衣装は馬子にも王子にも効果があります。
12/12 本編更新遅れます、すみません………もう少々お待ちください(><)
次の日、朝登校すると志穂とこゆりちゃんがすぐに駆け寄ってきた。
「優美ちゃん昨日は大丈夫でしたか!?」
「あ、おはよう。うん特にケガもなかったし全然平気」
あの後やはり目撃情報は見つかることなく終わってしまった。
先輩方は見つからなかったとメールで申し訳なさそうに言われていたが、こちらこそ頭が上がらない。
そこまで自分が何かをしてもらえるような器だろうかと自問自答をしてしまうほど周りの人達は自分に優しく接してくれる。
自分の環境が恵まれていることを毎日実感している日々だ。
「大丈夫なら良かったです、夏とはいえ風邪を引いてしまったら劇にも響きますしあまりご無理はしないでくださいね」
「心配してくれてありがとうね、幸いにも怪我もなかったし制服も冬と夏でスカート二種類だからまだ助かったかな」
「あー、クリーニング出しても大丈夫だもんね、とはいえ大変だったようだけど無事ならよかったね!この子ずっと心配してて」
「そ、それは言わないで!」
こゆりちゃんにからかわれて顔を赤くする志穂可愛いなー、可愛い子が心配してくれるって世の中の男子じゃなくても憧れるものだよね!なんか独り占めしててごめんね男子達!!
「大丈夫だから安心してね」
「本当に無事で良かったです」
せめてもの最大限笑顔で返すと更なる最大限笑顔で返ってきた、眩しいよ。
そして本日は生徒会の劇の全通しが体育館で行われていた。本番と全く一緒で衣装を着て台本なしで行う。
「優美ちゃんドレスとっても似合ってるよ!!」
「ありがとう、桃華の方が相当着こなしてると思うけどね」
てか生徒会メンバーの誰に言われてもお世辞にしか聞こえないよ……
皆さん前世西洋に住んでた貴族とかじゃないかって疑いたくなる。あ、桃華と柘植先輩は前前世か。
普通に着こなしてるのは凄いと思う。実は口が滑ってそう言ったことがあったのだけど、その時皆さんから口を揃えて充分似合ってるから大丈夫と言われたけど馬子にも衣装じゃあなかろうかと思っていたりする。
そんな綺麗に着こなせるプロポーションは生まれてこの方1度も持った事なかったもんね!勿論自虐だよつらい!!
今この場にいるのは私達生徒会メンバーとファンクラブの会長達だけだ。ほかの人達は皆入れなくなっており、外へも聞こえないようになっている。
ファンクラブの会長さん達は本番では照明やBGMの管理、影アナ等全ての裏方をやって下さることになっている。
大分負担をかけてしまっているが、流石と言うべきか仕事の合間に写真や動画を撮る余裕を見せているので全く心配はいらないようだ。
問題は役者の方だった。
「参ったなー、全然距離感掴めてなかったや」
実は体育館で行うのは初めてだった。
一応別の教室で体育館のステージくらいのを借りて練習したことはあったものの、実際となるとまた変わってきたりする。
別の教室でやっていても、体育館のステージはこうという先入観もあっただろう。
睡蓮君が苦笑いする通り、間隔が違うためやりづらい。衣装を着てなら尚更だ。
「でもやるしかないでしょ。通し稽古出来るのは今日と前日の2回だけなんだし、前日の方は衣装着れないんだから」
「本番に1番近くやれるのは今日だけなのは確かだよね、間隔をしっかり掴まないと」
「怜先輩もはりきってるし」
金鳳君の視線につられて見ようとして慌てて視線を戻す。ここここ、心の準備してからじゃないと、流石に………
絶対イケメンにしかならないからあとはそのキラキラがどれだけかってことだよね!衣装は知ってるけど凄い昔遊んだシール系のお絵かき帳みたいになってる!
「篠宮」
「あ!はい!!何でっしょう!!」
慌てて振り向くと王子用の服を着こなした怜様が不思議そうにこちらを見ていた。
「大丈夫か」
「だ、大丈夫です!通し稽古始まりますか!?」
うぅ………かっこいいよ………オーラと服が合いすぎてて本当の王子みたいだよ………写真出たら絶対買います………
私の変に勢いのある質問に気圧されつつ怜様があぁ、と頷く。
「あ、じゃあ今すぐ行きまっ!」
ステージに行こうとしたその拍子に馴れないヒールを履いているせいで思わず躓……………かなかった。
躓きそうになったところを怜様がすかさず支えてくれたおかげで助かった………
「落ち着け」
「す、すみません!!」
支えていただいた左腕をとりペコペコと頭を下げる。
は、恥ずかしい………最近躓いてばかりな気がする申し訳ない……………
「急がず上がってきてください、今怪我されたら困るので」
「すみません………」
副会長に窘められた………確かに慌てすぎた気がするし、ヒールなのを考慮に入れるべきだった………
そのまま向かおうとして、怜様に肩をぽんと叩かれた。
「どうかしましたか?」
横を向くとずっと持ったままだった右手を右手で支えられまるで本当に現実に王子がいるかのような優雅な所作でしゃがみこまれた。
「どうか一緒にステージへ共に行ってくださいますか、姫?」
その表情も仕草もまるで本物の王子様のようで、私は思わずはい、喜んでと言ってしまったくらいの真剣な雰囲気だった。
その真剣な顔がほんのり嬉しそうな顔になるのを見て、思わず自分も顔が赤くなってしまう。
これは、反則です、怜様………………
本当は顔を隠したかったけれど、右手は手を繋がれていて、左手だけで顔を隠せるわけでもなく、ただただ下を向いてこの顔に集まってしまった熱を逃そうとした。