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劇は無事終了しました。

 心配していた暴動もなく劇が無事終了し、カーテンコールも終えることが出来た。

 一応気になってはいたのでちらりと聞いていた方へ視線を向けてみたが、こゆりちゃん達の姿はなかった。小林先輩の姿も見当たらなかったので、恐らく彼がどこかへ連れて行ったのかな。


 舞台袖にはけると、すかさず怜様に舞台セットの椅子に導かれ、そのまま座らされた。


「これから写真もある。なるべく座っておいた方がいい」

「あ、ありがとうございます」


 恐縮しながら、かといって劇で疲れて立ち上がる気力すらなくてそわそわしながら座り直すと、桃華が可愛い顔をぷりぷりさせながら仁王立ちしていた。

「あ、桃華に会ったらお礼言おうと思って!突き飛ばす演技無くしてくれてありが…桃華?」


「優美ちゃん……」

 あれ、怒られるようなことしたっけ…?


「また足痛めたのにSOS出さないなんて!この薄情者!!」

「薄情者って…だって皆劇に集中してただろうし迷惑かけるのは」

「迷惑なわけないじゃん!!誰が迷惑だなんて言うのよ、こっちは役柄上全然話せないし心配で…」


 そのまま涙ぐんでしまっている桃華を慌ててとりなす。


「ご、ごめん!体育祭の時ほどでもなかったし足首だけだから大丈夫かなって」

「階段から落ちたばっかりなのによく言うよ!!」

「それについては弁解のしようもなく…」


「そうそう、僕もとっても心配したんだよ?ヒロインだし出番が多いのは分かってたからどうすることもできなかったし」

「救急セットも近くに置いてなかったし傍目には分からないように演技してごまかしてるもんだから、他の皆でどうにかして負担を減らそうと頑張ったんだよ」


 2年生皆に言われると言葉に詰まる。

「迷惑かけてごめんなさい」

「それだけじゃなくて?」


 桃華にさらに言われ言葉に困る。

 なんだっけと聞くと、ひらがな5文字!と返された。


「え、えと、ありがとう?」

「よくできました。まあ優美ちゃんの頑張る演技はそれはそれで可愛かったし色んな表情見れたからいっかな」

「ありがとうって言ったんだしあとで何かお願い事聞いてよね」

「取り敢えず最後までいけてよかった」


 睡蓮君のには同感だけど、他二人はなんだ、願い事は制限があるから、程度を考えてよ金鳳君!あとありがとうは半ば言わされただけだから!


「ほい湿布、あと写真免除するか?」

「ありがとうございます。でも最後まで終わらせておきたいので」


 湿布を渡されながら柘植先輩に聞かれたけど、ここで抜けるより全部終わらせてからのほうがいい。

 球技大会のことを考慮したら皆が終わるまでは椅子に座って休みながら終わるの待ってるだけで大丈夫だと思うし。


「彼女達は風紀委員長が連れて行ったそうですよ、今までの事を訊きながら山中志穂との関連性を調べてくれているようです」

「まあ風紀委員に任せておけば大丈夫」

「はい」


 なんとか計画も終わりそうだと安心して湿布を貼ると、ぐいっと横から腕を引っ張られた。引っ張ったのはまさかのユリア様…


「優美さんお怪我は?大丈夫ですの?」

「心配したんだぞ?私ら全員持ち場にいて何もできなかったし」

「すみませんご心配をおかけして…湿布も貼れましたので大丈夫ですよ」


 ファンクラブの会長の先輩方に謝ると、椿先輩から頭をセットが崩れない程度にぽんぽんされた。ありがとうございます。


「無事にならなくてほんと良かった!」

「ね、写真会は座ってやるしあと少しね」


「え、立ってじゃないんですか?」

 だって皆立ってやるって聞いてますが、と言うとユリア様達だけでなく役員からも白い目を向けられた。いやなんで!?


「優美ちゃんは座ってに決まってるじゃん、立ってなんて危なっかしくてやらせられないよ」

「これ以上足痛める意味がないわ、そのために座っても目立たないよう肌色の小さめの湿布を用意したのに」


「いやでも皆さん立ってるのに」

「す・わ・っ・て・て」

「はい…」


 すみれ先輩のダメ押しに思わず頷いてしまった。体がもうすみれ先輩には逆らってはだめって教え込まれてる自分…刷り込み怖い…


「あれ、でもカメラマンが足りないんじゃ…」


 小林先輩が仮に戻ってこられても私を撮る人がいない、小林先輩が戻ってこられなかった場合私と桃華のカメラマンがいない。


「それは問題ないよ、助っ人頼んであるから!」


 星マークでもつくかのように元気に言う桃華にハテナを浮かべていると、失礼しまーすと聞き馴染みのある2人の声がした。


「真純と芹那先輩!?」

「そう!私のカメラマンを真純ちゃんに、優美ちゃんのカメラマンを芹那先輩にお願いしてまーす!」

「こういうの初めてでよくわかんないんだけど、まあ人足りてないって言われたら暇だしいこっかなって」

「私も似たような感じでね、ファンクラブ副会長として大体のことは分かってるから」


「なるほど…」

 芹那先輩はともかく真純は生徒会とはほぼ無関係の人だ。恐らく私のことを心配してきてくれたんだろう。

 本当にこの親友には頭が上がらない。


「といってもやったことはほとんどないから色々と迷惑かけてしまうかも、ごめんね?」

「いえ、私のほうには全然人こないと思うのできっと大丈夫だと思いますよ?」

「あら、でも」


「片付け終わりましたー!」

 でもに対して訊き返そうとしたけど、その瞬間にふわっと持ち上げられてしまった。もちろん犯人は怜様。


「あの、会長!?一人で歩けるので…」

「椅子ごと持っていくより楽だ」


 いや、椅子ごとって普通一人では運べないし、階段下りてちょちょっと歩くだけなら大丈夫なのでー!!という気持ちをオブラートに包んで抗議したが受け入れてもらえなかった。解せぬ。


 最後にジミーに登場する希望は儚く消え、横抱きにされたまま撮影場所のステージ下へ向かった。


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