことがあった。


「あの、上からの指示ということしか言えないんですが、優美ちゃんには基本ずっと座りっぱなしでお願いします。もし撮影で立たなければならなくなった場合は言うので」


上からという伏せているのは少し気になるけど、足がバレないよう配慮してくれた?

確かに、湿布のおかげで痛みは大分マシになってきたけど、逆に近くに来ると湿布の存在がバレてしまうからということかな。


でも、座ったままなのもどうなんだろう。

他の役員の元にも舞台で使用した椅子ではないものの椅子は用意されている。でもそれはあくまで待機中休むためだし基本は立っての撮影だからなあ。座ってて大丈夫なのかどうか…


と気が付くともう2人ともこちらに来ていて、慌ててお辞儀をする。


「今日は来てくださりありがとうございました!」

「こ、こちらこそありがとうございますっ!!」


お礼を言うとすぐに返事が返ってきたけど、大分涙ぐんでるような?

そう思って顔を上げると気弱そうな子は本当に目を潤ませていた。


「あぁ、気にしないでください。劇の終わり辺りからずっと涙ぐんでるんですこの子。あと、劇とっても良かったです!」

「か、感動しちゃって…王女様凛々しくて本当にいるのかと思ってしまいました…」


勝気そうな子が説明してくれてようやく落ち着いた。

あぁ、「何で彼の隣に貴女が」系の文句に劇の間怯えてたから一瞬そうかと思ってしまった。


「ありがとうございます、そう言っていただけるととてもうれしいです」

「こちらこそ素晴らしいものをありがとうございます。それで写真なんですが、両脇に私達座らせてもらってもいいですか?」

「あぁ、分かりました、いいですよ」


なるほど、女の子だったら座れるからね、割とこの椅子一人用だけどゆったりしているので女の子だったら3人頑張れば座れるほどの横幅はある。


女の子2人を両脇なんて両手に花状態だ。普通に精神年齢を考えるとうれしい。


「じゃあ1枚目は優雅に微笑んでもらってー」

そのまま優雅に座っている感じで、次は真ん中によって笑顔でピースで1枚ずつだ。


「「ありがとうございました!」」

「こちらこそありがとうございました」


そして次のお客さんは、とみると1年生の男子生徒だった。す、すごいポーズが気になる…座れるっていっても頑張ったらで、あくまで一人用椅子だけど…


彼も即OKもらったようでもうこちらに来ていた。

「劇、とっても綺麗でした!ありがとうございます!」

「こちらこそありがとうございます」

「その、今日でファンになってのでこの後ファンクラブに入会させて頂こうかと思います、これからも応援しています!」

「ふ、ファンクラブに、あ、ありがとう」


劇のことは褒めてくれるのはとてもうれしいけどファンクラブの会員これ以上増えるのは大分居たたまれないから、無理して入らなくてもいいんだよ、むしろ入らなくても…

なんて流石に言えず苦笑いでごまかした。


写真は、と聞こうとすると、そのまま彼は椅子の横に立った。

これ私も立ったほうがいいかなとカメラを向くと、特に合図はされてない。


「優美ちゃんは座っててくださーい、さっきみたいに優雅にー、はいチーズ!」


よく分からなかったけど精一杯の優雅スマイルでいたけどこれでいいのかな?


「OKでーす、じゃあ優美ちゃんはそちらさんのほう向いてもらっていいー?」


そちらさん?と思い彼の方を向くと彼は従者のように少し体制を前にして手を出していた。


「お手を、王女様、手を乗せたままでいてください」


よく分からず差し出された手に右手を乗せて彼の方を向いているとパシャリと撮られた。満足そうな顔を見る限りさっきので良かったらしい。


「ありがとうございます、一生の思い出です!」

「こちらこそありがとうございました」


そのまま傾向として女子生徒は隣に座って、男子生徒は従者のように隣に立って、のポーズを続け私自身は1回も立つことがなく色んな生徒と色んな写真を撮り、

「ファンクラブ入ります!」

と言って去っていく生徒たちに

「入らなくていいよむしろ入らないで恥ずかしいから!!」

と念を絶えず送っていた。


念は送っているのがバレないように去り際に一瞬で強く。これが鉄則!

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