第23話 闇夜に紛れて
「ありがとうね、ルシア」
と、母は甘酸っぱいレモンの香りがする紅茶をルシアに出した。
「あの子、あなたと会うようになってから、少しずつだけど、喋るようになったの。それに、何だか落ち着いてきたみたいで、昔のように突然暴れなくなったのよ」
「俺も、ガイロと友達になれて良かったよ」
と、ルシアは笑った。
「キャーッ!!」
静かな夜の街は、一つの悲鳴で掻き乱された。ルシアは馬小屋から跳び起き、外に出た。
「ハハハハ…さぁ、もっと喰らえ!!」
月明かりに照らされて、黒いドラゴンに乗っている男が見えた。
「お前は!やめろっ!!」
ルシアが叫ぶと、男はルシアに気付いた。
「おお!お前は呪われし子供!!再び会ったな」
と、男は嬉しそうに笑った。
「何でこんな事を!」
「何で?その問いに答えよう!ドラゴンは人間を喰らう事で、強力な力を得る。そして、そのドラゴンを私は食し、さらに強力な力を得るのだ!!その力で私は、この世界を統治するのだよ」
と、男は愉快そうに話した。
「そんなのいけない事だよ!ダメだ!!そんな事しちゃっ!!」
「お前が私を邪魔をする気なのであれば、容赦はせんぞ!!」
黒いドラゴンは、青い炎を吹いた。ルシアはとっさに避けた。
避けた場所の地面は、たちまち凍りついてしまった。
「ドランを…」
ルシアが笛を握った瞬間、
「そうはさせん!」
と男は言い、ドラゴンは翼で大きな風を巻き起こし、ルシアを吹き飛ばした。
「うわあっ」
吹き飛ばされたルシアは、地面におもいっきりたたきつけられた。
その隙を見て、ドラゴンは前足でルシアの体を地面に押し付けた。
「うっ」
めりめりとルシアの体が押し潰され、地面へと沈み込んでいく。
(助けて…誰か…)
「何だお前は!」
男の目の前に布を頭から被り、顔を隠した者が現れた。
その者は大きなナイフ型の剣で、ルシアを押し潰しているドラゴンの足を切り付けた。