第3話 ナイト登場
少年は安い宿を探していた。
「泊まるって言っても、お金ないんだよねぇ〜」
と、少年は手に握っているわずかな銅貨を見て、苦笑いした。
「はぁ〜」
一人の少女が溜め息をつきながら歩いていた。そこへ向かい合わせに歩いて来た男とぶつかってしまった。
「痛ってぇなぁ」
と、ガラの悪い男は少女を睨みつけた。少女はとっさに、
「す、すみません!!」
と、頭を下げて謝った。
「この俺様にぶつかっといて、ただ謝るだけで許されるとでも思ってんのか?!」
と男は、少女を突き飛ばした。
「キャッ!!」
少女は尻餅をつかされ、
「ちょっ、何すん…」
と、さすがにこの男に何か言い返してやろうかと思った。だが、その男の顔をよく見ると、町一番の荒くれ者で有名な男であった。
「何だ?そっちがぶつかって来たくせに、俺に文句でもあんのか?」
人相の悪い顔が歪み、さらに見る者に恐怖と威圧感を与えた。
「い、いえ」
と、少女は慌てて首を大きく左右に振った。
「事によっちゃぁ、許してやらんでもないぞ。俺の相手をするんだったらな」
と男はニヤリと笑い、少女の腕を掴み、連れ掠おうとした。
そんな光景を見ていた少年は、少女を助けようと近づいた。
「おい、そこの…」
少年が男に声をかけようとした時、目の前にすらりと背の高い男が現れた。
「おい、その娘を連れてどうするつもりだ!」
「あん?何だお前」
「ナイト様!」
と、少女はその突如現れた男の名を呼んだ。
「お前、俺に盾突こうってのか?だったら、ここでひねりつぶして、見世物にしてやるよ」
と男は笑って、ナイトに殴りかかった。
ナイトは男の拳をひらりとかわし、男の腹をおもいっきり殴った。
そして、腹をおさえ、前屈みになった男の首根っこに、その長い脚でかかと落としをくらわし、とどめをさした。
男はその場に倒れ、気絶してしまった。