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第1話「自衛団と国境警備隊」

宿舎を出て半刻(1時間)経つか経たないか、そんな頃小太郎が急に足を止めて、皆に対してゆび指した先を見るように促す。


「あそこに見えるのが目的の村でしょうか?」


その先にはいくつかの鉱山が立ち並び、その鉱山の入り口付近に民家が密集していた。


「ああ、あれが俺たちの村だ。」


義人は小太郎の横に並び立ってそう言うと、今度は義人が先頭に立ち後ろに他の3人が続く形で村への後少しの道のりを歩き出した。


この村の場所は王都と宿舎の直線上にあり、宿舎が山の山頂に位置する。

そこから王都に向かって山を下り、山の中腹まで下るか下らないか、そのぐらいの場所に位置する。

ここは、倭の国でも有名な鉱山地帯であり、刀の原料に使われる鉄などが多く採集されていた。

だから、それを狙った少数ではあるが倭の国の山賊、国境警備隊が配置されるまでは守備隊などが居なかった為、隣国の覇の国から山賊が略奪しに来たりもしていた。

辺境の地であるため、国も中々守備隊を差し向けることはできなかった。

その為に自らの身は自らで守るため、自衛団が結成されることになったのだ。


後少しの道のりを歩き終えた義人たち一行は村に入る。

すると、民家や鉱山からたくさんの人が駆け寄ってくる。


「おかえり義人!任務は果たせてるか?」


「あら、珠ちゃん少し大きくなった!?」


「官兵衛!義人の足引っ張るんじゃあないぞ!」


村人たちは口々に思い思いの言葉を言って一行を歓迎する。

だが、一行の中に歓迎されない者が1人いた。

小太郎である、小太郎はその雰囲気に耐えられなかったのか村人たちに背を向けて、そのまま姿を消そうとした、だが義人が小太郎の肩を掴み待ったをかける。


「皆、こいつは小太郎っていうんだ、俺たちと一緒に国境警備隊で戦ってる者だ、仲良くしてくれ。」


義人が村人たちにそう言うと、今まで官兵衛や珠たちに群がっていたのが今度は小太郎に群がり始める。


「あんた国境警備隊なのか、いつも国境を守ってくれてありがとうね!」


「何もないところだけど、ゆっくりしていきなさい。」


村人たちは、小太郎に対して感謝の意や歓迎の意を表した言葉を投げかける、最初はその勢いに戸惑いを隠せなかった小太郎だが、最後には落ち着いて村人たちと会話できるようになっていた。

やがて、会話の数が少なくなってきたのを見計らって義人が全員に声をかける。


「さて、俺たちはこの後少し村を巡回して宿舎に戻ることにする、皆は仕事に戻ってくれ、邪魔して悪かったな。」


村人たちは寂しそうな顔をしながら、義人たち一行に別れの言葉を投げかけ仕事に戻る、義人たちは言葉通りに村を巡回して帰路に着いた。


帰りは誰も一言も話さずに黙々と今度は山道を登っていく、その途中、もう少しで宿舎に着く頃だろうか、官兵衛が口を開いた。


「小太郎、村はどうだった?」


「君たちと同じでうるさい連中だったね。」


その言葉を聞いた瞬間、官兵衛は小太郎に掴みかかろうとする、小太郎はそれを見てはいたが、構うことなく言葉を続けた。


「ですが悪くない・・・、いや、良い村でしたよ。」


そう官兵衛に笑顔で言い放った。


「分かってんじゃねえか。」


そう小さくつぶやくと、官兵衛は掴みかかるために振り上げた手をどうしたら良いか分からず、しばらくの間空中で止めていたが、照れ隠しなのか頭に持って行きポリポリと掻いた。

それを見て珠がクスクスと笑い出す。


「お二人とも、素直じゃないですね。お兄様もそう思いませんか?」


「そうだな、二人とも素直じゃないな。」


義人も珠に合わせてクスクスと笑い出す、からかわれて怒ったのか恥ずかしくて照れたのか、小太郎の顔は真っ赤になっていた。


そうこうしている内に、宿舎に到着、そこで解散してそれぞれ自室へと戻った。

義人だけ団長の義に報告する為に軍議の間へと向かう。


「失礼します。」


義人は軍議の間の障子の前でそう言うと、中から入れという声が聞こえてきた。

障子を開け一礼し、義の元へと向かう。


「父上、ただいま戻りました。村は相変わらずの活気に満ち溢れていて異常はありませんでした。」


「うむ、ご苦労だった、自室に戻ってゆっくり休め。」


会話に横槍が入る。


「小太郎はどうだったかのう?」


隊長の龍である、義人は義から龍に向かい姿勢を正すと話し始める。


「はい、私は今回の任務で不仲は解消されたと思います。少なくとも、私や官兵衛は小太郎のことは友と認めております。」


「そうか、そうか!」


龍はそう言うと満足げに大きく何度も頷いた。


「では、私はこれで失礼します。」


そう言うと義人は礼をし軍議の間を後に自室へと戻った。

残された軍議の間では義と龍とで会議が行われていた。


「義よ、明日から正規軍と自衛団とで合同訓練を行い連携を図りたいのじゃが、どうじゃ?」


「良い案だな隊長。」


そして、翌日から厳しい合同訓練が開始されるのであった。

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