それでは、生徒会の出し物を始めさせて頂きます。*第3幕*
そして二人は約束通り三日に一度その場所で会いました。会うたびにお互い相手に惹かれていましたが、一回に会う時間は紅茶一杯飲むほどのみ。周囲にばれないよう従者達が注意を払っていましたが、ついに姫にばれてしまいます
ナレーションを聞きながらステージ上が暗いのを利用して足の状態を確認する。
足をトントンと床に当て確認した感じだと、痛むのは右足のかかとのみで体重をかけた時以外はそこまで痛みもなく、劇中は何とか持ちそうだった。
そういえば体育祭の時も同じように足を痛めてたなぁ、まああれは足首じゃなくて足全体だったし、あの時痛めながら走ったリレーよりは大分マシだろう。
そういえばあのリレーに出る羽目になったのは元々、桃華に追いかけまわされていた時期に私が足が速いってなったからだっけ。今思うと懐かしい。
志穂と親しくなったのもあの時期…
懐かしい脳内の思い出を開きかけ、ナレーションの終わりのため慌てて劇に集中する。
そうだ、今は王女王女…
そして明るくなったところにはそのまま私と王子がいた。
「名残惜しいけど、あまり会っていたらばれてしまうからね。本当はもっと君と話してたいのに…」
「申し訳ございません。王子である貴方にこのようなご面倒をかけてしまい…」
「いいんだよ、私が君と話したいがために無理言ってきているだけだから。それじゃあまた、三日後に」
「お待ちしておりますわ」
私と王子は仲睦まじげに微笑んだ後、別れを告げた。
そして、その場に残った私にヅカヅカと迫る人がいる。
それは王子に惚れた姫(桃華)だった。
姫は近くまで来ると不機嫌な様子を隠しもしないで大声で言い放った。
「最近王子が冷たいと思ったら貴女がたぶらかしていたのね、身の程知らず!」
「そんな、何か誤解で…」
「なにが誤解なもんですか!私が話しかけても忙しいとばかり、何とかお話しする時間を作っても愛想笑い上の空。なのに貴女に対してはあんなに親しげに…」
姫はキッと睨み付け、金切り声のまま王女に詰め寄る。
「貴女陛下命令で会ってはならないって言われてたのに、ぬけぬけと話すだなんて…お父様に言いつけてやるわ!」
ふんっ、と来た方向を向いて去っていく姫を呆然と王女は見守った。
…じつは呆然と見ていたのは本当の台本では姫は王女を突き飛ばして去っていくのだ。
もしかして私の足を考慮して?…絶対そうだ。
桃華に後で絶対お礼を言おうと心にきめ、私は暗転したステージから退いた。
出番まで一旦時間があるから取り敢えず慣れないヒールを脱いでおこうとステージ袖で一旦出番までヒールの靴を脱ぎホッとしていると、セットが変更されていた。
いるのは王、姫、宰相だ。今は客席に向かって座るようにしている。
姫は泣き顔で胸の前で手を合わせ王を見ている。
あざとさが見えるが、破壊力は抜群である。
「どうしたんだい、可愛い我が姫よ」
「お父様、聞いてください。あの女がお父様の言いつけを破って王子と会っているらしくて」
「なんだと!?親の言いつけも聞き入れないとは…」
「あんなの城から追い出しちゃって!この城にあの女がいるってだけで耐えられないわ!!」
酷く傷ついた様子で泣く姫に王はすぐさま宰相に命令する。
「あいつを命令に背いた罪で城から追い出すよう手配しろ。私の娘という身分も剥奪しておけ」
「承知致しました」
恭しく宰相がお辞儀したところで暗転した。
あ、次自分の出番だから靴履き直さなきゃ!
正直この劇、自分の出番がめちゃめちゃ多い。できる限りまんべんなく調整はしてあるものの主人公だから回数が多いこと多いこと。
まあ自分の我が儘に皆を付き合わせているし、セリフ量もそこまで多くないからいいけどね。
玉座が取り払われたそこには私と宰相が対峙していた。従者はいない。
宰相は眼鏡をクイと持ち上げ軽蔑するような目線で言った。
「王命令です、お前を降格し城から出て行くようにと」
「な、何故ですか!?」
「とぼけないでください。王子と密会していることは報告を受けています。陛下直々の命令が聞けない信用ならない者を城には置けないと仰っています。二週間後に正式な降格処分が決定される、その時には出て行ってもらいます」
「そ、そんな…」
「それと王子にこれから会うことを禁ずる。部屋からも決して出るな。次命令に背いたらどうなっているか分かっているでしょう?」
宰相の冷たい言葉に俯き唇を嚙み締めたものの、膝をつき恭しく頭を垂れた。
「仰せのままに」
ステージ暗転&ナレ担当のユリア様大活躍です。