第27話 師を越える力
「お前は、どんな者よりも力が優れておった。だから、危険だとあの頃の私は思ってしまった。あの頃皆、大事な子供らを失い、異常になっていたのじゃ。そう、私もそうだった。すまぬ、サドナ」
と、老婆は俯いた。
「今さらそんな事言ったって無駄です!!」
とサドナが言うと、老婆の足もとに呪いの絵が黒く光って現れ、強く光を放つと、老婆を包み込んだ。
「サドナっ!」
老婆は持っていた杖を地面に一打ちすると、黄色の光が放たれた。それは老婆の足もとに広がり、サドナの魔法に対抗した。
「今は、あなたより私の方が上ですよ」
とサドナは言い、目の前に手を翳した。
老婆の足もとにあったサドナの呪いの絵が、老婆を囲むように現れ、黒い光は一つとなり、大きな光へと変わった。
「うわあああっ!!」
老婆は苦しみの声を漏らし、体はボロボロに傷つき、倒れた。
「これでわかりましたか?力の差を」
と、サドナは勝ち誇ったように笑った。
「大分待たせたな」
サドナはルシアとドランの方へと、向き直った。
「ドラン…」
「クッ」
ドランは最後の力を振り絞り、翼を広げ、空中へと飛び立ちサドナと黒いドラゴン目掛けて炎を吹いた。
「頑張りは褒めてやろう」
とサドナは言って、片手を横に直線に振った。ドランの炎は、サドナから放たれた水で消された。
黒いドラゴンはその瞬間、ドランに向かって青い炎を吹いた。
ドランは攻撃を受け、半分氷漬けになり、地面にたたきつけられた。
「うっ!!」
ドランと同じ痛みがルシアを襲った。
「ルシア、すまない」
と、ドランは今にも消えそうな声で言った。
「ごめん、ごめん…俺には何の力もない。あるのは、人を殺す力だけ。ごめん、ドランは俺を助けてくれたのに。俺は何もできない」
と、ルシアはドランの体に顔を埋めた。
「さぁ、死ねっ!!」
黒いドラゴンから、とどめの青い炎が放たれた。