第28話 聖なる祈り
(俺は、ドランを助けたい。力が欲しい)
ルシアは祈るように、目をギュッとつぶった。その時、ルシアの耳に声が聞こえてきた。
『ルシア、お前ならできるよ。お前には、ドランを救える力がある』
(父さん…?)
ルシアは顔を上げ、青い炎をじっと見つめた。
「俺の力…」
(ドランを…ドランを助けたい!!)
青い炎は、ルシア達の目の前で弾け飛ぶ。
「な、何だこれは!?」
ルシアが強く思った時、大きな呪いの絵が現れた。
それは、サドナと黒いドラゴンの真下にまで広がっていた。
「これは…」
と、気絶していた老婆は顔を上げた。
「アルしか使えない最大の魔法、ホリープレイヤー(聖なる祈り)」
まだ夜の明けない空から光が差し、光を身に纏った輝くドラゴンが落ちてきた。
そのドラゴンが呪いの絵の中へと落ちると、呪いの絵は強く光り、辺りを真っ白な光で包み込んだ。
光が消えた後、ルシアはゆっくりと目を開けた。目の前にいたサドナは、黒いドラゴンと共に倒れていた。
「ルシア、一体何が起きたのだ?お前は何をした?」
とドランは傷が癒えているのに気付き、驚いていた。
「父さんが、ドランを助ける魔法を教えてくれたんだ」
と、ルシアは笑った。
「お前さんは、アルにそっくりだねぇ」
と、老婆も傷が癒えたらしく、ルシア達のもとへとやって来た。
「あいつは、どうしちゃったんだろう?死んじゃったのかなぁ」
と、ルシアはサドナを心配そうに見た。
「あんな奴の心配など」
と、ドランは鼻で笑った。
「大丈夫、この魔法は人を癒し、悪しきものを消しとばすものさ。あの子は、今は気を失っているだけ。直、目覚めるだろうよ」
と老婆は言い、
「ありがとう、あの子を止めてくれて」
と、微笑んだ。
ルシアの希望で、サドナが目覚めるまでこの街にとどまる事となった。
ルシアも、争いの原因となった父の子供もまた、争いの犠牲者。
争いは憎しみを呼び、また憎しみは争いを呼ぶ。
この循環の終焉は…?
「サドナ、もう一人で苦しまないで。俺は君のために何かしてあげたい。君はもう、一人じゃないよ」
ルシアは、ベットで寝かされているサドナに話しかけた。まだ意識の戻らないサドナからは、返事が返ってくる事はなかった。
翌日、サドナの姿はベットから忽然と消えていた。サドナの行方を知る者は誰もいない。
そして、ルシアもこの街から旅立った。悲しい過去を持つこの街から。
ルシアとドランの旅は続く。行く宛てもなく、果てしなく続く道を辿って。
彼らの心が癒え、罪が消えるまで永遠にー。
少年は、罪を犯した。
呪われた手。
もがいても、もがいても
呪いから逃れることはできない。
少年は、今日も紅い涙を流す。
零れ落ちる紅い、紅い滴ー。
END