第6話 ティーナ宅
ルシアは、今の所持金を掌に出して見せた。
それを見たティーナは、
「え?!これじゃぁ、どんなボロの宿屋でも泊まれないわよ」
と、驚いて言った。
「え…じゃ、じゃぁ、馬小屋でもいいや…」
ルシアはティーナの言葉に、肩を落とした。そんなルシアを見て、ティーナは哀れに思った。
「よかったら、家に泊まる?一晩なら平気なはずよ」
とティーナが言った瞬間、パアっと、ルシアの顔が明るくなった。
「ホント!?」
「ええ」
と、ティーナは笑って頷いた。
ルシアは、ティーナの家の夕食をガツガツと食べていた。その光景を唖然として、ティーナとティーナの父、メイドは見ていた。
「おかわり!!」
と、ルシアは皿をメイドに差し出した。
メイドは呆気にとられていて、ルシアの皿をすぐに受け取る事が出来なかった。
「…ダメ…かなぁ…?」
ルシアは、ティーナと父の顔色をうかがった。父は笑い出し、
「君、おかわりを」
と、メイドに言った。
「はい」
メイドはすぐに皿を受け取り、慌てて調理場へと向かった。
「もう、おかわり11杯目よ。まだ入るの?」
と、ティーナは目を丸くしながら、ルシアのきゃしゃな体を見て言った。
「うん」
とルシアは、笑顔で答えた。
夕食が終わると、ルシアのために用意された部屋にルシアは入った。ルシアは窓を開けた。少し冷たい夜風が、ルシアの頬を撫で、焦げ茶色の髪を揺らした。
『お前の名前は、ルシアだ』
ルシアの記憶の中の男は、優しくルシアの頭を撫でた。
『ルシア…ル…シア…』
男は血まみれになりながら、苦しそうにルシアの名前を呼んでいた。その男の目の前には、返り血を浴びた10歳のルシアが立っていた。その手には血のついた短刀を握り締め。
『ルシア…』
「ルシア」
ルシアは呼ばれ、
「はっ」
とし、後ろを振り向いた。開いたドアに、ティーナが立っていた。