第8話 怪物退治
ティーナは、ルシアがまさか怪物を倒せるとは思わなかった。
彼女よりも少し背の低く、小柄な少年に何が出来るのだろう?
「困っている人達を助けるのが、俺の罪の償い方なんだ。ただのエゴって言われればそれまでだけどね」
ルシアはまだ影を背負っていた。彼は、一体どんな思いをして生きてきたのだろう?
ティーナは、自分よりも強い少年を見つめた。
「大丈夫、俺に任せて」
と、ルシアはにっこりと笑った。
ティーナは、難題をこんなにも簡単であるかのように言ってしまうルシアを見て、信じようと思った。
信じてあげたかったかったのだ。自分も彼の救いになればと。
「お願い、怪我しないでね」
と、ティーナは微笑んだ。
「キャーッ!!」
突如、外から悲鳴が上がった。
「きっと、怪物だわ!!」
と、ティーナの顔が青ざめた。
「出たな怪物!!」
とルシアは叫ぶと、窓に足をかけ、2階から飛び降りた。
「ルシア!」
ティーナは驚いて窓に駆け寄り、下を見下ろした。すでにルシアの姿は、闇に消えていた。
ルシアが悲鳴の聞こえた方へと駆けて行くと、先にやって来ていたナイトの姿があった。
ルシアは腰に付けている小さな袋から小瓶を出し、
「ナイトさん、ナイトさん」
と、呼んだ。
「何だ?」
とナイトが振り向くと、ルシアは小瓶の蓋を取り、中に入っている粉のにおいを嗅がせた。甘ったるい薫が、ナイトを包み込んだ。
「な、何だこれ…は…」
まぶたは重くなり、体の全身の力は抜け、その場に崩れ落ちた。ナイトはすっかり眠りこけてしまった。
「さぁ、邪魔者は消えたと」
とルシアは満足そうに、小瓶をしまった。
「アーハッハッハ…!!さぁ、もっと喰らうがいい」
悲鳴が聞こえた方には、黒いドラゴンが暴れていた。その背に男が立って、笑っていた。
「やめろっ!!」
とルシアは、黒いドラゴンの前に立ちはだかった。