第26話 もう一つの真実
「ルシア、お前が育ての親を殺し、血を求めさ迷い、人間に殺されかけた時のお前を見た私は、助けたいと思った。虫の息だったお前を助けなければと。だから私は、お前と命を一つにした。私は後悔してはいない。むしろ、今この時、お前を助けてやれない事に悔しさを感じている」
と、ドランは悲しそうな顔をして言った。
「ありがとう、ドラン。俺、ドランと一緒に生きてこれて良かった」
と、ルシアは微笑した。
「さぁ、お別れは済んだかな?では、とどめを」
と男が言った時、
「お待ちっ!!」
と、老婆のしわがれた声が聞こえた。
「おや、これは先生ではありませんか」
と男は老婆を見て、お辞儀をした。
「お前にこんな事をさせるために、私は魔法を教えたのではない!」
「あのお婆さん…」
ルシアは、水晶玉を持っていた老婆を思い出した。
「お前は自分の有り余る力をコントロールしきれんのじゃ!」
「何をおっしゃるのです。自分の力はちゃんと把握していますよ。この街の者達が愚かなだけです。そしてあなたも」
と、男の目つきが変わり、笑みが消えた。
「この街の者達は平和を願い、呪いをかけられた。その時、修業のためにこの街を出ていた私は、呪いの事など知らなかった。私にとっては、幻想のような話だった。だが、新しく生まれ変わった街は、私を受け入れなかった。街の中身はまだ昔のままだったんです」
男は老婆からルシアへと目を移すと、
「呪われし子供よ、何故私が受け入れられなかったのかわかるかい?」
と、問い掛けた。
「私がこの街に呪いをかけた男の子供だったからだ。この街の連中は、私を殺そうとした!そして、あなたも!!」
男の瞳は、怒りと悲しみに染まっていた。