それでは、生徒会の出し物を始めさせて頂きます。*第2幕*
遅れて申し訳ありません。それと、想像以上に長くなったためタイトルを第〇幕でお送りします。
舞台セットはそのままの状態で使うので、私はすぐに舞台袖にはけた。
すぐ横には次の出番を控える怜様と柘植先輩がいる。
「2つ次の出会いシーンで決まるか」
「はい、きっとそうだと」
次の私以外がいるシーンは怜様、柘植先輩、そして桃華の初登場シーン。このあとの私と怜様の出会いの場面が一番自分がこの場にいてはならないと判断される懸念場面。
次とその次のシーンが要となりそうだった。
すると、ステージが明るくなり、金鳳君、副会長、そして桃華が三人で玉座のセットの上で和やかに笑っていた。
「ねえ、お父様。もうそろそろお着きになるころかしら」
「宰相、予定の時刻は?」
「もうすぐでございます。先ほど門番からお通ししたとの通達がきたので、すぐかと」
他愛もない話なはずなのに桃華から出る悪役令嬢感がすごく伝わってくる。今までノリノリでやってたけど、今日は一段と増してる気がするよ。
「失礼します、隣国より第一王子とその供の者がお目見えになられました」
「うむ、通せ」
睡蓮君が腕を伸ばした手の先に導かれるように2人が入場する。
客席からちらほらと小さな悲鳴が聞こえていた。イケメン総集合ですものね、仕方ないよね。私もそっちで見たいぜひ。
入場してすぐに王子(怜様)とその従者(柘植先輩)は顔を下げる。
本来ならここで名乗るのだが、この劇短い間で作ってもらったのと、名前による覚えるセリフの増加を一緒に解決するために一切名前をつけてない。通じれば問題ない、そういうスタンスだ。
「よくぞ遠くからおいでになった、顔を上げよ隣国の王子、従者殿もな」
「恐れ入ります」
「滞在は一か月だったな。その間そこの従者と我が娘にこの国の案内をさせよう。何か不都合があったら遠慮なく申せ」
「ありがたき幸せでございます。では、これで」
「私がお部屋まで案内しますわ」
そして王子と彼の従者は第二殿下に付き添われたままはけ、残りのメンバーはその場にとどまった。
「陛下、どういうことにございましょう。私は姫殿下の護衛の仕事が」
「問題ありません。王子が滞在している間外出を控えさせれば済みます。何も一か月間まるごとつく必要はないのですから」
「お前があの娘の部屋に頻繫に出入りするだけで分かるだろうからな。先に案内に着けておいた方が面倒が少ない。分かったら下がりなさい」
「……失礼します」
王と宰相が話す中睡蓮君は立ち去り、袖に完全にはける前に立ち止まり
「何とか、しなくては」
と言い完全にはけた。
そのまま最初の場面に切り替わり、私と睡蓮君が入場して位置に着くと同時に明るくなった。
「殿下、誠に申し訳ございません」
「気にしなくていいのよ、私というボロが出ないかよっぽど心配なのね、彼らは。私も一か月は部屋にこもってなきゃ」
「いえ、その必要はありません。王様も宰相様も彼の方のいらっしゃる棟へ行かなければ、少し外に出られるくらいでしたら何もおっしゃらないかと」
「そうね、流石に一日中は無理でしょうし」
ここで一旦背景が暗くなり、私だけにピンスポットが当たる。
「と案内役をしている彼が言うのならきっと本当でしょう。彼は私の従者をしてくれてはいるけれど、王の命令には逆らうはずないし。だから近くの小庭までいくことは許されるはず」
そのまま少し下手に移動したところで舞台が明るくなり、舞台背景が入れ替わっていた。
そして少し移動しひざをつく。勿論その場にはないけどパントマイムだ。
なるべく優雅に美しく。私は一国の王女、地味でも気品だけは高く。
「植えたときは不安だったけどちゃんと芽が出てる、良かった」
そして客席をちらりと見て反応を伺う。
今までキラキラ×6みたいのがいた分自分1人は確実質素だ、分かってるから言わないでおいてくれ!ただ、反抗的なのが多いと今後心配だから、あんまり、半分はないといいな…
でも、見たけれど敵意のありそうな視線はあまりなく、どちらかというと不思議そうな顔をしている人が大半だった。あれ、話の展開分かりにくかったかな?でも別にとんでるところはないはず…まあとりあえず暴動なんかは怒らないかな。
と安心していると足音が3つ。勿論隣国の王子(怜様)、その従者(柘植先輩)、王女の従者(睡蓮君)だ。
そして王女は焦る、何故ここに王子が、と。
そのまま焦りながら立ち上がり逃げるところなのだが、思っていた以上に緊張していたのか上手く体が動かず立ち上がった瞬間ふらついてしまった。
その時足に痛みを感じたものの立ち去る演技をしなければ劇は進まないので慌ててふらつく足を叱咤してはけようとした。
そして、そこで王子が呼びとめる。
「貴女、どこかで見たことあると思いましたがもしやこの国の第一王女殿下では?」
「いえ、人違いかと」
「それはありません。貴女のことは絵でですがお見かけしたことがあります。逆に侍女服を着ていらっしゃらなくて、かつ私を避けるということは私が客賓と知っているということ。それらの理由をお聞かせ願えますか?」
「それは…」
上手く答えを探せず、疑問に満ちた目で自分の従者に向けると、彼はスタスタとこちらに歩み寄ってきた。
「はい、こちらが我が国の第一王女殿下です」
「待ってそれは…!」
「私がお二人を引き合わせようと思い、こちらに連れてまいりました。ご迷惑をおかけしてしまい誠に申し訳ございません」
「私も相談を受けまして、今の殿下の現状を聞く限りお二人を引き合わせた方がよいだろうと判断したため彼に加担しました。黙っていて申し訳ありません」
2人の従者の謝罪に王子は大きく頷き王女を見る。
「という訳らしい、私も今まで知らなかったけれど。今はもうすぐ戻らねばならないためあまり話せないが、今後訪ねてきてもよいだろうか?純粋に貴女と話したい」
「陛下から貴方とお会いしてはならないという命を受けているので…申し訳ありません」
「少しの時間で良い、三日に一度、ほんの少しの時間ではだめだろうか…?」
そして王子は膝をついて私の手を取る。
演技しているときは緊張してあまり客席の声とかは聞こえなかったけど、それが聞こえるくらいには女子生徒達の歓声が上がっていた。
分かるよ、ここ私も練習の時メンタルゴリゴリ削られてたから…生徒会で長いこと近くにいたから今まだ大丈夫だけど、これ入る前だったら卒倒して気失ってるとこだもの…
てか練習よりキラキラ増してませんか、本番きっと嬉しかったんだろうなっていうのが透けてますよ怜様……
それでも、足の痛みで我に返り、苦し気に笑う。
「それ、でしたら…」
「ありがとう」
微笑む王子に私もぎこちなく微笑み返し、ステージは暗くなった。