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計画はとても順調です。

 取り敢えず志穂を金鳳君に預け小林先輩のところに向かわせ、睡蓮君は椿先輩と撫子先輩に付き添ってもらって保健室に連れて行ってもらい、残った私と柘植先輩と金鳳君で生徒会室の片づけをしていた。


「今のところ計画は順調だな」

「はい。これも皆さんが手伝ってくれてるおかげです。睡蓮君が助けてくれたのは予想外でしたが」


 実は、私達の間でひそかに計画が進行していた。

 計画、というのにはあまりに私情を挟みすぎてて、企てと表現した方が正しいものだと思うけれど。


 私達とは、私、桃華、柘植先輩。他の人達には怜様も含め知らせてない。


 この計画の始まりは劇の配役を決める時。


 体育祭で私の足を痛めつけたのは志穂というのはその時何となく分かっていたのだけど、その直後に私の足を引っかけ、罵った人がいる。

 引っかけたのが志穂の可能性もないことはなかったけど、綱引きで足を踏んづけるなんて犯人の検討がつきそうな後でわざわざ声までさらして犯人を更に特定させるなんて真似は相当バカでない限りしないと思う。ということは、犯人は複数いる可能性が高かった。


 なんて推理をするだけして、その犯人達を割り出す方法が思いつかなかった。

 劇の配役を決める時にされていることも、ロッカーの内側に油性ペンでくるくる描く感じで落書きされたり靴箱にものさしを使った書き方で悪口が書かれていたりで、一人だけならともかく何人もの特定は無理だった。


 犯人が誰なのか分からず、かといってこのままにしておいてエスカレートしたら自分の命が危うい。桃華から足を痛めたのはゲームのイベントではないと聞いてなおのこと、世界の強制力でもないのに自分が怪我をするのは嫌だった。


 残念ながら黙っていじめに耐えて挙句屋上から飛び降りるなんて行動は、一度死を経験したことがある私としては無理だった。

 前世では安らかに死んだとはいえ死の恐怖ってその時になってどっと押し寄せてくるものがあるからね。


 そんな時に生徒会の出し物が劇になることが決まり、台本を読んでいつものようにヒロインは桃華だな、と思っていたし、じゃんけんまではそのつもりだった。


 ただ、じゃんけんには私が負けてしまった。

 その時の喜びようは可愛かったが私には心に突き刺さるものがあった。


 これで反対派からの危害がエスカレートしたら問題だと思い、確定してなかったから黙っていたけれど、今までの事情を説明し、変えてもらうよう言ったのだが。

「なら、劇をダシにして見つけたらいいよ」

「どういうこと?」

「表向きは私がヒロインで優美ちゃんが隣国の姫ってことにするの。今の時点で足踏んずたりするんだからどっちがヒロインやったって危害を加えてくると思う。なんせヒロインはともかく隣国の姫は原作では媚を売りまくってまとわりつく子だから、体育祭で何か仕掛けてきたなら文化祭でもきっと何かしてくる。私には危害を加えてないくらいだからもしかしたら私がゲームのヒロインってことを気付いてるかも。そうなるとなおさら危害を加えてくる可能性が高い。…私は!犯人をぜっったい許したくない!!そいつの鼻をへし折ってやらないと気が済まないんだから!!」

「前半とっても冷静に言ってくれたのに後半感情ダダ漏れだね…」

「そのくらい許せないの!私にやってくれれば返り討ちにするのに!!」

「返り討ち…」

 本当にしそうなあたりが怖い。

 といっても今はマジックの落書きだからこっそりもってきたみかんの皮で朝からごしごしするしかないんだけどね…

 みかん見つかったときは本当にどうしようかと思ったけど。


 その後で、あれは言いくるめるための桃華の説得だったのかもしれないとは思ったけれど。

 そのまま、表向きには桃華がヒロインということにし、生徒会のメンバーには意外性をもたせるためとして私がヒロインとして練習していた。

 練習のときの桃華の悪役っぷりがノリノリすぎて皆で引いていたのもいい思い出だ。もちろん説得が9割私情を挟んでいると言われて納得できるくらいに。


 事情は転生者組の桃華と柘植先輩には話しておいた。

 この二人は犯人とは関わりがないと思ったからだ。二人ならもっと他の手口で陥れられるからね、例えば転生関係とか。


 副会長はなんだか勘づいているようだったけど、何も言ってこなかった。

 副会長は察するのが上手いけど基本はこちらに干渉してこないんだよな。まあ聞かれても答えられないんだけど。


 そして、計画通り進行し、志穂がやっていたのが分かったわけだが。


「主犯はあの子じゃないんだろう?」

「はい、志穂は自分がやったように項垂れてましたけど、池に落とすのに一人で誰にも見つからずに突き落とすのはリスクが高すぎます。体育祭の時のをわざと足を引っかけて転ばせたことを言わなかったんですけど、何も言わなかったですし」

「証拠は?」

「ないです」


 きっぱり言うと、はあ、とため息を吐かれた。

 仕方ないじゃない、見つからないからこうして地道に探りをいれてたのに。


「でも、どうも志穂が実行犯であることと阻止するために何をしたらいいかは指示してるみたいですけど、結構他は大雑把なんですよね。だから、その辺りを上手く利用したらいけるかなって」

「本当にいけるのか」

「はい、池に落とした間に志穂と一緒にいた子達が犯人でしょうから、まあ大丈夫だと思います」

「…分かった、遠ざけてた怜と悠也も渡辺がそろそろ連れてくるだろうし、見つかる前にパパッと片づけとくか」

「そうですね」

 上司からの指示に頷き、急いで元通りにしていく。


 私達の劇まで、あと一日。


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