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それでは、生徒会の出し物を始めさせて頂きます。*第1幕*

大分な遅刻ですみません。劇が長いので分割しております。

『それでは、時間になりましたので生徒会の出し物を始めさせて頂きます』


 ユリア様のアナウンスに合わせ、私は所定の位置、ステージ中央に置かれた椅子に腰かける。


 元々の台本では王女は騎士と一緒に入場ということになっているが、それだと私が中央に移動する前に何かを客席からされても対処できない。

 例えブーイングの嵐になってもそれで私の足がすくんでもこの劇は生徒会の出し(・・・・・・・)、終わらせなければ協力してくださっている人達に申し訳が立たない。


『とある国に、1人の王女様がおりました』


 深呼吸して、凜と座ることを意識する。

 今は私は一国の女王、お客さんの反応に怖がってちゃだめなんだ。

 ステージが暗いまま上がっていく幕を見つめながら、手を思わず握りしめる。


『国一番の美人というわけではありませんでしたが、皆に優しく、凛とした風格を持った美しい少女でした』


 私の紹介とともに暗かったステージが一気に明るくなる。

 客席の様子が徐々に見えてくる。逆光だけれど、お客さんが皆驚いているのは見える。ざわめいてるのは聞こえる。

 分かってはいたけど予想と現実はショックのでかさが全然違うな。


 予期してなかったコツコツと響く音がしたため横を向くと、幕が上がりきっていないにも関わらず睡蓮君が私の方に向かっていた。


 あれっ、睡蓮君は幕が上がってからじゃなかったっけ!?


「ど、どうしたの?」

「いえ、殿下の顔色が優れないようでしたので。温かい紅茶をお持ちしましたがお飲みになりますか」

「えぇ、いただくわ」


 私の何故そんな早くに登場したのかという意味をこめた問いとセリフをつなげて言うあたり、こう来ることを予期しての登場だろう。


 ざわついていた会場が睡蓮君の効果で少し収まったようだ。

 ほぅ、とため息がどこかから聞こえてくるほど睡蓮君の所作は優雅だった。


「そういえば本日隣国から皇太子がいらっしゃるようですね」

 従者(睡蓮君)からの紅茶を受け取り口に運ぶ。


 そして微かに微笑みながら私は言葉だけ濁す。

「えぇ、私には関係のないことだけれど」

「そんなことありませんよ、殿下は陛下の実の娘。年齢からみてもお似合いですよ」

「貴方は昔からそう言ってくれるけれど、私は娘と言っても愛されていない方の(・・・・・・・・・・)。結婚どころか仲良くさせていただくことさえ陛下は許して下さらないわ。貴方こそ私なんかに仕えるよりあの子のところの方が楽でいいのに」

「いいえ、私は貴女にお仕えしたいからここにいるんです」

「もの好きね…陛下に呼ばれてる、行きましょう」


 ここで一度暗くなり、私達は袖にはける。

 と同時に場面転換はユリア様以外のファンクラブ会長の先輩方が2人ずつ交代でやってくれている。私達も勿論話す暇なく手伝う。


 演劇部に頼もうかとも考えたけれど、リハーサルを信頼できる必要最低限の人となったらこうなったので、致し方ない。


 先輩方の行動は余分な動作がなく、テキパキと行動していた。ちなみにユリア様は影アナと同時に暗転等をやって頂いているので、本当に皆さまハイスペックでいらっしゃいます。


 そして、セットが完了したため、王(金鳳君)と宰相閣下(副会長)とともに私は所定の位置に着いた。


 やはり睡蓮君効果だったのか私達が演技していた時は劇に支障が出ないほどにはなったものの、暗くなるとざわめきが一気に増した。

 ただそれに頓着することなく次へいく。ここまで来てやることは精一杯の演技をすること、ただそれだけだから。


 明るくなり、私は下手で床に跪いた状態で、王は上手の段の上に作られた玉座に座り、横には宰相が控えていた。


「言わなくても分かっておるであろうが、王女殿下には隣国の王子がいらっしゃっている間は必ず自室にこもり決して王子に見つからないようにお願いしますね」

「かの皇太子殿には私と妃の子であるあの子を嫁がせるつもりだ。夢など見てもかなわぬのだから見ないように。謁見の際も来なくて良いからな」

「かしこまりました」


 慈悲のない宰相や王の言葉に頭を上げることなく答える。

 客席からは副会長の登場に軽く悲鳴が上がったり、金鳳君の姿を見て「可愛い!」のコールがあったりした。


「殿下のところの従者には来るよう伝えておいてください、必ず皇太子の出迎えの時に参上せよと」

「全く、あの者もこの娘のどこが良いのか、望まれずして生まれた娘を」

「陛下の血を多少受け継いでいるから今王女として貴女を扱っているのです、王子と親睦を深める、なんて事態に至った場合、それ相応の覚悟をお決めくださいね?」


 副会長は流石サラリとこなしつつ嫌味な宰相役にぴったりはまっている。金鳳君はやはり所々棒読みの箇所があるものの言葉につまることなる頑張って偉そうな王を演じてる。


 そして私は一礼した後袖に引っ込んだ。


 この後のシーンの次が課題となる。一番最初とここさえ何も起こらなければ何も起きないとも言える。


 次が私以外の皆さんが登場した後で王子との出会いシーンだから。


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