第2話 怪物
「うちは、酒を飲むところだ。君にはこの店はまだ早いよ」
と、店主は少年を追い払おうとした。
「ねぇ、困っていることない?」
少年は気にせず、にこにこしながら尋ねた。
「お前、いい加減にしねぇと、ただじゃ帰さねぇーぞっ!!」
血の気の荒い男は、今にもつかみ掛かるような勢いで怒鳴った。
「困ったことねぇ…。変な噂がたって、最近客が減ったことだね。まぁ、君にそんな愚痴を言っても仕方ないんだけどねぇ」
と店主は、溜め息混じりに言った。
「変な噂?」
少年は、店主の話に耳を傾けた。
「お前に話す必要なんかねぇよ!さぁ、とっとと帰れ!!」
と、男は少年の腕を掴んだ。
「イヤだ!話を聞かせてくれたら帰るよ!!」
少年は男の手を振り払うために身をよじらせ、抵抗した。
「本当に帰るんだな?」
と男は、このしつこい少年に顔を近づけた。
「うん!」
と少年は、頷いた。
「しゃーねぇなぁ…」
男は少年を追い払うことを一旦諦め、頭をボリボリと掻いて近くの椅子を引き寄せ座った。
「今、この町で夜になると怪物が現れるって噂がたってんだ。実際に見た奴の話では、そいつはデカイ翼を持っていて、手当たり次第の人間を喰えるだけ喰っちまう」
「まったく、何だってこの町を襲うんだろうねぇ。こっちは、商売上がったりだよ。それどころか、自分の命まで危ないなんて」
再び店主は溜め息をついた。
「ありがとう。じゃあね!」
と少年は話を聞き終えると、あっさりと店を去った。
「ほぅ、人を喰う怪物か」
ドランは、少年から町の噂を聞いた。
「もしかしてって思うけど…」
と、少年はドランを見た。
「私と同じドラゴンかもしれぬな」
とドランは、少年の思っていたことを口にした。
「今夜、町へ泊まってみるよ」
「そうか、わかった」
と、ドランは頷いた。