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理事長先生は若き秀才だったようです。

 そして薊祭文化の部当日。


 本来であれば開会式に参加して色々生徒会としての手伝いをしなければならないのだが、例の作戦により別の場所での待機となった。


 ただ、生徒会室や他の生徒や職員が頻繁に使う部屋は誰かにばれたら大変なため、一番人が、来ても役員か来ても校長先生・・・・くらいだろうなと思われる部屋で一人待機していた。


 それは、理事長室。

 そもそも理事長がこの学園にあまり出入りしていないため職員も生徒もほぼ出入りしていないことや、入室には生徒会長または校長、理事長の許可がいるこの部屋は隠れるにはうってつけだった。


 ただ一つびっくりしたのは、


「転校生の桃華がここを紹介してくれるなんてね…」


 理事長と桃華が知り合いだというのは前の夏合宿の時に聞いていたが、理事長室で話をしたことがあると言っていたのには驚いた。


 桃華曰く、

「事務の人でさえ理事長がいることが信じられない風だったから理事長室に近づく人なんていないよ!薊祭があるならわざわざ理事長室まで来る人なんて誰もいないだろうしね!」

 とのこと。


 その後に私と運命的な出会いをしたことを時間になるまでしていたが、私は軽く訊き流していた。


 なんでも窓の外を歩いている私を見てこの学校に入ることを決めたのだと自信満々に言っていたが、そんな不純な動機で転入を考える女子高生なんているか?

 しかもイケメンに一目ぼれとかでなく平凡な私を輝かせたいからだって、これが桃華でなかったら本気で病院を紹介している。いや、正確には桃華にも病院を紹介しようとしたけど、その前に金鳳君に仕事があるからと連れ去られてしまっただけだ。


 私は本気で彼女の将来が心配だよ…


 理事長室は生徒会室と同じくらいの大きさがあり、中央に向かい合うようにしてソファが2脚と、それより窓側に執務用の机と椅子がある。

 どれも見るだけで高級品な感じが伝わって来て、ソファに座っていたのだがそんな理由で落ち着かなかったため、部屋をじっくり見学することにしたのだ。


 部屋の両脇の隅の本棚には学園の功績を称えた賞状や盾だったり、設立当初に撮ったと思われる学園を背景に撮った写真が綺麗に並べられている。


 1つ気になったものを見つけた。

 職員たちと思われる人々が整列して正門をバックに笑っている写真だ。

 恐らく学園が設立された年に先生や事務の人と一緒に撮られた写真だろう。


 真ん中にいるのが理事長先生か、桃華がイケメンと称していたから真ん中で微笑んでいる美青年がそうなのだろう。設立時は23歳だったと聞いている。

 23歳で学園の理事長をやれるなんてゲームの世界だから、ということなのだろうか。


 確か5歳まで日本で過ごしたものの優秀さゆえにアメリカの有名な教育機関にスカウトされ、18歳という若さでアメリカの難関大学を主席で卒業した。

 かねてから学校の経営が夢だったそうで、それからアメリカで教育機関経営のノウハウを学び、日本に戻って薊高校を作ったと、そう聞いている。

 実際のところどうなのかは分からないが、この写真を見る限りでは信憑性が高いように思う。


 あれ、そういえばこの顔見たことがあるけれど。

 ……まさか、ね。


 この部屋でさっきから香る、執務机上の薊の花を見ながらふと浮かんだ考えをしりぞけた。




 廊下から聞こえてくる声を聞きながら開会式が終わったことを感じてしばらくすると、扉がノックされ金鳳君が返事の前に扉から顔を覗かせた。


「やっほー、元気してる?」

「元気だけど…開会式は?」

「ん?無事終わったよー、まあ生徒会が出てきた時に篠宮さんいないの気付いたのかざわざわしてた以外は例年通り」

「それは良かった」

「変に聞いてくるアンチ生徒会がいるかなんて懸念も無いわけじゃ無かったけど、流石に全校生徒の前で、しかも文化祭の日に騒ぎ立てるなんてバカなこと誰もしなかったね」


 やったら面白かったのになーと金鳳君は呑気に言ってるけれど、それは我々が言ってはいけないと思う………それをきっぱり破り捨てる怜様は見たいけど。


「まあもうすぐ侍女さん達が来るからしばらく俺と待っててよお姫様」

「侍女って言う発言は問題なんじゃ……」


 彼女達は侍女というよりどこかのご令嬢様方だ。お仕着せが嫌々と言いそうなオーラを持たれた方々だから。


「でも嬉々として準備してたよ?愛されてるよねー」

「本気で言ってます?それ」


 愛されてるのではなく生徒会に媚を売らない物珍しい後輩として可愛がられてるだけじゃないかな……


 そのまましばらく2人で話してると、コンコンという音と扉の向こう側で桃華の声がした。


「お待ちかねの方々だね」

 そう言うとスタスタと扉に向かい、恭しく金鳳君が開けた扉の先では、


「……………………………え」


 オペを始めると言わんばかりに6人が両手を挙げて仁王立ちしていた。

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